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大学・研究所にある論文を検索できる 「複数の管理目的に対応した最適漁獲制御ルールに関する研究」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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複数の管理目的に対応した最適漁獲制御ルールに関する研究

八木, 達紀 東京大学 DOI:10.15083/0002006882

2023.03.24

概要





















八木

達紀

本研究は、異なる大きさの不確実性のもとでの水産資源管理において複数の
管理目的を効果的に達成する最適な漁獲制御ルール(harvest control rule: HCR)
の形を明らかにするとともに、最適な HCR を再現する関数式を提示することを
目的としたものである。HCR は水産資源の管理において世界的に採用されてい
る管理戦略ツールであり、適切な HCR の設定が水産資源の持続的な利用の達成
度を大きく左右する。
本研究ではまず、さまざまな大きさの観測誤差のもとで、3 つの異なる管理目
的(長期的な平均漁獲量の最大化、漁獲量変動の抑制、最低資源量の確保)を効
果的に達成する最適な HCR の形について、仮想的な資源動態モデル(operating
model: OM)を用いた管理戦略評価(management strategy evaluation: MSE)によ
って検討した。その結果、観測誤差がゼロのときに漁獲量を最大化する HCR は、
x 切片が BMSY−MSY に等しい傾き 1 の直線、すなわち、獲り残し資源量一定方策
(constant escapement strategy: CES)を実現する HCR であった(ここで、MSY は
最大持続生産量、BMSY は MSY を与える資源量)。一方、観測誤差の増大に伴い、
漁獲量を最大化する HCR は、点(BMSY, MSY)を中心に全体の傾きを小さくするも
のとなった。さらに、漁獲量変動を抑制する HCR は y 軸に沿って圧縮されたも
のとなり、高い資源量では漁獲量一定方策(constant catch strategy: CCS)に近づ
いた。最低資源量を確保する HCR は、全体を右方向に移動させることで得られ
ることが判明した。そして、従来型 HCR の形および管理効果(パフォーマンス)
との比較を通して最適 HCR の特徴を明らかにした。
次に、最適 HCR をコンピュータによる複雑な数値シミュレーションによらず
に簡便に求められるよう、3 つのパラメータを調節するだけで最適 HCR を再現
できる関数式を作成した。Tsallis statistics の q-logarithm 型関数を基にして、各管
理目的と、異なる観測誤差の大きさに対応した最適 HCR を再現する関数式をそ
れぞれ作成し、まとめると以下の式が得られた。



−1 =

1

−1

ここで、 年における漁獲量を 、資源量を とするとき、 ,
れぞれ、

,

,

,

で与えられる。 ,

,

,

はそ

は、観測誤差の大きさに

,

対応した曲線全体の傾き、最低資源量の水準、漁獲量変動の大きさをそれぞれ調
節するパラメータである。この式は に関する 2 次方程式であり、 の解が最適

HCR を与える。なお、解が負となる領域では = 0とする。
さらに、求めた関数式をよりシンプルな形で表すために、相対的リスク回避度
一定(constant relative risk aversion: CRRA)型効用関数を導入した場合の最適な
HCR の形を明らかにし、その結果を基に、先に作成した最適 HCR を表す関数式
に改良を加えた。CRRA 効用関数!"#$を用いて漁獲量 x の効用を表すと、以下の
ようになる。

"# + 1$ '( − 1
!"#$ = %
1−)
log"# + 1$

") ≠ 1$

") = 1$

ここで)は相対的なリスク回避度を表し、)の値が大きいほど漁獲量変動をより
抑制することが選好される。よって、)の値を大きくしたときの最適 HCR は漁

獲量変動をより抑制する HCR となる。)の値の大きさに対応した調節パラメー
タ.を導入して検討を行った結果、以下の最適 HCR の式が得られた。
/

max 0,
=.

=.



+1

if .

if .

≥1

<1

ここで max[a, b]は、a,b のうちの大きな数を返す関数である。この最適 HCR
は先に作成した HCR よりもさらにシンプルな式となっており、現実の資源管
理により適用しやすく、パフォーマンスにも問題ないものであることが結論さ
れた。
最後に、本研究によって得られた結果を総観し、現実の資源管理にどのように
最適 HCR を適用すべきかや、最適 HCR を資源管理で使用することによって期
待される効果などについて議論した。
これらの研究成果は、学術上応用上寄与するところが少なくない。よって、審
査委員一同は本論文が博士(農学)の学位論文として価値あるものと認めた。

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