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大学・研究所にある論文を検索できる 「切除可能膵癌患者の肝転移診断におけるGd-DTPA-EOB造影剤を用いたabbreviated MRIの有用性」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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切除可能膵癌患者の肝転移診断におけるGd-DTPA-EOB造影剤を用いたabbreviated MRIの有用性

山口, 尊 神戸大学

2022.03.25

概要

【目的】
膵管腺癌(膵癌)は米国における癌関連死亡原因の第 4 位であり、公衆衛生上の大きな懸念事項となっている。膵癌に対する唯一の根治的治療法は外科的切除である。膵癌患者の約半数は初診時に転移を有しており、特に肝転移が多い。これらの患者では、肝転移の有無により治療方針が大きく変わるため、肝転移の正確な診断が極めて重要である。NCCN のガイドラインでは、膵癌患者の病期診断において造影 CT での評価を推奨している。その後、診断確定のために超音波内視鏡検査や内視鏡的逆行性胆管膵管造影が行われる。MRI は検査時間が長いことが一因で、病期診断においてルーチンでの使用は推奨されていない。

Gd-DTPA-EOB 造影 MRI(EOB-MRI)は肝細胞相画像が撮像可能であり、肝細胞相は膵癌患者の肝転移検出において造影 CT よりも感度が優れると報告されている。しかし、検査時間の長さにより、膵癌患者に対する EOB-MRI の使用は制限される可能性がある。撮像シーケンスを限定した abbreviated EOB-MRI(aMRI)の撮像プロトコルは従来のプロトコルよりも短時間で実施可能であり、上記の問題の解決策となり得る。T2 強調画像(T2WI)、拡散強調画像(DWI)、肝細胞相画像を含む aMRI は、大腸癌や神経内分泌腫瘍の肝転移診断において高い精度を示すことが最近明らかになっている。aMRI は診断能を損なうことなく MRI 検査のスループットを向上させ、膵癌患者の病期診断と治療方針の決定に役立つと考えられる。

したがって、本研究の目的は、膵癌患者の肝転移検出における aMRI の診断能を評価することである。

【方法】
研究デザインと母集団
本研究は単一施設により後方視的に実施された。2014 年 6 月から 2020 年 3 月までに造影 CT と EOB-MRI の両方を撮像され、病理学的に証明された膵癌患者 341 例が対象となった。除外基準は、膵癌術後再発(7 例)、術前化学療法(39 例)、膵管腺癌以外の病理組織型(3 例)、切除不能膵癌(19 例)、11 箇所以上の肝病変(9 例)、フォローアップ期間が 6 ヶ月未満(134 例)であった。最終的に、平均年齢 68.7±10.7 歳の 130 例の患者(男性 72 名、女性 58 名)が解析に含まれた。

読影実験
放射線科医 3 名が、以下の 3 つの画像セットをそれぞれ独立して読影し、肝病変を評価した。セット 1:非造影・早期相・門脈相・平衡相画像からなる造影 CT、セット 2:造影 CT と脂肪抑制 T2WI・DWI・肝細胞相画像からなる aMRI、セット 3:造影 CT と標準的な撮影シーケンス(aMRI に加えて T1WI・ダイナミック造影)からなる standard EOB-MRI(sMRI)。読影者は患者の臨床情報を知らされなかったが、症例が病理学的に切除可能または切除可能境界の膵癌であることは認識していた。読影実験は 2 段階の読影セッションで構成された。初回の読影では、読影者は各患者のセット 1 を読影し、続けてセット 2 を読影した。2 回目の読影では、読影者はセット 3 を読影した。読影者はセット 2 および 3 を読影する際に、セット 1 の自らの読影結果を参照可能であった。2 回の読影セッションは、想起バイアスを避けるため少なくとも 2 週間の間隔を開けて行われ、各読影セッションにおいて各患者の画像はランダムな順序で読影された。

読影者は検出した全ての肝病変を記録した。各病変について、Couinaud 分類による位置と横断像における最大径を、対応するスライス番号とともに記録した。読影者は各病変について悪性の可能性を 5 段階で評価した(1=間違いなく良性、2=おそらく良性、3=不確定、4=おそらく悪性、5=間違いなく悪性)。造影 CT では、肝実質よりも低吸収を示し、リング状に増強される病変を肝転移と診断した。MRI では、境界不明瞭で、T1 強調画像で低信号、T2WI で軽度高信号、肝細胞相で低信号、DWI で高信号を示し、ダイナミック造影でリング状に増強される病変を肝転移と診断した。

参照基準(Reference Standard)
肝転移の参照基準は、病理組織学的所見(生検または切除)または CT や MRIを含む利用可能な全ての画像診断に基づいた。病理所見が得られない場合は、CT や MRI の所見から転移が疑われ、フォローアップ画像で増大もしくは化学療法後に縮小した病変を転移と判断した。術中に転移を疑う所見がなく、画像上 6 ヶ月以上サイズ変化のない病変を良性と判断した。読影に関与しない放射線科医 1 名が臨床・組織学的データを収集し、読影者 3 名が検出した全ての病変を転移・良性に分類した。読影実験の開始より前に、放射線科医 2 名が全症例の切除可能性を合意で決定した。

