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Identification of STING ubiquitination at recycling endosomes and its significance in the STING signaling.

植松, 黎 東京大学 DOI:10.15083/0002002517

2021.10.15

概要

【序】
自然免疫は先天的に備わっている広く保存された異物に対する応答機構であり、感染初期の生体防御において重要な役割を担っている。

近年、DNA ウイルスの感染や自己ゲノム、ミトコンドリアにより細胞質中に放出される DNA の感知機構として、“cGAS-STING 経路”が同定された。センサータンパク質cyclic GMP-AMP synthas(e cGAS)は細胞質に露出した DNA を認識、活性化し cyclic GMP-AMP(cGAMP)を生成する。cGAMP は、小胞体(ER)に局在する 4 回膜貫通タンパク質である Stimulator of interferon genes(STING)に結合する。 cGAMP 結合後、STING は核近傍部へと局在変化し、キナーゼ TBK1/転写因子 IRF3 を介して I 型インターフェロン(IFN)を、NF-κB を介して炎症性サイトカインを発現誘導する。さらに、I 型 IFN がオートクライン、パラクライン的に受容体に結合し、JAK-STAT 経路を介して Interferon-stimulated genes(ISGs)が発現誘導され、様々な抗ウイルス応答が起こる。

当研究室において、刺激後の STING の局在変化を詳細に解析した結果、活性化した STING が、ER→ゴルジ体→リサイクリングエンドソーム(REs)→p62 陽性ドット構造へと逐次的に移動することを見出した。さらに、ゴルジ体において I 型 IFN 応答を引き起こすこと、下流遺伝子の活性化にはゴルジ体における STING のパルミトイル化が必要であることも見出し報告している(文献 1)。

以上のように STING を介した I 型 IFN 応答誘導機構については詳細に解析されているが、刺激後後期の時間帯に STING に生じる変化、およびその意義については不明である。そこで私は、STING が刺激後後期の時間帯において受ける翻訳後修飾を、質量分析を用いて解析することで、STING がゴルジ体より後のオルガネラに輸送される生理的意義を解明することを目指した。

【結果】
1. STING の Lys337 がユビキチン化を受ける
これまでに、STING の翻訳後修飾について報告した論文は存在するが、STING を免疫沈降し、刺激依存的に生じる STING の翻訳後修飾を質量分析によって解析している論文は無い。そこで、私は FLAG-mouseSTING(mSTING)を STING KO 不死化胎児繊維芽細胞(iMEF)に再構成した細胞を樹立した。この細胞に、mSTING の合成アゴニストである DMXAA を 4 時間処理し、1%SDS の条件下で細胞溶解した後、STING を抗 FLAG 抗体で免疫沈降し、銀染色を行なった。その結果、刺激依存的に出現するバンドが確認された。このバンドを切り出し、質量分析を用いて解析をしたところ、既報通り Ser365 がリン酸化されていることが確認されたと同時に、STING の Lys337 がユビキチン化されていることが明らかとなった。次に STING の合成アゴニスト刺激だけでなく、cGAS-STING 経路の内在性の刺激でも同様のユビキチン化が見られるかを検証するために、double-stranded DNA(dsDNA)刺激によって活性化した STING を免疫沈降し、ウエスタンブロッティング(WB)を行った。その結果、STINGが刺激依存的にユビキチン化を受けていることが確認され、TBK1/IRF3 の活性化(リン酸化)の極大よりも遅れた時間にピークを迎えることを見出した。次に mSTING の Lys337 を Arg に置換した変異体(K337R)を作製し、STING 欠損 iMEF に再構成した細胞を樹立した。mSTING 野生型(WT)と K337R変異体を同様に刺激した後に免疫沈降し、ユビキチン化について WB で解析をしたところ、K337R 変異体でユビキチン化に明らかな減弱が認められた。

以上の結果から、mSTING の Lys337 が刺激依存的にユビキチン化を受けることが示された。

2. STING のユビキチン化は REs で生じる
STING のユビキチン化が、ゴルジ体で生じる TBK1 のリン酸化よりも遅れたタイムコースで極大を迎えることから、STING のユビキチン化がゴルジ体より後のオルガネラで受けている可能性が考えられた。そこで次に、STING のユビキチン化に対する各オルガネラ間の膜輸送の必要性を検証した。 過去に、細胞に Brefeldin A 処理をするとSTING をER へ留めることができることが報告されており、当研究室でも Brefeldin A 処理でゴルジ体/REs/p62 陽性 dot 構造への輸送が阻害されることを確認している。Brefeldin A 処理下では STING の刺激依存的なユビキチン化が全く認められなかったことから、STING の ER からの輸送が STING のユビキチン化に必須であることが示唆された。

