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大学・研究所にある論文を検索できる 「Studies on a Bioactive Substance for Epidermal Barrier Improvement Derived from Fermented Barley Extract」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Studies on a Bioactive Substance for Epidermal Barrier Improvement Derived from Fermented Barley Extract

Maruoka, Naruyuki 京都大学 DOI:10.14989/doctor.k23579

2021.11.24

概要

発酵大麦エキス(FBE)は大麦焼酎粕を精密ろ過処理することで得られる食品素材である。FBEには、大麦のタンパク質や糖類の分解物、また酵母や麹の二次代謝産物が含まれており、これまでに脂肪肝抑制効果や血清尿酸値抑制効果といった機能性が報告されている。また、FBEの芳香族系合成吸着剤吸着画分(FBEP)をマウスに経口摂取させると、イムノグロブリンE(IgE)などの産生抑制に関与するグルタチオン含量が肝臓において増加することも知られている。IgEの産生抑制はアトピー性皮膚炎の改善をもたらすと考えられることから、FBEPがアトピー性皮膚炎の緩和効果を有することが期待された。本研究は、FBEPの経口摂取が皮膚に及ぼす影響の解析、活性成分の同定及び生成機構の解析を行ったものであり、その内容は以下のように要約される。

1.FBEPの経口摂取がアトピー性皮膚炎様マウスの皮膚バリア機能に及ぼす影響の解析
 FBEPの経口摂取が皮膚バリア指標の角層水分含量及び経皮水分蒸散量(TEWL)に及ぼす影響を調べた。試験には、皮膚の変化の測定が容易なヘアレスマウスを用いた。ハプテン(2, 4, 6-trinitro-1-chlorobenzene)を繰り返し塗布することで作製したアトピー性皮膚炎様マウスに、FBEPを5%含む試験試料を自由摂取させた。その結果、FBEP摂取群はコントロール群と比べて角層水分含量が有意に上昇し、TEWLが有意に減少した。この結果より、FBEPには、皮膚バリア機能の改善効果を有する生理活性物質が含まれていることが示唆された。

2.皮膚バリア機能改善能を有する成分の単離と構造解析
 FBEPに含まれる皮膚バリア機能改善活性成分を特定するため、FBEを芳香族系合成吸着剤に負荷後、20%エタノールで洗浄し、99%エタノールで溶出した画分をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより分画した。角層水分含量の上昇とTEWLの減少をもたらした画分を液体クロマトグラフィー質量分析法で調べた結果、分子量が486の物質(Mw486)と598の物質(Mw598)の存在が示された。次にこれらの精製品を大量に得るため、600LのFBEから芳香族系合成吸着剤及び分取用C18カラムを用いて精製を行った。合成吸着剤での分画では、吸着画分を20%エタノールで洗浄後に40%エタノールで溶出した画分に両物質が含まれていた。この画分を凍結乾燥後、クロロホルム−メタノール(80:20)で抽出し、抽出画分に含まれるMw486とMw598を分取用C18カラムで精製した。得られた精製品をアトピー性皮膚炎様マウスに供したところ、Mw598摂取群ではコントロール群に比べて角層水分含量が有意に上昇し、TEWLが有意に減少した。一方、Mw486摂取群には有意な差は見られなかった。これらの結果から、Mw598が活性成分であることが示された。高分解能質量分析、核磁気共鳴スペクトル測定、高速液体クロマトグラフィーによるアミノ酸分析、Marfey法による構成アミノ酸の絶対立体配置の解析の結果、Mw598は構成アミノ酸が全てL体の新規ピログルタミルペンタペプチド(pEQPFP:pEはピログルタミン酸残基)であることが明らかとなった。さらに、合成ペプチドを用いた動物試験において、精製品と同様に角層水分含量の上昇とTEWLの減少が見られ、pEQPFPが活性成分であることが裏付けられた。

3.焼酎もろみにおけるピログルタミルペンタペプチドpEQPFPの生成機構の解析
 ペプチドのアミノ末端グルタミン残基は水溶液中での加熱によって環化し、ピログルタミン酸残基に変換される。そのため、pEQPFPの前駆物質としてQQPFPが想定された。蒸麦と大麦麹に含まれるpEQPFPとQQPFPを分析した結果、蒸麦ではいずれの物質も検出されなかったのに対し、大麦麹中には両物質が検出された。次に、1次もろみ(大麦麹に水と酵母を加えて発酵させることで製造)と2次もろみ(1次もろみに蒸麦と水を加えて発酵させることで製造)の中の両物質の経時変化を調べたところ、pEQPFPは経時的に増加したのに対し、QQPFPは2次もろみの3日目をピークとして、それ以降は低下する傾向が見られ、QQPFPがpEQPFPに変換されていることが示唆された。続いて、蒸留方法がピログルタミル化へ与える影響を調べた。焼酎の蒸留方法には100℃で行う常圧蒸留と50-60℃で行う減圧蒸留があるが、減圧蒸留ではピログルタミル化の促進は見られなかったのに対し、より高温で行う常圧蒸留ではピログルタミル化が促進された。
 もろみ中のペプチドは、一般に原料のタンパク質が麹菌の分泌するプロテアーゼにより分解されることで生成する。そのため、QQPFPも大麦タンパク質に由来する可能性が考えられた。大麦タンパク質のアミノ酸配列を調べた結果、貯蔵タンパク質であるホルデインにQQPFPの配列が多数見られた(Cホルデイン:347残基中13か所、Bホルデイン:297残基中5か所、γホルデイン:305残基中3か所)。そこで、麹菌の分泌酵素によるホルデインの分解でQQPFPが生成することを想定し、大麦麹の酢酸緩衝液抽出物の硫安沈殿物(ASPS)とホルデインを反応させたところ、QQPFPとpEQPFPの生成が見られた。一方、熱処理したASPSを用いた場合、両物質の生成は著しく減少した。この結果は、pEQPFPが、焼酎製造に用いる白麹菌(Aspergillus luchuensis mut. kawachii)の酵素によるホルデインの分解物に由来することを強く示唆している。食品産業で利用される種々の麹菌を用いて同様の実験を行った結果、白麹菌と近縁種である黒麹菌(Aspergillus luchuensis)を用いた場合にも、QQPFPとpEQPFPが生成することが示された。

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