リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

大学・研究所にある論文を検索できる 「肺病変に関するFDG PET/MRIにおけるZero-TE法の診断能について」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

コピーが完了しました

URLをコピーしました

論文の公開元へ論文の公開元へ
書き出し

肺病変に関するFDG PET/MRIにおけるZero-TE法の診断能について

Zeng, Feibi 神戸大学

2021.03.25

概要

【背景】
 18 F-Fluorodeoxyglucose (FDG) PET/CT は近年癌の診療において大きな役割を担い、N因子やM 因子の診断などを通して治療方針の決定に寄与する重要なモダリティーである。 PET/MRI 一体型装置は、糖代謝の情報(PET)と形態情報(MRI)を同時に収集することのできる新たなモダリティーである。CT に引き続いてPET を撮像するPET/CT とは異なり、PET/MRI は同時収集を行うため、融合画像の精度が非常に高いことが特長の一つである。頭頚部癌や婦人科癌において、MRI によるコントラスト分解能の高い画像が得られることは有用である。一方で、呼吸・心臓の動きによるモーションアーチファクトや、それ自体のプロトン密度が低いことから、従来の撮像法である two-point Dixon three-dimensional volumetric interpolated fast spoiled gradient echo (Dixon)法においては肺病変の診断能が乏しかったため、これを改善する必要があった。
 Zero echo time (ZTE)法は、Radial sampling を行うため動きによるartifact に強いこと、echo time がほぼゼロに近いほど短いためプロトン密度が低く、T2 緩和時間の短い組織の描出に向いていることから肺野の描出に向いているシークエンスであると考えられる。

【目的】
 今回の研究では、担癌患者の PET/MRI において、従来の Dixon 法と新たな撮像法である ZTE 法とその PET との融合画像に関して肺病変の存在診断および良悪鑑別について診断能を評価した。

【方法】
 2017 年 8 月から 2018 年 8 月に当院でPET/MRI (SIGNA PET/MR, GE Healthcare)を撮像した 742 例の担癌患者のうち、肺の ZTE 法を撮像できなかった 270 例・評価対象の最終診断を行うための CT が存在しなかった 255 例・最終診断を行った時期とPET/MRI 撮像時で明らかに患者状態が異なる 8 例を除いた 209 例について検討した。
 肺病変の存在診断および良悪鑑別について、患者毎に検討を行うとともに、肺病変が存在した 113 例についての病変毎に検討を行った。存在診断についての最終診断はPET/MRI 撮像から一か月前後以内の胸部 CT を用い、肺病変のサイズは長径を計測した。一方、良悪鑑別の最終診断は病理もしくは、最低 16 ヶ月以上の画像経過観察の結果で決定した。存在診断と良悪鑑別について、2 人の評価者がそれぞれ、PET/Dixon とPET/ZTE の融合画像について視覚的に 5 段階スコアを用いて評価した。患者毎の検討では、differentiation score(良悪鑑別スコア)を 5 段階(score 1: 良性, score 2: おそらく良性, score 3: どちらともいえない, score 4: おそらく悪性, score 5: 悪性)定め、肺病変が存在しない、もしくはあっても differentiation score が 1-3 のものを良性、differentiation score が 4,5 のものを悪性とし た。病変毎の検討では、存在診断について 5 段階の detectability score(score 1: 存在しない, score 2: おそらく存在しない, score 3: どちらともいえない, score 4: おそらく存在する,score 5: 存在する)を用いて評価した。融合画像上、病変が指摘できたものに関しては、良悪鑑別について上記と同様の 5 段階の differentiation score を用いて評価を行った。
 クラスターバイアスを小さくするため、1 患者あたりの病変数が 5 個以上の場合は、ランダムに 5 個を選び評価対象と定めた。また、リファレンスで計測したサイズによって 4 つのサブグループ(< 4 mm, ≥4 mm かつ< 6mm, ≥ 6 mm かつ< 8 mm, ≥ 8 mm)に分け、それとは別にリファレンスに基づいて対応する病変の PET の FDG 集積の 程度 maximum standardized uptake value (SUVmax)を計測し、3 つのサブグループ(< 1, ≥ 1 かつ< 3, ≥ 3)に分けた検討を行った。リファレンスでは指摘できるが、PET/MRI では指摘できない病変に関してはSUVmax を 0 と定めて評価した。
 統計学的検討は、MedCalc version 18.11(MedCalc Software Ltd.)を使用し、統計学的有意水準は、患者毎の解析では P< 0.05、病変毎の解析では P< 0.01 とした。読影者毎の PET/Dixon と PET/ZTE 間における肺病変の存在診断能の比較は Wilcoxon’s signed-rank test を用いて行い、良悪鑑別能の比較は ROC 解析を用いて行った。また、読影者間の一致率はweighted Cohen’s kappa coefficients を用い、< 0 をpoor agreement、0.00 ~ 0.20 をslight agreement、0.21 ~ 0.40 をfair agreement、0.41 ~ 0.60 を moderate agreement、0.61 ~ 0.80をsubstantial agreement, 0.81 ~ 1.00 をalmost perfect agreement と定めた。

