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大学・研究所にある論文を検索できる 「ホップ由来苦味成分と乳酸菌の新規機能性に関する作用機序の検討および健常人を対象とした有効性の検証」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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ホップ由来苦味成分と乳酸菌の新規機能性に関する作用機序の検討および健常人を対象とした有効性の検証

山崎, 雄大 東京大学 DOI:10.15083/0002008283

2023.12.27

概要



査 の 結 果 の 要






山崎 雄大

本論文は、ホップ由来苦味成分の脂肪減少効果、および乳酸菌の日常的な目の疲労感
軽減効果について、細胞・動物試験による作用機序の検討、およびヒト介入試験による
有効性検討の結果をまとめたものである。機能性食品に対する科学的関心が高まる中、
機能性成分の作用機序を明らかにするとともに、ヒトでの有効性をも検証する一貫した
基礎研究が、産業利用の観点から重要になってきている。本論文では、ビール原料であ
り様々な機能性が知られるホップ由来苦味成分 MHBA(matured hop bitter acids)、お
よびプロバイオティクスの観点等で注目される KW3110 乳酸菌に着目し、それぞれに
脂肪減少効果および日常的な目の疲労感軽減効果を見出し、その活用と今後の展望を述
べている。
序論では、機能性食品に関する制度および機能性成分に関する基礎研究の産業利用へ
の重要性について紹介するとともに、MHBA および KW3110 乳酸菌の特徴と生理機能
に関するこれまでの知見をまとめている。
第 1 章第 1 節では、MHBA が交感神経を介して褐色脂肪組織の熱産生を誘導する分
子機序について検討している。その結果、MHBA は消化管細胞における Ca2+濃度上昇
およびコレシストキニン産生を誘導した。またラットへの MHBA 投与による褐色脂肪
組織の温度上昇作用は、コレシストキニン 1 受容体阻害剤の投与により阻害された。こ
れらの結果から、MHBA は消化管でのコレシストキニン産生誘導を介して褐色脂肪組
織の熱産生を上昇させていると考察している。
第 1 章第 2 節では、MHBA が消化管細胞に認識される分子機序について苦味受容体
に着目して検討している。苦味受容体を強制発現した培養細胞への MHBA 投与実験に
より、MHBA が複数のヒト・マウス苦味受容体を活性化することを見出した。また消化
管細胞においてこれらの苦味受容体遺伝子発現を抑制すると、
MHBA による細胞内 Ca2+
濃度上昇およびコレシストキニン産生誘導が抑制された。これらの結果から、MHBA は
消化管細胞の特定の苦味受容体によって認識され、細胞内 Ca2+応答およびコレシストキ
ニン産生を誘導したと考察している。
第 1 章第 3 節では、MHBA 含有飲料のヒトに対する脂肪減少効果を検証する臨床試
験を実施している。その結果、腹部内臓脂肪面積について、35 mg MHBA 含有飲料摂取
群においてプラセボ群と比較して有意な低値が認められた。前節までの作用機序の結果
と合わせ、MHBA は自律神経系を介した脂肪消費促進によって、内臓脂肪減少効果を
発揮する可能性があると考察している。

第 2 章第 1 節では、KW3110 乳酸菌が炎症を抑制する詳細な分子機序を検討してい
る。マウス由来マクロファージへの KW3110 乳酸菌添加は IL-10 産生を増加し、炎症刺
激による caspase-1 活性化および IL-1β 産生を抑制した。一方、これらの作用は貪食阻
害剤または IL-10 シグナル因子の遺伝子発現抑制により阻害された。また、ヒト由来単
球細胞への KW3110 乳酸菌添加も同様の作用機序を有することを示している。これら
の結果から、KW3110 乳酸菌はマウスおよびヒト免疫細胞において、IL-10 産生誘導を
介して caspase-1 活性化および IL-1β 産生を抑制したと考察している。
第 2 章第 2 節では、KW3110 乳酸菌が慢性炎症刺激で網膜色素上皮細胞が受けるスト
レスを抑制する可能性について検証している。炎症刺激マクロファージ上清を網膜色素
上皮細胞へ長期暴露した結果、細胞増殖抑制や肥大扁平化、細胞周期停止、およびサイ
トカイン発現上昇といった細胞老化に関連する表現型や、タイトジャンクション因子
claudin-1 の発現上昇が認められた。これらの表現型は、マクロファージへの KW3110 乳
酸菌添加によりいずれも改善された。これらの結果から、KW3110 乳酸菌は慢性炎症刺
激による網膜色素上皮細胞の細胞老化やタイトジャンクション因子の発現変動を抑制
したと考察している。
第 2 章第 3 節では、KW3110 乳酸菌のヒトに対する日常的な目の疲労感軽減効果を検
証する臨床試験を実施している。前節までの作用機序の結果と合わせ、KW3110 乳酸菌
は慢性炎症刺激による網膜ストレスを抑制することにより、日常的な目の疲労感軽減効
果を発揮する可能性があると考察している。
総括では各章の結果をまとめ、想定される作用機序の詳細やヒトでの有効性等を考察
するとともに、本成果のさらなる社会実装に向けた今後の展望を述べている。
以上、本研究は MHBA の脂肪減少効果および KW3110 乳酸菌の日常的な目の疲労感
軽減効果を細胞・動物試験、およびヒト介入試験で明らかにしたものである。さらに本
知見を活用して、機能性表示食品の上市を含めたさらなる社会実装が進行中という状況
である。これらの研究成果は、学術上応用上寄与するところが少なくない。よって、本
論文は博士(農学)の学位請求論文として合格と認められる。

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