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大学・研究所にある論文を検索できる 「Community structure and spatial distribution of ectomycorrhizal fungal spore banks in endangered Pseudotsuga japonica forests」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Community structure and spatial distribution of ectomycorrhizal fungal spore banks in endangered Pseudotsuga japonica forests

岡田 経太 三重大学

2022.05.10

概要

マツ科トガサワラ属トガサワラは,絶滅危惧II類(VU)の常緑針葉樹であり,紀伊半島と高知県東部の限られた地域に分布する.トガサワラの生育は,細根に定着する外生菌根菌による養水分の吸収に部分的に依存する.そのため,外生菌根菌はトガサワラの成長や生残,実生の定着にとって必要不可欠である.トガサワラ林の土壌には多様な外生菌根菌が存在することが知られており,中でも,トガサワラショウロはトガサワラ属樹木に対して特異的に感染,定着することからトガサワラの天然更新において重要な役割を担っていると示唆される.外生菌根菌の胞子の中には,土壌中で他の菌種よりも長い休眠期間と高い環境ストレス耐性を持つものがある.このような胞子を胞子バンクといい,新しく参入したトガサワラ実生にいち早く反応する感染源として機能することで,残存トガサワラ個体群の維持に寄与すると考えられる.そこで本学位論文では,トガサワラ林における外生菌根菌の胞子バンク群集と空間分布パターンの解明を目的とした.

 まず,トガサワラ林の土壌に潜在する外生菌根菌を対象とした胞子バンクの群集構造を明らかにするため,紀伊半島に位置するトガサワラ林内と周囲のスギ・ヒノキ人工林から土壌を採取し,そこに植物を育成して釣菌するバイオアッセイ法に供試した.7~13か月育成したダクラスファーに形成された外生菌根のITS領域を対象に塩基配列を決定した結果,13分類群が検出された.Cenococcum geophilumやトガサワラショウロ,クルミタケ属の一種,Delastria属の一種が優占した.トガサワラと関係する胞子バンクは,菌核や埋土胞子といった耐久性のある感染源をつくる少数の菌で特徴づけられた.胞子バンクの群集構造は植生の種類がトガサワラ林か,アーバスキュラー菌根性樹種が優占する人工林かによらず,調査地間で有意に異なった.このことは,胞子バンクは外生菌根性の森林内に制限されず,周囲の人工林にも広がっていることを示した.

 トガサワラショウロの胞子は,子実体が生産されるトガサワラ林から林内および周囲の人工林へ散布される.そこで本種胞子の分散距離と胞子バンクの空間分布を明らかにするため,紀伊半島と高知県東部に位置するトガサワラ林の林内から周囲のスギ・ヒノキ人工林にわたる範囲から土壌を採取し,本種をバイオアッセイ法により検出した.トガサワラショウロはトガサワラ林の林内または林縁から50m以内の宿主樹木から比較的近い地点の土壌で高頻度に検出され,一方で,林縁から数百m離れた土壌からも検出された.トガサワラショウロの出現頻度は林縁からの距離が大きくなるにつれて有意に減少した.これらの結果はトガサワラショウロが宿主の森林の外へ胞子バンクを広げる分散能力を持つことを示唆した.

 バイオアッセイ法は外生菌根菌の実生への感染,定着にもとづきそれらの存在を明らかにする手法である.しかし,実生の育成期間や感染の有無が感染源の密度の影響を受ける点に課題がある.そこで,より迅速で蓋然性の高い種特異的プライマーを用いたPCR法によるトガサワラショウロの検出をおこなった.トガサワラショウロのITS領域に対するプライマーを新たに設計した.本種への特異性およびPCRにおける増幅性をin silicoおよびin vitro実験によって検証し,5対のプライマーを選抜した.これら5プライマー対を用いたトガサワラ林土壌から抽出されたゲノム溶液に対するPCR増幅の結果,バイオアッセイ法では検出がなかったサンプルから明瞭なバンドが得られた.以上より,開発されたプライマーおよびPCR法のプロトコルは野外土壌に対して有効であり,バイオアッセイ法より高い感受性でトガサワラショウロの胞子バンクを検出できる可能性が示された.ただし,2対のプライマーで非特異的な増幅が疑われ,別の1対のプライマーは増幅能力が低いと推定された.したがって,設計したプライマー対のうち,結果として2対がトガサワラショウロの胞子バンクの検出に適用可能だと考えられた.

 以上のことから,トガサワラ林の内外にトガサワラショウロをはじめとする外生菌根菌の胞子バンクが存在することが明らかになった.さらに,トガサワラショウロの胞子分散距離が数百mに及ぶことから,胞子バンクを形成する外生菌根菌は宿主の存在する範囲を越えて分散する能力を有する可能性が示唆された.

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