統計解析
真陽性病変と偽陽性病変のスコアに基づき、各画像セットについて Fleiss κ 統計を用いて読影者間一致率を算出した。結果はスコアによって定性的に層別化された(0.01-0.20, slight; 0.21-0.40, fair; 0.41-0.60, moderate; 0.61-0.80, substantial; and 0.81-0.99, almost perfect)。Fleiss κ統計は統計ソフトウェア(IBM SPSS)を用いて算出した。

各画像セットの診断能を評価および比較するために、統計ソフトウェア(JAFROC)を用いて receiver operating characteristic(ROC)解析を行った。Figure of merit(FOM)は、正常画像で最も評価の高い非病変よりも病変が高く評価される確率と定義され、総合的な診断能を示すために使用された。

スコア 4–5 を肝転移陽性と定義し、肝転移を検出するための各画像セットの病変あたりの感度と陽性適中率(PPV)を算出した。また、スコア 4–5 の病変を 1 箇所以上有する患者を肝転移陽性とみなして、患者ごとの感度、特異度、PPV、陰性的中率(NPV)、精度を求めた。感度、特異度、精度の比較には McNemar 検定、PPV と NPV の比較には Fisher の正確検定を用いた。McNemar 検定と Fisher の正確検定は統計ソフトウェア(MedCalc)で実施した。P 値 0.05 未満を統計的有意とした。

【結果】
患者および肝転移の特徴
130 例中 13 例(10.0%)に合計 43 箇所の転移が検出された。130 例の患者のうち、101 例(77.7%)は切除可能膵癌、29 例(22.3%)は切除可能境界膵癌であった。肝転移の直径は平均 6.3mm(範囲:3.1–13.2mm)で、38 病変(88.4%)は直径 10mm 未満であった。43 病変のうち、7 病変(16.3%)は病理組織学的所見、残りの 36 病変(83.7%)はフォローアップ画像を参照基準とした。造影 CT 画像と EOB-MRI の撮影間隔は平均 9.2 日(範囲:0–54 日)で、111 例(85.4%)では EOB-MRI の前に造影 CT が施行された。

病変ごとの診断能(per-lesion diagnostic performance)
読影者はセット 1、2、3 でそれぞれ平均 263、322、322 箇所の肝病変を検出した。読影者間一致率はセット 1、2、3 でそれぞれ substantial(κ=0.79 [95% CI: 0.64, 0.93] )、moderate(κ=0.46 [95% CI: 0.31, 0.60] )、および moderate(κ=0.41 [95% CI: 0.33, 0.49] )であった。

読影者平均 FOM は、セット 1、2、3 についてそれぞれ 0.609、0.884、0.886 であった。平均 FOM はセット 1 と 2、セット 1 と 3 の間で有意差があり、セット 2 と 3 の間では有意差がなかった。

平均感度は、セット 1、2、3 でそれぞれ 24.8%、81.4%、83.7%であった。セット 2 および 3 の感度は、各読影者および平均値においてセット 1 と比べて有意に高かった。一方、セット 2 と 3 の間での有意差はなかった。平均 PPV は、セット 1、2、3 でそれぞれ 76.2%、86.1%、85.7%であった。各読影者および平均値において各セット間の PPV に有意差はなかった。

セット 1、2、3 では、少なくとも 1 人の読影者が 5、13、12 箇所の病変を誤って悪性と診断した。セット 1 の偽陽性病変 5 箇所は全て肝実質に対して低吸収、脳脊髄液に対して高吸収を示した。セット 2 または 3 の偽陽性病変 16 箇所のうち、13 箇所(81%)は DWI で高信号を示した。

患者ごとの診断能(per-patient diagnostic performance)
セット 2 と 3 の読影者平均感度・NPV・精度はセット 1 より有意に高かったが、セット 2 と 3 の間には有意差はなかった。平均特異度・PPV は各セット間で有意差はなかった。各読影者において正しく診断された患者数は、セット 1 と比較してセット 2 では 9 例(6.9%)、7 例(5.4%)、5 例(3.8%)、セット 3 では 9 例(6.9%)、5 例(3.8%)、7 例(5.4%)多かった。また、セット 1 で肝転移が不確定(スコア 3)と判定された患者のうち、セット 2 では 69.2%(27/39)、61.5%(16/26)、66.7%(18/27)、セット 3 では 74.4%(29/39)、69.2%(18/26)、74.1%(20/27)がより高い確信度で良性と診断された(スコア 1–2)。

【結論】
EOB-MRI と造影 CT の併用は、切除可能な膵癌患者の肝転移の検出において造影 CT 単独よりも高い診断能を示した。abbreviated EOB-MRI の診断能は、standard EOB-MRI と同等であった。abbreviated EOB-MRI は、根治的手術の候補である膵癌患者の肝転移診断において有用な画像検査となりうる。

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