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大学・研究所にある論文を検索できる 「Transplantation of human iPSC-derived muscle stem cells in the diaphragm of Duchenne muscular dystrophy model mice」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Transplantation of human iPSC-derived muscle stem cells in the diaphragm of Duchenne muscular dystrophy model mice

三浦, 泰智 名古屋大学

2022.12.22

概要

【緒言】
デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)はジストロフィンの欠損を特徴とする難治性の遺伝性筋疾患である。DMD患者の主な死因は呼吸不全、呼吸器関連感染症、心不全である。ジストロフィンを発現する筋組織を再生する方法として細胞移植が期待されている。また、骨格筋幹細胞(サテライト細胞)は完全なジストロフィンを発現する筋線維を再生させることから、移植細胞として注目されている。生体内から骨格筋幹細胞を採取し移植する方法では細胞の供給面で問題があり臨床利用はできない。この問題を解決するため、これまでに、人工多能性幹細胞(iPS細胞)より骨格筋幹細胞を分化する方法が確立されている。DMD患者の呼吸機能を改善させるため、横隔膜へ細胞移植を行うことが必要と考えられるが、モデルマウスを用いた実験では、これまで横隔膜への細胞移植の報告はない。

【結果】
本研究グループは、移植方法の確立のため、GFPマウスの筋肉からサテライト細胞を分取し、免疫不全DMDモデルマウス(NOG-mdxマウス)の横隔膜へサテライト細胞が移植可能か検討した。横隔膜へ細胞を直接投与し4週後に蛍光実体顕微鏡で観察した結果、横隔膜にGFPを発現した筋線維を認めた(Fig.1)。また、免疫組織学的染色によりこの筋線維はジストロフィンの発現を確認した(Fig.2)。これらは横隔膜へ細胞移植が可能であることを示した。

次に、異種細胞であるヒト骨格筋細胞が横隔膜に生着が可能か検討した。ヒト不死化細胞株(Hu5/KD3)は免疫不全マウスの骨格筋に生着し、骨格筋へ分化することが知られている。移植細胞由来の筋線維を識別するため、Hu5/KD3へGFPを遺伝子した細胞株を使用した。Hu5/KD3はマウス由来サテライト細胞と同様に、移植後4週において横隔膜への生着と筋線維への分化を認めた(Fig.3)。しかし、移植部位のジストロフィン陽性筋線維数を移植効率として2群比較した結果、Hu5/KD3の移植効率はサテライト細胞に比べ有意に少なく(Fig.4)、横隔膜への異種細胞移植では移植効率を向上させるためプロトコールの再検討が必要であった。

マウスの呼吸数は150−200回/分程度と速く、その横隔膜の急速な筋収縮により注入した細胞液が流出する。このため、細胞や細胞液の歩留まりを改善させるために移植基剤を検討した。粘性が高く臨床応用されている、ゼラチン、ヒアルロン酸、アルギン酸に着目し、この3種類のポリマーを移植基剤として、NOG-mdxマウスの前脛骨筋へ移植し比較した。移植後2週で、移植細胞由来の筋線維をジストロフィンと細胞骨格タンパクであるスペクトリンで標識し、免疫組織学的染色した(Fig.5)。結果、ヒアルロン酸:ゼラチン=2:8(H2G8)、アルギン酸:ゼラチン=2:8(A2G8)の混合比率が有意に移植効率を高めることが示された(Fig.6)。

上記の結果を踏まえ、iPS細胞から分化誘導した骨格筋幹細胞(iPS cell-derived muscle stem cell: iMuSC)をH2G8、A2G8と混合ポリマーなしの3条件でNOG-mdxマウスの横隔膜へ移植し、移植効率を比較した。移植後4週において、H2G8ではスペクトリン陽性線維数が多く(Fig.7)、また、生着しないサンプルの割合(細胞移植不成功率)は、ポリマーなしやA2G8より、H2G8において少ない傾向であった(Fig.8)。

最後に、移植時の注射針による物理ストレスが細胞に影響について検討した。シリンジや針を通過する際に細胞へ物理的ストレスがかかり、細胞の生存率を下げることが知られている。この物理的ストレスが移植細胞の増殖に影響を及ぼすか明らかにするため、H2G8あり、ポリマーなし、処置なしの3条件で比較した。iMuSCについてH2G8を混合した条件はポリマーを含まない条件より有意に細胞が増殖し、処置なしで培養した群と同等であった(Fig.9)。同様の検討で、マウス由来サテライト細胞では処置により細胞増殖が抑制されるが、Hu5/KD3では抑制されなかった(Fig.9)。

【考察】
本研究では、DMDマウスの横隔膜へ骨格筋幹細胞が移植可能であることを示し、更にゼラチンとヒアルロン酸で構成される混合ポリマーにより移植効率が向上することが明らかとなった。

DMD患者の呼吸機能を改善させるため、横隔膜へ骨格筋幹細胞移植が必要と考える。更にはiPS細胞から骨格筋幹細胞を分化誘導することで、ドナー細胞のストック確保の問題が解消されることが予想される。しかし、現状のiPS細胞からの骨格筋幹細胞誘導プロトコールは誘導効率が低く、誘導まで長期間の培養を要する。このため、本研究では、移植プロトコールの検討にヒト不死化筋芽細胞株(Hu5/KD3)を使用した。Hu5/KD3を横隔膜に移植した結果は、生着後に筋再生することが示されたが、マウス由来サテライト細胞との比較では、移植効率は低い結果であった。筋芽細胞はサテライト細胞と比較し筋再生能が低いこと、また筋組織より分取した細胞と培養細胞では、細胞外マトリックスが異なる環境にあることが原因として考えられる。加えて、マウスの横隔膜の筋収縮が、細胞と細胞液を移植箇所から流出させ、細胞生着を阻害している可能性がある。このため、細胞や細胞液の歩留まりを改善させるために移植基剤の検討を行った。粘性が高く臨床応用されている、ゼラチン、ヒアルロン酸、アルギン酸に着目し、この3種類のポリマーを移植基剤として、NOG-mdxマウスの前脛骨筋へ移植した。移植後2週で、移植細胞由来の筋線維を免疫組織学的染色で評価した結果、H2G8、A2G8で有意に移植効率を高めることが示された。

マウス横隔膜への細胞移植はこれまでに報告されていない。加えて、本研究ではマウス由来サテライト細胞と同様の移植プロトコールであっても、iMuSCのみでは半数以上の移植例で生着できないことが分かった。一方で、Hu5/KD3では移植した結果では少なくとも1箇所には生着が見られる。これは、Hu5/KD3はhTERT、CDK4R24CとcyclinD1を遺伝子導入した不死化細胞であることが一因と考えられる。シリンジと針を通す処置を加えた培養実験では、Hu5/KD3では増殖数の低下は見られないが、不死化していないiMuSCとマウス由来サテライト細胞では処置により細胞増殖が低下する結果であった。iMuSCは不死化細胞株ではないことや生体から分取した細胞ではないことが、横隔膜への局所投与による細胞移植では生着を困難にしていると考えられる。H2G8はわずかではあるが横隔膜への移植効率を向上させ、このことは、局所投与の際の物理的負荷を軽減していることを示唆している。以上より、H2G8は横隔膜への骨格筋幹細胞移植を改善させる1つの有効な手段である。

【結論】
マウスの横隔膜へ骨格筋幹細胞移植は可能であり、更に、ヒアルロン酸とゼラチン混合ポリマーを移植基剤として使用することで、マウス横隔膜における細胞移植不成功率を低下させる。この結果は、他の局所投与による細胞移植研究においても有用な方法と考える。

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