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災害時におけるペットとの避難行動を規定する要因の検討

松本 千香 広島大学

2020.03.03

概要









災害時におけるペットとの避難行動を規定する要因の検討
(要約)

2020 年 3 月
広島大学大学院総合科学研究科
松本

千香

目次
第 1 章:問題の所在
1. 問題の背景 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
2. 東日本大震災後のペットの災害対策の現状・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2
3. 災害とペットに関する事例と先行研究・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3
3-1 海外における災害とペットに関する事例と先行研究・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3
3-2 国内における災害とペットに関する事例と先行研究・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5
4. 災害が飼い主とペットに及ぼす影響・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6
4-1 飼い主にとってのペットの存在意義とペットから受ける心理的影響・・・・・・・・・・・・6
4-2 災害がペットの心身に及ぼす影響・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7
5. ペットとの避難行動に対する課題・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8
6. 動物観とペット観・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9
6-1 動物観と先行研究・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10
7. 本研究の目的と構成・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11
8. 本研究で使用する変数・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12
第 2 章:災害発生時におけるペットとの同行避難及び避難所等での同居に関する態度(研究 1)
・・15
1. 方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・16
2. 結果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・18
3. 考察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・26
第 3 章:災害時におけるペット対策の規定因の検討-ペットとの心理的関係性の観点から-(研究 2)
・30
1. 方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・31
2. 結果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・33
3. 考察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・40
第 4 章:災害時におけるペットとの避難行動に対する飼い主・非飼い主の態度に関する研究(研究 3)
・44
1. 方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・46
2. 結果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・49
3. 考察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・67
第 5 章:総合考察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・72
1. 研究結果のまとめ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・72
2. 同行避難や避難行動への賛成度と受容度を高める要因・・・・・・・・・・・・・・・・・・75
3. 飼い主によるペット対策を促進する要因・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・76
4. 知識,感情,及びペット観の重要性・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・76
5. 学術的貢献・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・77
6. 実践的貢献・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・78
7. 課題と展望・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・79
引用文献・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・80
Appendix ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・86

学位論文の要約

東 日 本 大 震 災 で は ,ペ ッ ト と の 同 行 避 難 の 困 難 さ や( e.g., 平 野 井 ,2014; 河 又 ,2014),
避 難 所 で の ペ ッ ト の 取 扱 い に 苦 慮 す る 例 が 見 ら れ た 。 環 境 省 ( 2018) は , 災 害 時 に お
けるペットとの同行避難(災害発生時に飼い主が飼育しているペットを 同行し,指定
避難場所等まで安全に避難すること)を推奨し,災害時のペットの防災対策は飼い主
による自助が基本であると示しているが,同行避難の実施率やペットのための防災対
策 ( 以 下 ,ペ ッ ト 対 策 ) の 実 施 率 も 低 い の が 現 状 で あ る 。 本 論 文 で は ,(1)ペ ッ ト 飼 い
主・非飼い主双方についてペットとの避難行動に対する肯定的態度を促進・抑制する
要 因 ,及 び (2)飼 い 主 に よ る ペ ッ ト 対 策 を 促 進 ・ 抑 制 す る 要 因 を ,探 索 的 に 検 討 す る こ
とを目的とする。

第 1章

災害とペットを巡る現状と本研究の目的

本論文は 5 章から構成されている。第 1 章では,災害とペットを巡る現状の問題,
及 び 災 害 と ペ ッ ト に 関 す る 先 行 研 究 の 知 見 を 概 観 し た 上 で ,ペ ッ ト と の 避 難 行 動 に 関
する研究の不足を指摘し,本論文の視点を示した。
東 日 本 大 震 災 と そ れ に 伴 う 福 島 第 一 原 子 力 発 電 所 事 故 で は ,人 だ け で な く 多 く の 動
物 も 被 災 し た 。「 人 と ペ ッ ト の 災 害 対 策 ガ イ ド ラ イ ン 」( 環 境 省 , 2018) は , 災 害 時 の
ペット対策は飼い主による自助が基本であると示しているが,同行避難の実施率や
ペット対策の実施率は低いという現状から,飼い 主によるペット対策を促進・抑制す
る 要 因 を 明 ら か に す る こ と が 重 要 で あ る と 述 べ た 。続 い て ,災 害 と ペ ッ ト に 関 す る 事
例や先行研究のレビューを行った上で課題を整理し,ペットとの避難行動を促進・抑
制 す る 要 因 を 検 討 す る こ と の 必 要 性 を 示 し た 。先 行 研 究 で は ,飼 い 主 の み に 特 化 し た
研究が多く,ペットを飼っていない人(以下,非飼い主)との比較検討を行った研究
は 少 な い こ と か ら ,非 飼 い 主 に も 焦 点 を あ て た 検 討 が 必 要 で あ る こ と を 指 摘 し た 。加
え て ,人 が ペ ッ ト の こ と を ど の よ う に 考 え て い る か と い う ペ ッ ト 観 に 着 目 し ,動 物 観
研 究 を レ ビ ュ ー し た 。本 研 究 で は ,日 本 的 - 欧 米 的 動 物 観 の 観 点 か ら ペ ッ ト 観 を 予 測
し ,ペ ッ ト 観 が ペ ッ ト と の 避 難 行 動 や ペ ッ ト 対 策 に 及 ぼ す 影 響 に つ い て 検 討 す る こ と
の意義を述べた。

