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大学・研究所にある論文を検索できる 「Reliability of IDH1-R132H and ATRX and/or p53 immunohistochemistry for molecular subclassification of Grade 2/3 gliomas」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Reliability of IDH1-R132H and ATRX and/or p53 immunohistochemistry for molecular subclassification of Grade 2/3 gliomas

西川, 知秀 名古屋大学

2022.07.04

概要

【緒言】
WHO2016脳腫瘍病理分類とそれに続くcIMPACT-NOWによって、神経膠腫の分類方法は分子異常を重視するものへと変化しつつある。しかし日常診療では免疫染色を用いた一部の分子解析は行うことができるものの、詳細な分子解析を行うことは困難であることも多い。

神経膠腫の分子診断では、IDH変異、1番染色体短腕(1p)/19番染色体長腕(19q)共欠失、CDKN2A/Bホモ接合性欠失、EGFR増幅、TERTプロモーター変異といった分子異常を評価する事が必要となる。これらのなかで特に重要な異常はIDH変異と1p/19q共欠失である。神経膠腫の中でIDH変異があり1p/19q共欠失がない場合は星細胞腫、IDH変異があり1p/19q共欠失がある場合は乏突起膠腫に分類することができる。星細胞腫と乏突起膠腫は大きく性質が異なり、予後も大きく異なるため正確な診断が重要である。

IDH変異は免疫染色法で評価可能であるが、1p/19q共欠失は免疫染色法では評価困難である。ATRX遺伝子とTP53遺伝子は星細胞腫で高頻度にその変異を認めることが知られており、乏突起膠腫で認められる1p/19q共欠失と排他的である。ATRX遺伝子とTP53遺伝子の遺伝子変異はそれぞれのタンパク質発現に影響を及ぼすことも明らかになっていることから、免疫染色法によりATRXタンパク質とp53タンパク質の発現量を評価することで、1p/19q共欠失の有無を正確に予測できる可能性について検証することを目的とした。

【対象及び方法】
分子解析
2003年から2012年の間に当院で手術を行い、グレードⅡもしくはⅢの神経膠腫と診断された76症例を対象とした。手術時に採取された腫瘍検体は凍結保存の後、全エクソン解析を実施し、IDH1/2、ATRX、TP53遺伝子変異、TERTプロモーター変異、1p/19q共欠失、CDKN2A/Bホモ接合性欠失、EGFR増幅、7番染色体の増幅と10番染色体の欠失をそれぞれ評価した。これらの情報を基にWHO2016脳腫瘍病理分類に則って診断を行った。

組織学的評価及び免疫染色
各症例の腫瘍検体をホルマリン固定パラフィン包埋した後、4枚のスライドを作成した。1枚のスライドはヘマトキシリン&エオジン(H&E)染色を行い、残りの3枚は抗IDH1-R132H抗体(H09)、抗ATRX抗体(HPA001906)、抗p53抗体(DO-7)を用いて免疫染色を行った。H&E染色スライドのみを用いた組織学的診断と、これに免疫染色の結果を踏まえた総合的な診断を得た。

【結果】
組織学的診断
H&E染色のみを用いた組織学的診断を、WHO2016脳腫瘍病理分類に則った診断と比較したところ、多くの症例で診断は合致していたが、合致しない症例も一部みられた。組織学的には乏突起膠腫と診断されたにも関わらず分子解析では1p/19q共欠失を認めず星細胞腫と診断された症例(5例)や、逆に組織学的には星細胞腫と診断されたにも関わらずIDH変異と1p/19q共欠失を認め乏突起膠腫と診断された症例(2例)が存在した。

免疫染色
抗IDH1-R132H抗体(H09)免疫染色の感度と特異度はそれぞれ98.2%と84.2%であった。ATRX遺伝子変異については、その変異があればATRXタンパク質の発現が消失すると考えられており、抗ATRX抗体(HPA001906)免疫染色の感度と特異度はそれぞれ40.9%と98.1%であった。p53遺伝子変異については、その変異があればp53タンパク質の発現量が増加すると考えられており、抗p53抗体(DO-7)免疫染色の感度と特異度はそれぞれ78.6%と85.4%であった。

1p/19q共欠失の代替マーカーとしての有用性の評価
これらのATRX及びp53の免疫染色の結果を、1p/19q共欠失の有無と比較して検討したところ、その感度及び特異度はATRX免疫染色で100%と29.4%、p53免疫染色では90.5%と73.5%であった。これらを組み合わせ、「ATRX免疫染色陽性かつp53免疫染色陰性」であることが1p/19q共欠失の代替マーカーとして評価したところ、その感度と特異度は90.5%と76.5%まで向上した。

免疫染色を用いた代理的診断の流れと、その診断の精度をFig.1に示した。76例中37例が乏突起膠腫と診断されたが、実際にはこのうち3例は1p/19q共欠失を有しない星細胞腫であった。同様に、IDH変異型星細胞腫と診断された22例中6例、IDH野生型星細胞腫と診断された17例中6例で実際の診断と非合致する結果であった。

【考察】
WHO2016脳腫瘍病理分類から始まった分子異常を重視する神経膠腫分類によって、患者の予後や最適な治療を判断するためには分子異常を評価することが重要となっている。しかしながら実臨床において、全ての症例に対して分子異常の解析を行うことは困難である。今回の研究で、ATRX及びp53の免疫染色を用いて評価することで、高い確率で1p/19q共欠失を正確に予測できることを示した。遺伝子解析ではなく、代替法として免疫染色を用いて分子異常を評価することの有用性は、cIMPACT-NOW等でも述べられている。今回我々の結果は大多数の症例でその方針を支持する結果であった一方、一定数の症例では診断不一致があり、免疫染色を用いた代替診断が絶対的なものではないことも示唆している。病理診断と免疫染色による分子評価に矛盾が生じる場合には、慎重な検討が重要である。

【結語】
本研究によって、ATRXとp53の免疫染色を組み合わせて用いることで1p/19q共欠失の有無を正確に予測し得ることを示すことが出来た。神経膠腫の診断において分子解析を行う事のできる医療機関が限られている我が国の現状では、免疫染色を用いた代替法の意義は高いものである。その一方でその精度が必ずしも絶対的なものではなく、また今後のWHO2021脳腫瘍病理分類では分子診断が予後予測や治療選択に影響を及ぼす可能性が高いため、慎重な解釈の検討を要することも示す事ができた。

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