【結果】
 209 例の担癌患者の内訳は、男性 97 例、女性 112 例、平均年齢 66.5 ± 12.9 (17-89)歳であった。原疾患は、婦人科癌 59 例、肝胆膵癌 50 例、消化器癌 48 例、頭頚部癌 30 例、原発不明癌 7 例、肉腫 4 例、悪性リンパ腫 3 例、悪性黒色腫 2 例、皮膚癌 2 例、肺癌 2 例、GIST1例、NET1 例であった。肺病変が存在した 113 例の内訳は、男性 52 例、女性 61 例、平均年齢 67.8 ± 12.8 (25-89)歳であった。病変は 227 個あり、1 例あたりの平均病変個数は 2.14 (1– 5)個で、mass が 2 例、nodule が 196 例、pure ground glass opacity が 27 例、subsolid noduleが 2 例であった。227 病変中、173 病変が良性、54 病変が悪性(そのうち 52 病変は肺転移で、2 病変は肺癌)であった。227 病変の平均SUVmax は 1.96 ± 3.51 であった。
 患者毎の良悪鑑別についての ROC 解析の AUC は、2 名の評価者どちらにおいても PET/ZTE の方が高い値で、評価者 2 においては、統計学的有意差を認めた(PET/Dixon, 0.935; PET/ZTE, 0.961; p = 0.0451)。
 病変毎の存在診断では、2 名の評価者どちらにおいても、全病変・SUVmax 3 以下のグループでPET/ZTE の方がPET/Dixon と比べて有意にスコアが高かった(p < 0.0001)。また、2名の評価者どちらにおいても、サイズによるいずれのサブグループでも、PET/ZTE の方が PET/Dixon と比べて有意にスコアが高かった(p < 0.004)。病変毎の良悪鑑別についての ROC解析の AUC は、両方の評価者で PET/ZTE の方が PET/Dixon よりも有意に AUC が高かった(評価者 1, p = 0.0016; 評価者 2, p = 0.0001)。
 具体的な例として、CT で炎症性変化を考える 7.9 mm の辺縁が直線状のすりガラス影を認めた膵癌術後の 75 歳女性の画像を挙げた。ZTE では CT のような形態情報が得られたため良性変化と診断できた一方で、Dixon では病変は同定不能もしくは結節状の形態を示したため悪性病変と誤診された例であった。
 PET/Dixon を用いた場合よりも、PET/ZTE を用いた方が、肺病変の存在診断能が優れていることが示された。サイズが 4mm 以下の微小な病変や、SUVmax が 3.0 以下の病変においても、PET/ZTE はPET/Dixon に比べて病変の描出が優れ、上記の症例のように PET/ZTE は存在診断のみならず、病変の良悪鑑別においてもPET/Dixon に優れることが示された。

【結論】
 ZTE 法はFDG 集積に関わらず 4mm 以下の肺病変の診断能を改善し、担癌患者のPET/MRI における肺病変の診断に有用である。

全国の大学の
卒論・修論・学位論文

一発検索!

この論文の関連論文を見る