さらに、当研究室では、細胞を 20℃で培養することで、STING がゴルジで留まり、REs/p62 陽性ドット構造への輸送が阻害されることも確認している。そこで、この 20℃培養条件下における STING の刺激依存的なユビキチン化を解析したところ、顕著な減弱が認められた。

以上の結果から、STING のユビキチン化が、ゴルジ体より後のオルガネラで生じていることが示唆された。

3. STING の Lys337 ユビキチン化は ISGs の発現を促進する
STING の Lys337 が、ゴルジ体より後のオルガネラでユビキチン化を受けることが示唆されたため、次に STING のユビキチン化の生理的意義の解明を目指した。

STING の下流遺伝子への影響を解析するために、WT と K337R 変異体安定発現細胞細胞を DMXAA刺激し、遺伝子発現変動をマイクロアレイによって網羅的に解析した。その結果、全 22206 遺伝子中、刺激依存的に 2 倍以上増加して、かつ K337R 変異体よりも WT で 2 倍以上増加していた遺伝子が 33遺伝子あった。その中で定量 PCR により再現が取れた遺伝子として、12 遺伝子を見出した。

そこで、顕著な発現変動が認められた遺伝子の中から、ISGs の一つで、ウイルス複製を抑制することが知られる遺伝子に着目した。定量 PCR によって確かめられた発現変動が、実際にタンパク質量でも変化しているかを解析するため、WB によって解析をした。WT と K337R 変異体発現細胞を ISD 刺激した際のこの遺伝子の発現量を解析したところ、タンパク質量でも K337R 変異体において顕著な発現減少が認められた。

以上の結果から、mSTING Lys337 のユビキチン化が、STING 刺激時に ISGs の一部の発現を促進していることが示唆された。

4. STING の Lys337 ユビキチン化による ISGs 発現促進は、I 型 IFN シグナル伝達経路に協調したものである
次に STING Lys337 ユビキチン化が ISGs ✰発現を制御する機構について解析を行った。
STING Lys337 によって発現が促進する ISGs が、I 型 IFN を介した発現制御を受けるかを、I 型 IFN受容体を欠損した IFNAR1 欠損 MEF を用いて解析した。その結果、IFNAR1 欠損 MEF では、DMXAA刺激依存的な ISGs の発現増加が認められなかったことから、ISGs 発現は I 型 IFN 受容体の下流で制御されることが示唆された。

そこで次に、WT と K337R 変異体を dsDNA 刺激した時の、培養上清中の I 型 IFN 量について ELISAを用いて解析した。しかし、I 型 IFN の量に差は認められず、WT と K337R 変異体の間で I 型 IFN 受 容体を介したシグナル伝達には差がないことが示唆された。さらに、WT と K337R 変異体の間では、 DMXAA 刺激依存的な TBK1、IRF3 のリン酸化、NF-κB 経路の IκBα のリン酸化にも差が認められず、 TBK1-IRF3 経路、NF-κB 経路に差がないことが示唆された。

以上の結果から、STING Lys337 によって促進する ISGs の発現には I 型 IFN のシグナルが必要であることが示唆された。一方、WT と K337R 変異体の間で I 型 IFN 量に差が無く、TBK1-IRF3 経路、NF-κB経路に差が無いことから、STING の Lys337 ユビキチン化は、既知の抗ウイルス応答経路とは異なるシグナル伝達経路を介して ISGs の一部の発現を促進している可能性が示唆された。

【まとめと考察】
本研究から私は、STING の Lys337 が刺激依存的にユビキチン化を受けることを明らかにし、さらにSTING Lys337 のユビキチン化が一部の ISGs の刺激依存的な発現上昇に必要であることを見出した。 I 型 IFN や炎症性サイトカイン、ISGs を介した適切な抗ウイルス応答は生体防御反応において必須 である。これまで、STING は刺激依存的に ER を脱出し、ゴルジ体で I 型 IFN 応答を活性化させると考えられていたが、STING がその後リサイクリングエンドソームに輸送される意義は不明であった。
本研究から、REs において STING の Lys337 がユビキチン化されることが、抗ウイルス遺伝子である ISGs の発現に必要であることが示唆された。

参考文献

1. Mukai et al. Nat. Commun. (2016)

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