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大学・研究所にある論文を検索できる 「4D-CTによる低造影剤量CT AngiographyのEVAR術前における有用性の検討」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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4D-CTによる低造影剤量CT AngiographyのEVAR術前における有用性の検討

Horinouchi, Hiroki 神戸大学

2020.03.25

概要

【目的】
腹部大動脈瘤に対するステントグラフト内挿術(EVAR)は従来の外科的手術に比べ低侵襲であり、良好な治療成績を収めているため、広く普及している。EVAR では解剖学的な適応を判断するために、術前の画像検査による詳細な評価が必須である。術前検査として CT Angiography が第一選択であるが、従来の撮影プロトコールでは大動脈を評価するためには多くのヨード造影剤量を使用している。造影剤腎症の主なリスク因子は腎機能障害であり、EVAR 対象群には造影剤腎症のリスクを有する症例が多く含まれている。また、腎機能障害は EVAR 術後の予後不良因子でもあるため、造影剤腎症の予防のために、EVAR 術前の CT Angiography におけるヨード造影剤を可能な限り減量しなければならない。

Temporal maximum intensity projection (temporal MIP)は多時相の画像データの最大値を加算する画像処理技術である。また、4D-CT は連続撮影にて従来の三次元の形態評価に時間軸の情報を加え、動態評価を目的とした撮影技術である。低造影剤量での 4D-CT では血行動態は評価可能であるが、各時相では大動脈の造影効果は不均一であり、形態評価には適さない。そこで temporal MIP で 4D-CT の各時相を加算処理することで、低造影剤量でも均一な造影効果の CT Angiography が作成可能と考えた。 temporal MIP と 4D-CT を応用した低造影剤量CT Angiography によるEVAR 術前検査を試み、その有用性を検討する。

【方法】
造影剤腎症のリスクを有する EVAR 候補 26 例(平均 78.8 歳; 男性 22 例, 女性 4 例;平均体重 58.8 ± 12.2kg)に対して造影剤量 15mL で全 10 時相の 4D-CT を撮影し、 temporal MIP を用いて全時相を加算処理したCT Angiography (tMIP-CTA)を作成した。推算糸球体濾過量(eGFR)が 45mL/min/1.73m2 未満の 18 例と複数のリスク因子 (eGFR 60mL/min/1.73m2 未満、糖尿病、高血圧など)を有する 8 例を対象とした。欧州泌尿生殖器放射線学会ガイドラインに基づき、造影剤腎症は検査後 48 から 72 時間での血清クレアチニン値の 0.3mg/dl もしくは 1.5-1.9 倍以上の上昇と規定し、検査後の造影剤腎症の有無を評価した。

CT 装置は SOMATOM Force (Siemens Healthcare)を使用し、単純 CT (120-kVp; detector configuration, 0.6 × 192mm; rotation time, 0.25 秒)を胸腹部の範囲で撮影後、 4D-CT (70-kVp; detector configuration, 0.6 × 192mm; rotation time, 0.25 秒)を寝台が頭尾側方向に往復するシャトルスキャンにて 63cm の撮像範囲で全 10 相を連続撮影した。前半 5 相は 2.5 秒間隔、後半 5 相は 5 秒間隔で撮影し、全撮影時間は 35.35 秒であった。

まず、上行大動脈に関心領域を置き、少量の造影剤注入(造影剤 1mL + 生理食塩水9mL, 生理食塩水後押し 20mL; 注入速度, 3mL/秒)にて最大 CT 値到達時間を計測した。4D-CT の本撮影では造影剤注入(造影剤 15mL, 生理食塩水後押し 40mL; 注入速度, 3mL/秒)を開始後、先に計測した上行大動脈最大 CT 値到達時間の 2 秒前より 4D- CT の撮影を開始した。体重当たりのヨード量を均一化するために、体重に応じて造影剤濃度を選択した(70kg 以上; 370mgI/mL, 55 ‒ 70kg; 300mgI/mL, 55kg 未満; 240mgI/mL)。

4D-CT 画像データをワークステーション(Syngo.via; Siemens Healthcare)のアプリケーション(Syngo. CT Dynamic Angio; Siemens Healthcare)にて加算処理とノイズ低減、位置補正、非剛体補正を行い、全 10 時相の最大 CT 値を反映した tMIP-CTA を作成した。
定量評価として 1 名の評価者で tMIP-CTA における大動脈から腸骨動脈内に関心領域を置き CT 値を計測し、Contrast to noise ratio (CNR)を算出した。また、2 名の評価者で単純 CT と tMIP-CTA で動脈の内径、外径を計測した。

定性評価として 2 名の評価者で総合的な画質, 大動脈の造影効果, 大動脈辺縁のブレ、腎動脈近位と遠位の描出、三次元再構成像の項目で tMIP-CTA の画質評価を 5 段階で 行った。また、EVAR の解剖学的基準(IFU)の適否、重複腎動脈の有無、下腸間膜動脈 開存の有無を評価した。

単純 CT と 4D-CT の放射線線量、検査前後での血清クレアチニン値の比較に Wilcoxon signed-rank test を使用した。血管径計測の信頼性評価として評価者間では級内相関係数(ICCs)を使用し、単純 CT と tMIP-CTA 間では Bland-Altman 分析を使用した。また、多変量解析にて大動脈の造影効果と不均一性の関連因子を抽出した。有意水準はP<0.05 とした。

【結果】
4D-CT 撮影は全例で成功し、ヨード使用量は平均 76.7 ± 10.3 mgI/kg で検査後の有意な血清クレアチニン値の上昇はなく、造影剤腎症は認めなかった。tMIP-CTA の放射線線量(Volume CT dose index (CTDIvol); 16.9 ± 4.0mGy, Dose-length product (DLP); 1030.4 ± 251.3mGy × cm)は単純 CT(CTDIvol; 9.1 ± 1.7mGy, DLP; 656.2 ± 143.8mGy× cm)と比較し有意に高い結果であった(P< 0.001)。

tMIP-CTA における大動脈 CT 値は平均 267.5 ± 51.4HU で末梢側の CT 値と CNRが低い傾向にあった。多変量解析では大動脈体積が造影効果の不良因子として抽出された。単純 CT と tMIP-CTA で同一評価者内の外径計測において Bland-Altman 分析で差は認めず、tMIP-CTA における評価者間の外径計測(ICCs; 0.910−0.992)および内径計測(ICCs; 0.895−0.993)の一致率は良好であった。

tMIP-CTA で 24 例(92%)において総合的に良好な画質が得られた。大動脈の造影効果や腎動脈近位の描出は良好であり、大動脈辺縁のブレや三次元再構成像は EVAR 術前検査として妥当な結果であったが、腎動脈の遠位は近位に比べ描出が不良であった。
tMIP-CTA に基づいたEVAR のIFU の適否、重複腎動脈の有無、下腸間膜動脈開存の有無の一致率は 100%であった。

【結論】
Temporal MIP を応用した 4D-CT ではEVAR 術前評価に必要な造影効果と画質を保ちながら大幅な造影剤減量が可能であり、造影剤腎症の高リスク患者における EVAR術前検査として妥当である。

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