第 2章

災害発生時におけるペットとの同行避難及び避難所等での同居に関する態度

( 研 究 1)
第 2 章 ( 研 究 1) で は , ペ ッ ト 飼 い 主 ・ 非 飼 い 主 計 600 名 に ウ ェ ブ 調 査 を 行 い , 同
行避難への賛成度及び避難所等での他者のペットとの同居への受容度を促進・抑制す
る要因を検討した。結果,飼い主の場合,環境省による同行避難推奨 の知識があるほ
ど 賛成 度が 高い こと が示 され た 。また ,周囲 に迷 惑を かけ るこ とへ の懸念 は非 飼い 主
の 抑 制 要 因 と な っ て い た が ,飼 い 主 の 態 度 に は 影 響 し て い な か っ た 。さ ら に ,飼 い 主・
非飼い主に関わらず,常時と違う状況下でペットに不調が起きることを懸念し,同行
避難が効果的だとしていることが示された。飼い主・非飼い主とも,いずれの目的変
数 に 対 し て も ペ ッ ト に 対 す る 態 度 尺 度 の 下 位 因 子 で あ る「 対 等 な 存 在 」は 最 も 強 い 正
の効果をもっていた。つまり,ペットを「人間と対等な尊敬されるべき存在」とする
捉 え 方 が ,同 行 避 難 へ の 賛 成 度 や 避 難 所 等 で の 同 居 受 け 入 れ に 最 も 大 き く 影 響 す る こ
と が 示 さ れ た 。 た だ し ,「 対 等 な 存 在 」 の 測 定 項 目 数 は 十 分 で は な か っ た た め ,「 対 等
な存在」の概念の精緻化が課題として残された。

第 3章

災害時におけるペット対策の規定因の検討-ペットとの心理的関係性の観点

か ら - ( 研 究 2)
第 3 章( 研 究 2)で は ,ペ ッ ト 飼 い 主 300 名 に ウ ェ ブ 調 査 を 行 い ,飼 い 主 に よ る ペ ッ
ト対策を促進・抑制する要因を検討した。特に,飼い主やペットの属性の他に,ペッ
トとの離れがたさや飼い主の普段のペットの飼い方等が災害時のペット対策にどの
ように影響するかを検討した。結果,ペットの日常的対策及び災害対策には,ペット
仲間の多さがこれらを促進する要因であることが明らかになった。さらに,災害対策
に は ,何 か 困 っ た こ と が あ っ た と き 家 族 や 親 族 以 外 で 助 け て く れ る 人( ソ ー シ ャ ル サ
ポート源)の多さが促進要因であることがわかった。また,災害対策には,ペットと
の 離 れ が た さ が 大 き く 関 係 し て い た 。ペ ッ ト と の 離 れ が た さ を 強 く 感 じ る 飼 い 主 ほ ど ,
ペットと離れ離れになる可能性がある災害という非常事態に備えた対策をより万全
なものとしていると考えられる。

第 4章

災害時におけるペットとの避難行動に対する飼い主・非飼い主の態度に関す

る 研 究 ( 研 究 3)
第 4 章( 研 究 3)で は ,ペ ッ ト 飼 い 主・ 非 飼 い 主 計 500 名 に ウ ェ ブ 調 査 を 行 い , (1)
研 究 1 で 大 き な 影 響 力 を も っ た 「 対 等 な 存 在 」 の 概 念 を 明 確 に す る た め ,「 対 等 な 存
在 」と 他 の 様 々 な ペ ッ ト 観 及 び ペ ッ ト に 関 す る 知 識 と の 関 連 を 検 討 す る と 共 に ,(2)「 対
等 な 存 在 」を は じ め と す る ペ ッ ト 観 や ペ ッ ト に 関 す る 知 識 の う ち ,ペ ッ ト と の 避 難 行
動に対する賛成度・受容度並びにペット対策を促進・抑制する要因を探索的に検討し
た 。結 果 ,(1)に つ い て ,
「 対 等 な 存 在 」と は ,ペ ッ ト の こ と を 好 き で ,動 物 の 生 態 や 習
性 等 を よ く 知 っ て お り ,ペ ッ ト の 生 死 に つ い て は 人 間 が 管 理 す る べ き で は な い と す る
日本的ペット観,人間社会への適応を促すためには人間がペットを援助・管理するべ
き と す る 欧 米 的 ペ ッ ト 観 に よ っ て 構 成 さ れ る こ と が 明 ら か に な っ た 。(2)に つ い て ,飼
い主・非飼い主共に,賛成度においては,ペットを好きであり,環境省が同行避難を
推奨していることを知っており,ペットの生死については日本的ペット観を持ち,
ペットを「対等な存在」だと考えていることが影響していた。一方,受容度に対して
は,ペットを好きであり,ペットの生死については日本的ペット観を持ち,ペットを
「対等な存在」だと 考えていることが影響していた。特に,受容度に対するペットを
好きな程度の効果は非飼い主で強く,
「 対 等 な 存 在 」の 効 果 は 飼 い 主 で 強 か っ た 。さ ら
に,飼い主・非飼い主ともに,これらの説明変数と賛成度・受容度との関連を「対等
な 存 在 」が 媒 介 し て い た 。ペ ッ ト の 日 常 的 対 策( 基 本 /ハ イ レ ベ ル )に は ,ペ ッ ト 仲 間
の 多 さ が 促 進 要 因 で あ っ た 。知 識 で あ る 犬 猫 問 題 正 解 率 の 高 さ や ,
「 対 等 な 存 在 」の 概
念を持っていること,動物の福祉に則った飼育の実践度の高さは,災害対策に大きな
影響を及ぼした。

