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大学・研究所にある論文を検索できる 「The meiosis-specific cohesin component stromal antigen 3 promotes cell migration and chemotherapeutic resistance in colorectal cancer」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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The meiosis-specific cohesin component stromal antigen 3 promotes cell migration and chemotherapeutic resistance in colorectal cancer

佐々木, 優 大阪大学

2021.03.24

概要

〔目的〕
コヒーシン複合体は姉妹染色分体の接着や別離を調整して染色体の安定化に関わる。また、この複合体はDNA修復や転写、遺伝子発現の調節など多様な機能を有し、癌との関係性についても注目されている。近年、メラノーマにおいて、コヒーシンの主要な構成要素の一つであるstromal antigen (STAG)2、及びSTAG3の発現が、BRAF阻害剤の効果に影響を及ぼすと報告された。一方、大腸癌は約10%にBRAF変異を有し、BRAF阻害剤の有効性を検証する様々な臨床試験が進行中である。コヒーシン複合体関連遺伝子と癌との関連はいくつか報告されているが、STAG2及びSTAG3と大腸癌における関係性は明らかではない。そこで我々は、STAG familyが大腸癌の予後や悪性度に及ぼす影響を検討した。

〔方法〕
The Cancer Genome Atlas (TCGA)のデータベース、及び2009年から2013年に大阪国際がんセンターにおいて施行された172例の大腸癌手術検体を用いて、STAGの発現と予後、臨床病理学的因子との関係を調査した。In vitroにおいては、大腸癌細胞株(HCT116, SW480、HT29、RKO)を使用し、siRNAによるSTAG3の発現抑制が増殖能、遊走能、抗癌剤感受性に与える影響を検討した。また、大腸癌手術検体より樹立したヒトオルガノイドでも薬剤効果への影響を検討した。さらに、蛍光免疫染色によるγH2AXの評価、western blotによるERKシグナル経路の評価を通じて、その悪性度に関わる機序の解明を試みた。

〔成績〕
TCGAによる検討では、STAG3は大腸癌の予後に有意な関連性を認めたが、STAG2に有意な関連は認めなかった。大腸癌においてはSTAG3がより重要であると考えられ、172例の大腸癌手術検体を用いてSTAG3の予後解析を行った。PCRにてSTAG3の発現を評価し、内因性コントロールを基準に高発現群(28例)と低発現群(144例)に分けて検討した。STAG3高発現群は有意に無病再発期間が短縮し、全生存期間も短縮する傾向を認めた。無病再発期間に関する単変量解析、多変量解析により、STAG3高発現は独立予後不良因子であることが示された(HR 2.462、95%CI 1.206-4.712、P = 0.015)。これら臨床検体の中から無作為に70例を選択し、STAG3の免疫組織化学染色を施行したところ、タンパク質及びmRNAレベルでその発現は相関していることが確認され(P = 0.012)、STAG3の発現は大腸癌患者 の予後に関与すると考えられた。
大腸癌細胞株を用いた検討では、STAG3の抑制は増殖能に明らかな影響を与えなかったが、遊走能を有意に阻害した。さらにBRAF変異型大腸癌細胞株においては、上皮間葉転換のマーカーであるsnail family transcriptional repressor 1の減少とcadherin 1の上昇を認めた。また、STAG3の抑制は大腸癌のkey drugであるオキサリプラチン、フルオロウラシル、イリノテカンに対する感受性を有意に増強させた。同様の薬剤効果は大腸癌ヒトオルガノイドでも確認され、実臨床においてもその効果を増強させる可能性が示唆された。
次に、STAG3がこれらの癌の悪性度に関わる機序について検討した。コヒーシン複合体関連遺伝子の不活化はDNA修復に影響を与えると報告されている。STAG3の抑制によりγH2AX fociが増加し、大腸癌においてもSTAG3がDNA修復に障害をもたらすことが示唆された。さらに、BRAF変異型大腸癌細胞株において、STAG3の抑制はBRAF阻害剤に対する感受性を増強させ、dual-specificity phosphatase 6 (DUSP6)の上昇を介してERKのリン酸化を抑制することが確認された。また、STAG3とDUSP6の二重抑制を行うと、これらBRAF変異型細胞株では遊走能の有意な抑制は認められなくなったが。その一方で、γH2AX fociはSTAG3単独の抑制と比べても明らかな差は認めず、DUSP6のDNA修復に及ぼす影響は少ないと考えられた。

〔総括〕
大腸癌の新規癌遺伝子としてSTAG3を同定した。STAG3はDNA修復や、特にBRAF変異型大腸癌ではDUSP6を介したERKシグナルの調節に関与して、遊走能や抗癌剤感受性に関わっていた。STAG3は大腸癌における有望な治療標的になりうると考えられた。

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