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大学・研究所にある論文を検索できる 「Theoretical study of core-electron spectroscopies for gas-phase molecules using Multiple-Scattering theory」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Theoretical study of core-electron spectroscopies for gas-phase molecules using Multiple-Scattering theory

太田 蕗子 富山大学

2021.03.23

概要

X 線を照射することにより孤⽴分⼦から放出される光電⼦とフラグメントイオンとを同時計測することによって得られる分⼦座標軸系光電⼦⾓度分布(Molecular- Frame Photoelectron Angular Distributions: MFPADs) には、光電⼦放出の瞬間の分⼦構造の情報が反映される。これまで放射光を⽤いて⾏われた MFPADs 測定では、定常状態の分⼦構造が反映されている。特に、X 線の偏光⽅向について平均したもの(偏光平均された分⼦座標系光 電⼦⾓度分布:Polarization-Averaged Molecular-Frame Angular Distributions : PA- MFPADs)は、分⼦構造抽出の強⼒な⼿法として期待されている。X 線⾃由電⼦レーザー(X-ray Free Electron Laser : XFELs)を⽤いた Pump-Probe測定が始まり、分⼦構造変化の⾼時間分解での追跡が実現されつつある。これらの実験の解析を精度よく⾏うために、詳細な理論研究が必要となってきている。

本研究では、多重散乱理論を⽤いた PA-MFPADs の記述と理論計算、その物理的解釈を⾏った。光電⼦が他の分⼦と区別できるとする⼀電⼦近似を適⽤し、光電⼦以外の電⼦と原⼦核が作るポテンシャル(分⼦ポテンシャル)によって光電⼦が散乱されるという描像を⽤いた。多重散乱理論では、実空間をいくつかの領域(散乱サイト)に分割し、各領域において波動関数を求める多中⼼展開を⾏う。実空間の分割に⽤いられる近似として、散乱サイトを球体とし、ポテンシャルを各散乱サイト中⼼で球平均する近似(マフィンティン近似) がある。この近似を⽤いると理論が単純化され、計算コストも⼩さくなるが、ポテンシャルの異⽅性に由来する散乱の情報は失われる。⼀⽅で、球近似せずにサイト内のポテンシャルをそのまま⽤いる⽅法を、フルポテンシャル法と呼ぶ。本研究の特⾊の⼀つは、PA-MFPADs 計算にフルポテンシャル多重散乱理論を⽤いた点である。これにより、精度の⾼い PA-MFPADs 計算を⾏い、マフィンティン近似が PA- MFPADs 計算結果に与える影響を明らかにした。もう⼀つの特徴は、⾃⼰無撞着 (Self- Consistent Field : SCF) に計算した分⼦ポテンシャルを⽤いて多重散乱計算を⾏った点である。分⼦ポテンシャルを求める最も簡単な⽅法のひとつは分⼦を構成する各原⼦について、⾃由原⼦のポテンシャルを求め重ね合わせる⽅法(non-SCF)であるが、この⽅法では、例えば共有結合の⽣成による電荷密度の増減は⼗分に考慮されない。本研究では、量⼦化学計算プログラム MOLCAS 8.2 を⽤いて分⼦軌道波動関数を SCF に計算し、波動関数から電荷密度を求め、電荷密度に対して Poisson ⽅程式を解くことで、共有結合の電荷分布を考慮した計算を⾏った。また、両者の⽐較により、分⼦ポテンシャルの計算⼿法による PA-MFPADs スペクトルへの影響を調べた。

本研究の⽬的は、⼆⾊ XFEL による測定対象として最も単純な分⼦の⼀つである CO 分⼦の PA-MFPADs スペクトルから、分⼦構造、すなわち C-O 結合距離 R を抽出する⼿法を⾒出すことである。Pump-XFEL によって C 1s 軌道が励起され、続いて起こる Auger 崩壊によって分⼦が⼆価のカチオンとなった後、Probe-XFEL によって O 1s 軌道が励起され⼆重項 1σ-1 5σ-2 状態になる場合について、分⼦ポテンシャルを SCF 計算し、フルポテンシャル多重散乱計算によって PA-MFPADs を得た。計算結果から、光電⼦の運動エネルギーが 100 eV と⾼い場合にもマフィンティン近似の影響が無視できないこと、PA-MFPADs の前⽅・後⽅散乱強度⽐が C-O 結合距離 R の関数として 2kR(k :光電⼦の波数)の周期で振動することを⽰し、この振動を解析することが結合距離 R の決定に有⽤であることを⽰した。また、光電⼦波の⼲渉によって現れる構造(Flower shape)にも分⼦構造の情報が反映されていることに着⽬し、Flower shapeと結合距離 R の⼀般的な関係式を、多重散乱理論に基づいて導出した。PA-MFPADs の Flower shape から、この関係式により結合距離 R を5%以下の誤差で抽出できることを⽰した。