第 5章

総合考察

第 5 章では,第 2 章から第 4 章 までの研究結果を総括した。本研究の結果から,避
難 行 動 へ の 賛 成 度 と 受 容 度 を 高 め る 要 因 と し て ,飼 い 主 で は ,環 境 省 が 同 行 避 難 を 推
奨 し て い る こ と を 知 ら せ る こ と が 重 要 で あ る ほ か ,特 定 の ペ ッ ト 観 を も つ こ と の 重 要
性が示された。具体的には,ペットの命は人間と同等であり,人間がペットの生殺与
奪 権 を も つ べ き で は な い と す る 日 本 的 ペ ッ ト 観 を 持 つ こ と ,し か し ペ ッ ト が 人 間 社 会
に適応できるようしつけなどを行うのは人間の責任であるとする欧米的ペット観を

持 つ こ と ,そ し て 人 間 と ペ ッ ト は 対 等 な 存 在 で あ る と す る ペ ッ ト 観 を 持 つ こ と で あ る 。
非 飼 い 主 に つ い て は ,ペ ッ ト が 周 囲 に 迷 惑 を か け る の で は な い か と い う 懸 念 を 低 減 す
ることや,ペットを好きになることが重要であることが示唆された。飼い主による
ペ ッ ト 対 策 を 促 進 す る 要 因 と し て ,ペ ッ ト 仲 間 の 多 さ が 促 進 要 因 の 一 つ で あ っ た 。災
害 対 策 に は ,ソ ー シ ャ ル サ ポ ー ト 源 の 多 さ や ペ ッ ト と の 離 れ が た さ が 大 き く 関 係 し て
いた。また,ペットに対する知識量や,動物の福祉の実践度も大きな影響を及ぼして
いた。
本 研 究 か ら 得 ら れ た 知 見 に よ る 学 術 的 貢 献 は ,ま ず ,災 害 時 に お け る ペ ッ ト と の 避
難行動及びペット対策に対する肯定的態度を促進・抑制する心理的要 因の一端を明ら
か に し た こ と で あ る 。特 に ,飼 い 主・非 飼 い 主 に 共 通 の 重 要 な 要 因( 対 等 な 存 在 ,ペ ッ
ト 観 )を 明 ら か に し た こ と は ,実 際 の 啓 発 活 動 を 考 え る 上 で も 意 義 が 大 き い と 考 え る 。
次に,
「 ペ ッ ト 観 」と い う 漠 然 と し た 要 因 の 効 果 を 明 ら か に し た こ と で あ る 。具 体 的 に
は ,日 本 的 - 欧 米 的 動 物 観 の 観 点 か ら ペ ッ ト 観 の 概 念 を 明 ら か に し ,避 難 行 動 に 対 す
る肯定的態度やペット対策の実行度に及ぼす影響を示した。本研究の実践的貢献は,
同 行 避 難 推 奨 の 周 知 や 啓 発 を 図 る 上 で ,ペ ッ ト 観 が 賛 成 度 や 受 容 度 を 高 め る こ と に 有
用だと考えられる点である。このことは,ペット管理や災害時の避難行動において,
元来備わっている日本的で情緒的な感覚を活かす方法を考える一助となり得るだろ
う 。課 題 と し て ,ペ ッ ト 対 策 に 対 す る 著 し い 抑 制 要 因 は 見 つ か ら な か っ た こ と で あ る 。
今後は,これらの課題を踏まえ,大規模災害でペットと同行避難した人や避難所等で
ペ ッ ト と の 同 居 を 体 験 し た 人 ,行 政 や 地 方 自 治 体 の 動 物 救 護 担 当 や 災 害 担 当 等 に 調 査
を行うことで,より詳しく検討することが期待される。

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