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書き出し

認知症を併存する終末期がん患者の家族の介護負担感に関する研究

高尾, 鮎美 大阪大学

2023.09.25

概要

Title

認知症を併存する終末期がん患者の家族の介護負担感
に関する研究

Author(s)

高尾, 鮎美

Citation

大阪大学, 2023, 博士論文

Version Type
URL

https://hdl.handle.net/11094/93049

rights

Note

やむを得ない事由があると学位審査研究科が承認した
ため、全文に代えてその内容の要約を公開していま
す。全文のご利用をご希望の場合は、 href="https://www.library.osakau.ac.jp/thesis/#closed">大阪大学の博士論文につい
てをご参照ください。

Osaka University Knowledge Archive : OUKA
https://ir.library.osaka-u.ac.jp/
Osaka University

様式3








論文題名











(高尾鮎美)

認知症を併存する終末期がん患者の家族の介護負担感に関する研究

論文内容の要旨
【背景】がんは加齢に伴い発症リスクが上昇する疾患で、がん患者の約75%は65歳以上の高齢者である。65歳以上
の高齢者における認知症の有症率は今後の25年間で25%を超えると予測されており、がん患者が認知症を有する割合
はますます高くなることが推測される。認知症を併存するがん患者の家族は、患者に代わってがんに関連した症状
のマネジメントや日常生活全般の支援を担い、介護負担感が増大する可能性がある。特に終末期には、介護負担感
が家族の健康状態の悪化につながるだけでなく、看取りのプロセスや死別後の遺族の悲嘆のプロセスにも影響を及
ぼす。しかしながら、認知症を併存する終末期がん患者の家族の介護負担感に焦点を当てた研究は行われておら
ず、その実態は明らかにされていない。本研究は、認知症を併存する終末期がん患者の家族の介護負担感の定義を
明確にし、その実態と関連要因を明らかにすることで、介護負担感を軽減するための看護援助について検討するこ
とを目的とした。
【研究1】認知機能障害のある終末期がん患者の家族の介護負担感の概念分析
目的:研究1では認知機能障害のある終末期がん患者の家族の介護負担感の定義を明らかにすることを目的とした。
方法:Walker and Avantの手法を用いて概念分析を行った。CINAHL、MEDLINE、Web of Scienceの各データベースに
て2000年から2020年に発表された論文を検索し、収集した486論文のうち、選定条件を満たす22論文を対象とした。
結果:3つの属性、3つの先行要件、3つの帰結が抽出された。属性は、がん終末期に家族介護者として重大な役割を
求められる中で生じる【患者の意向が分からない中での重圧】、がん終末期特有の症状と認知機能障害に伴う症状の
悪循環が引き起こす【2つの重篤な疾患がもたらす多元性】、精神的負担感を示す【曖昧な喪失】であった。認知機
能障害のある終末期がん患者の家族の介護負担感は、「患者の曖昧な喪失に向き合い、患者自身の意向が分からない
まま家族として責任を果たす中で、2つの重篤な疾患により多次元的に体験される重圧」と定義された。
【研究2】認知症を併存する終末期がん患者の家族の介護負担感と関連要因
目的:研究2では、認知症の併存が終末期がん患者の家族の介護負担感に与える影響を評価すること、および認知症
併存の有無による介護負担感の関連要因の特徴を明らかにすることを目的とした。
方法:がん患者の緩和ケアの質を評価する全国規模の遺族研究「遺族によるホスピス・緩和ケアの質の評価に関す
る研究4(J-HOPE4)」の付帯研究として、国内の緩和ケア病棟で亡くなったがん患者の遺族に無記名の自記式質問紙
を配布した。介護負担感は終末期介護体験評価尺度(Caregiving Consequence Inventory:CCI)の負担感のドメイン
を用いて7件法(1-7点)で評価し、説明変数として基本情報、患者の症状、介護体験を調査した。質問紙の回収は郵
送で行った。遺族が回答した認知症の診断の有無をもとに認知症併存群と非併存群に分類し、介護負担感の程度を
student-t検定により比較した。また、各群において介護負担感と各変数の関連を単変量ロジスティック回帰分析に
より検討した。なお、認知症の診断はないが患者の認知機能低下を認識していた遺族は分析から除外した。
結果:2,002名の遺族に質問紙を配布し、1,231名(61.4%)から回答を得た。このうち認知症併存群83名と非併存群
587名を含む670名(33.4%)の回答を分析した。認知症併存群における介護負担感の平均得点は非併存群に比べて有
意に高く(3.61±1.58 vs 3.22±1.47; p=0.036)、項目では時間的介護負担感が認知症併存群において有意に高い得
点であった(3.55±1.97 vs 2.90±1.77; p=0.005)。両群ともに精神的介護負担感が最も高い得点を示した(4.14±

