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書き出し

ホップ由来苦味成分の認知機能改善効果に関する研究

綾部, 達宏 東京大学 DOI:10.15083/0002006117

2023.03.20

概要

















申請者氏名

綾部 達宏

本論文は、ビールに含まれるホップ由来苦味成分の機能性に着目し、肥満に伴う認知
機能低下に対する予防効果、および認知機能改善効果を動物試験により詳細に検討した
結果をまとめたものである。
高齢化の進行に伴い認知症患者数が急増しており、さまざまな社会課題を引き起こし
ている。また、近年生活習慣病や肥満などが認知症のリスクを高めることが明らかにな
ってきている。認知症は発症後の治療の難しさから、食品による介入など日常的に実施
可能な予防方法の確立が期待されている。日常的な適量のアルコール飲料摂取は認知症
リスクを低減することが報告されているが、この効果へのビール中の成分の寄与につい
ては不明であった。本論文ではビールに含まれるホップ由来苦味成分であるイソ α 酸お
よび熟成ホップ苦味酸に着目し、肥満に伴う認知機能低下の抑制効果や認知機能改善効
果を見出し、その活用と今後の展望を述べている。
序論では、認知症に関する基礎的な知見と期待される予防戦略について紹介している。
また、イソ α 酸と熟成ホップ苦味酸の特徴と生理機能について先行研究を中心に紹介し
ている。これらの知見を踏まえたホップ由来苦味成分による認知症予防の可能性を示し、
次章以降の導入の役割を果たしている。
第 1 章第 1 節では肥満に伴う認知機能低下に及ぼすイソ α 酸の影響を動物試験で評価
している。その結果、イソ α 酸は高脂肪食摂取に伴う体重、内臓脂肪重量、血中トリグ
リセリド量の増加を有意に抑制した。また、高脂肪食摂取は脳内炎症を惹起し、それに
伴う脂質酸化、神経活動の低下を引き起こしたが、イソ α 酸の摂取によりこれらの反応
が抑制されることを見出している。記憶機能を評価したところ、高脂肪食摂取に伴い記
憶機能が低下し、イソ α 酸の摂取により記憶機能が改善することを明らかにしている。
また、イソ α 酸は肥満抑制効果と抗炎症効果を併せ持つことにより強い認知機能改善効
果を示したと考察している。これらの結果から、イソ α 酸が肥満に伴う認知機能低下を
抑制することを示唆している。
第 1 章第 2 節ではイソ α 酸が高次認知機能に及ぼす影響をマウスにおけるタッチパネ
ルオペラント試験系を用いて評価した。その結果、視覚弁別課題においてイソ α 酸の経
口投与により、スコポラミン投与に伴う正答率低下、反応時間増加が改善することを明
らかにしている。続いて逆転弁別課題を実施し、イソ α 酸の経口投与により正答率が改

善することを見出している。これらの結果から、イソ α 酸は学習機能、注意、実行機能、
記憶の柔軟性などの前頭皮質に関連した高次認知機能を改善することを示唆している。
第 2 章第 1 節では、肥満に伴う認知機能低下に及ぼす熟成ホップ苦味酸の影響を動物
試験で評価している。その結果、熟成ホップ苦味酸は高脂肪食摂取に伴う体重、内臓脂
肪重量の増加を有意に抑制し、血中グルコース、インスリン濃度を低下させた。記憶機
能を評価したところ、高脂肪食摂取に伴い記憶機能が低下し、熟成ホップ苦味酸の摂取
により記憶機能が改善することを明らかにしている。これらの結果から、熟成ホップ苦
味酸が肥満抑制効果を介して認知機能低下を改善することを示唆した。
第 2 章第 2 節では、熟成ホップ苦味酸の認知機能改善効果およびその作用機序を動物
試験で評価している。スコポラミン誘導性健忘症モデルマウスにおいて、熟成ホップ苦
味酸およびそこに含まれる代表的な化合物の投与により空間作業記憶が有意に改善し
た。また、通常マウスにおいて熟成ホップ苦味酸の投与によりエピソード記憶が有意に
改善した。続いて迷走神経及びノルエピネフリン神経系に着目して作用機序を評価し、
熟成ホップ苦味酸が海馬のノルエピネフリン含有量および分泌量を有意に増加させる
こと、ノルエピネフリン受容体阻害剤の投与により認知機能改善効果が消失することを
見出している。さらに、迷走神経切除マウスにおける空間作業記憶およびエピソード記
憶では、熟成ホップ苦味酸の効果が減弱することを明らかにしている。これらの結果か
ら、熟成ホップ苦味酸が迷走神経および海馬ノルエピネフリン神経系を活性化すること
で認知機能を改善することを示唆している。
総括では、各章の結果をまとめるとともに、想定される作用機序やヒトにおける有効
性等に触れ、本研究成果の社会実装に向けた今後の展望を述べている。
以上、本研究はホップ由来苦味成分の認知機能改善効果を動物試験で明らかにしたも
のである。さらに、本知見に基づくヒト試験が実施され有効性が確認されており、これ
ら知見を活用した食品の社会実装が進行中である。これらの内容は食品の健康機能性に
関する基礎研究結果を製品開発などの社会実装につなげる事を目指す上で、当該分野の
研究者にとって学術上、産業上の観点で参考になる点が少なくない。よって、審査委員
一同は、本論文が博士(農学)の学位論文として価値あるものと認めた。

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