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大学・研究所にある論文を検索できる 「Regulation of the innate immune STING signaling through cysteine modification」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Regulation of the innate immune STING signaling through cysteine modification

Matsumoto, Kentaro 東北大学

2023.03.24

概要

博士論文(要約)

Regulation of innate immune STING signaling
through cysteine modification
(システイン修飾を介した自然免疫分子STINGの制御)

令和4年度
東北大学

大学院

生命科学研究科

脳生命統御科学専攻
松本健太郎

【背景・目的】
自然免疫は先天的に備わる異物に対する応答機構であり、生体防御において重要な役割を果たしている。
cGAS-STING 経路は、細胞内に漏出した DNA ウイルスに応答する自然免疫経路として同定された。この経路
では、まず細胞質 DNA により活性化された cGAMP synthase (cGAS) が cyclic GMP-AMP (cGAMP) を産生す
る。ついで、小胞体に局在する膜貫通タンパク質 Stimulator of Interferon genes (STING) が cGAMP と結合し、
ゴルジ体へ移行し脂質修飾 (パルミトイル化) を受ける。パルミトイル化された STING は、下流シグナル分
子 TBK1、IRF3 を活性化し、I 型インターフェロン (IFNβ など) や炎症性サイトカイン (IL6 など) の産生を
誘導する (図 1)。これらサイトカインは腫瘍における炎症応答でも重要な役割をもつため、cGAS-STING 経
路はウイルス感染防御だけでなく、腫瘍免疫を活性化させるシグナルとしても注目されている。しかし現在
報告されているアゴニストの多くは、内因性リガンドである cGAMP に類似した核酸化合物であり、膜透過
性・血中安定性に乏しく上市に至っていない。そこで本研究では、新しいカテゴリーの STING アゴニスト開
発を目的とし、化合物探索、ヒット化合物の作用機序解析を行った。
P

STING

DNA
cGAS

P

IRF3
STING

TBK1

STING
STING
STING
STING

palmitoylation

cGAMP

Nucleus

P

P

IRF3
NF-KB

Endoplasmic Reticulum

Golgi apparatus

IFNβ

IRF3

IL6

NF-KB

Golgi apparatus

図 1:cGAS-STING 経路

【方法・結果】

PAO は STING-TBK1-IRF3 経路を活性化する
MEFs

STING 経路を調節する薬物を探索していく中で、フェニル基を
有し膜透過する共有結合性化合物 Phenylarsine oxide (PAO) によ
る活性化を⾒出した。PAO をマウス胎児線維芽細胞 (MEF) に

WT
PAO

O
As

(−)

(+)

Sting-/(−)

(+)

p-TBK1
TBK1
p-STING
STING

添加すると、刺激後 1 時間以内に STING が小胞体からゴルジ体
Phenylarsine oxide

へ移行し、TBK1/STING/IRF3 のリン酸化が亢進した (図 2, WT)。

p-IRF3
IRF3
α-tubulin

また刺激後 5 時間で IFNβ、Cxcl10、Il6 の発現上昇が見られた。
一方で、STING 欠損細胞に PAO 刺激を行うと、これら下流シグ

kDa
72
72
37
37
45
45

50

図 2:PAO は STING 経路を活性化する

ナル分子のリン酸化および下流遺伝子の発現上昇が見られなかった (図 2, Sting-/-)。このことから PAO は
STING 経路依存的に炎症応答シグナルを活性化していることが分かった。また、小胞体からゴルジ体への輸
送を阻害するブレフェルジン A や、STING 特異的パルミトイル化阻害剤 H-151 によって PAO による STING
経路の活性化が阻害された。この結果から、PAO は cGMAP と同様に、STING のゴルジ体への輸送及びパル
ミトイル化を介して STING 経路を活性化することが明らかになった。

PAO による STING 経路活性化機構の解析
まず PAO による STING 経路の活性化に、cGAS による cGAMP 産生が関わるか検討するため、cGAS をノッ
クアウトした MEF や、STING ノックアウト MEF に cGAMP と結合できない STING 変異体 (Y239A) を発現
させた細胞を用いて解析を行なった。その結果、これらの細胞においても PAO 処理により TBK1/STING/IRF3
のリン酸化、および下流遺伝子 (IFNβ、Cxcl10、Il6) の発現上昇が見られた。このことから PAO は cGAS に
よる cGAMP 産生を介して STING 経路を活性化しているのではなく、STING へ直接作用している可能性が考
えられた。PAO はシステインへの結合が知られている化合物であり (Jun Li et al., Biochemistry 1995) 、STING
の Cys 残基に直接結合していることが予想された。そこで、EGFP-STING を再構成した MEF を PAO で処理
し、免疫沈降により精製した STING を液体クロマトグラフィー質量分析で解析した。その結果、PAO の分子
量を含む STING ペプチド断片が 2 つ検出され、
PAO によって STING が架橋されていると考えられた (図 3)。
Pi

[F C R T L E E I L E D V P E S R]

[F P L D C G V P D N L S V V D P N I R]

291

205

(Phe)As

(Phe)As
[ A C L G C P I R ] + palmitoyl (C88 or C91)
88

91

[G C P I R C M A M I L L]
91

95

図 3:LC-MS 解析により検出された STING ペプチド断片

また STING の Cys 残基をそれぞれ Ser に置き換えた変異体ライブラリーを作成し、PAO 処理による STING
経路活性化を検討した。その結果、質量分析で PAO の結合が予想された Cys88 と Cys291 の Ser 変異体では
PAO を処理しても STING は小胞体に留まったままであり、TBK1/STING/IRF3 のリン酸化も抑制された。一
方、Cys91、Cys95、Cys205 の Ser 変異体は PAO 処理によってゴルジに移行した。以上のことから PAO は
STING の Cys88 と Cys291 を架橋することで活性化していることが示唆された。PAO 処理下で非還元条件で
の SDS-PAGE を行なっても分子間架橋による STING 二量体のバンドは検出されなかったことから、この架
橋は分子内で起きていると予想される。また PAO 処理によって、STING の小胞体局在維持に必要なタンパ
ク質 Surf4 (Mukai et al., Nat Commun 2021)と STING の相互作用が減弱することから、PAO は STING のコンフ
ォメーション変化を促し、
Surf4 との相互作用を抑制することで STING 経路を活性化していると考えられた。
【結論・考察】

本研究では、STING 経路を活性化する薬物として PAO を同定し、STING 経路を活性化する機構を解析した。
その結果、PAO が直接 STING と共有結合を形成しゴルジ体への移行を誘起していることを明らかにした。
PAO はフェニル基を持ち膜透過性に優れる上、Cys88、Cys291 に結合することで、cGAMP 結合ポケットに変
異をもつ STING (Y239A) も活性化する。即ち本研究は、STING の Cys 残基を標的とすることで、既存 STING
アゴニストが抱える膜透過性の低さや、cGAMP 結合能が低下している STING バリアントに対する活性化能
力、などの課題を克服した新たな薬剤の開発が可能であることを示唆している。 ...

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