1.89 vs 3.82±1.88; p=0.149)。各群の介護負担感に有意に関連した項目のうち、認知症併存群においてのみ有意
で あ っ た 項 目 は 痛 み [ オ ッ ズ 比 (OR)1.77, p=0.016 ]、 呼 吸 困 難 (OR 1.67, p=0.015) 、 が ん 治 療 期 間 (OR 4.63,
p=0.007)であった。
【総合考察】本研究の結果、終末期がん患者の家族は、認知症の併存により介護負担感、特に時間的介護負担感を
強く体験しうることが明らかになった。がん終末期には、身体機能が急激に低下し医療依存度が高まるが、さらに
認知症の中核症状や行動・心理症状(BPSD)を伴うことで、日常生活動作・手段的日常生活動作の遂行が一層、困難
となる。家族は、患者の症状を緩和し、生活をできる限り支えるために、多くの時間を費やし時間的負担感につな
がったと考えられる。家族の介護負担感を軽減するためには、がん終末期ケアの専門家と認知症ケアの専門家が協
働して、患者が安寧に過ごせるような生活環境を工夫することや、社会資源を調整することが求められる。また、
終末期がん患者において痛みや呼吸困難は死が差し迫ると急激に増悪する症状であり、興奮や抵抗的行動などの
BPSDと悪循環を形成する。これら2つの疾患による症状は、症状緩和のための治療・ケアの提供を困難にするため、
認知症を併存した患者の家族に特徴的な介護負担感の関連要因として抽出されたと推測される。認知症を併存する
終末期がん患者の家族の介護負担感を軽減するには、症状の悪循環を加速させないための看護援助が重要であり、
看護師は、BPSDの悪化を早期に察知し、身体所見を統合してがんによる症状の増悪を見極め、患者に受け入れられ
やすい方法で症状緩和に向けたケアを提供する必要性があることが示唆された。

様式7

論文審査の結果の要旨及び担当者






高尾

鮎 美

(職)

論文審査担当者





主 査

教授

荒尾

晴惠

副 査

教授

竹屋



副 査

教授

山崎

あけみ



論文審査の結果の要旨
題目:認知症を併存する終末期がん患者の家族の介護負担感に関する研究
がんは加齢に伴い発症リスクが上昇する疾患で、がん患者の約75%は65歳以上の高齢者である。65歳以上の高齢
者における認知症の有症率は今後の25年間で25%を超えると予測されており、がん患者が認知症を有する割合はます
ます高くなることが推測される。認知症を併存するがん患者の家族は、患者に代わってがんに関連した症状のマネ
ジメントや生活全般の支援を担い、介護負担感が増大する可能性がある。しかしながら、認知症を併存する終末期
がん患者の家族の介護負担感に焦点を当てた研究は行われておらず、その実態や必要な看護援助については明らか
にされていない。
そこで、本研究は、認知症を併存する終末期がん患者の家族の介護負担感の定義を明確にし、その実態と関連要
因を明らかにすることで、介護負担感を軽減するための看護援助について検討することを目的とした。
研究1では、認知機能障害のある終末期がん患者の家族の介護負担感について、定義的属性を明らかにするために
概念分析を行った。22文献を選定し、3つの属性、3つの先行要件、3つの帰結が抽出された。属性は、がん終末期特
有の症状と認知機能障害に伴う症状の悪循環が引き起こす【2つの重篤な疾患がもたらす多元性】、精神的負担感を
示す【曖昧な喪失】、がん終末期に家族介護者として重大な役割を求められる中で生じる【患者の意向が分からない
中での重圧】であった。認知機能障害のある終末期がん患者の家族の介護負担感は、「患者の曖昧な喪失に向き合
い、患者自身の意向が分からないまま家族として責任を果たす中で、2つの重篤な疾患により多次元的に体験される
重圧」と定義された。
研究2では、認知症のある終末期がん患者の家族の介護負担感の実態と関連要因を明らかにするために、がん患者
の緩和ケアの質を評価 する 全国規模の遺族研究「 遺族 によるホスピス・緩和 ケア の質の評価に関する研 究4(JHOPE4)」の付帯研究として、国内の緩和ケア病棟で亡くなったがん患者の遺族にホスピス緩和ケア病棟で亡くなっ
たがん患者の遺族2002名に無記名の自記式質問紙を配布した。介護負担感は終末期介護体験評価尺度(Caregiving
Consequence Inventory:CCI)の負担感のドメインを用いて7件法(1-7点)で評価した。遺族が回答した認知症の診断
の有無をもとに認知症併存群と非併存群に分類し、認知症存群83名と非併存群587名を含む670名(33.4%)の回答を
分析した。認知症併存群における介護負担感の平均得点は非併存群に比べて有意に高く(3.61±1.58 vs 3.22±
1.47; p=0.036)、項目では時間的介護負担感が認知症併存群において有意に高い得点であった(3.55±1.97 vs 2.90
±1.77; p=0.005)。両群ともに精神的介護負担感が最も高い得点を示した。各群の介護負担感に有意に関連した項
目のうち、認知症併存群においてのみ有意であった項目はがん治療期間[オッズ比(OR) 4.63, p=0.007]、痛み (OR
1.77, p=0.016)、呼吸困難(OR 1.67, p=0.015)であった。以上の結果より抗がん治療の長期化に伴う時間的介護負
担感に対して抗がん治療の影響を予測し患者・家族の生活を支える看護援助、がん終末期の症状とBPSDの悪循環を
加速させない看護援助、患者の側で過ごしながら患者と家族の繋がりを感じられるような看護援助が必要であるこ
とが明らかになった。

本研究によって、認知症を併存する終末期がん患者の家族の介護負担感は、認知症を併存しない場合よりも高
く、家族の介護負担感へ配慮した看護援助が必要であることが示された。また、介護負担感の程度と関連要因か
ら、認知症患者との意思疎通に関わる困難がもたらす精神的負担感、抗がん治療の長期化がもたらす時間的介護負
担感、患者の症状に対しての看護援助が特に重要であることを見出した点は、臨床的に重要な示唆を与えるもので
ある。本研究で得られた知見は、認知症を併存する終末期がん患者と家族への看護援助を見出し老年腫瘍看護学の
学問的発展に寄与するものである。以上から、本論文は博士(看護学)の学位授与に値するものである。

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