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大学・研究所にある論文を検索できる 「Reassessment of the phylogenetic position of the spiny-scale pricklefish Hispidoberyx ambagiosus (Beryciformes: Hispidoberycidae) [an abstract of entire text]」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Reassessment of the phylogenetic position of the spiny-scale pricklefish Hispidoberyx ambagiosus (Beryciformes: Hispidoberycidae) [an abstract of entire text]

木村, 克也 北海道大学

2020.03.25

概要

Hispidoberyx ambagiosus Kotlyar, 1981 はキンメダイ目 Beryciformes のHispidoberycidae に含まれる唯一種であり,これまでにインド-西太平洋の熱帯域の水深 560–1360 m から少数の標本のみが知られていた.Kotlyar(1981)は本種のみを含む Hispidoberycidae を設立し,本科を暫定的にキンメダイ亜目 Berycoidei に含めたが,後に Kotlyar(1991)は本種の骨格系の観察に基づき,本科をカンムリキンメダイ亜目 Stephanoberycoidei に含める見解を示した.また,Moore(1993)は初めて本種を含む系統解析を行い,Hispidoberycidae とカンムリキンメダイ科 Stephanoberycidae の姉妹関係を提示した.しかし,両科を含むクレードの単系統性を支持する共有派生形質は尾鰭両葉の前起棘数が 9–11 であるという 1 個のみであり,この仮説は頑健なものではない.その後,2004–2005 年にスマトラ島とジャワ島沖のインド洋で本種の新たな標本が多数採集された.しかし,Moore(1993)の研究以降,本種に関する形態学的研究はなく,また本種を扱った分子系統学的研究も行われていないため,本種の系統的位置は未だ十分に解明されていないのが現状である.そこで本研究は,(1)Hispidoberyx ambagiosus の骨格系,筋肉系およびその他の形態を詳細に記載すること,(2)本種と近縁群の系統類縁関係を再構築すること,および(3)得られた系統類縁関係に基づき本種の系統的位置を再検証することを目的とした.

【材料と方法】
Hispidoberyx ambagiosus は Nelson et al.(2016)が定義するキンメダイ系 Berycida に含まれる可能性が極めて高いが,キンメダイ系は多くの形態および分子学的研究で非単系統性が示唆されている.従って本研究ではキンメダイ系に含まれる 14 科 22 属 22種に加え,キンメダイ系の近縁群であるスズキ系,アカマンボウ目およびギンメダイ目に含まれる 6 種も系統解析の内群に含めた.外群には,すべての内群が含まれる有棘類の姉妹群とされるハダカイワシ目から 1 種,および有棘類とハダカイワシ目が含まれる櫛鱗類の姉妹群とされるヒメ目から 2 種を用いた.

【形態の記載】
Hispidoberyx ambagiosus と近縁群の比較解剖を行い,本種の骨格系の 10 部位,筋肉系の 9 部位,および特殊な腺状器官や側線系等のその他の内部形態と外部形態を詳細に記載した.

【Hispidoberyx ambagiosus と近縁群の系統類縁関係】
80 個の形質変換系列に含まれる形質を用いて系統解析を行った結果,3 本の最節約樹が得られ, これらをもとに厳密合意樹を作成した.
本種はカンムリキンメダイ科,フシギウオ科,アンコウイワシ科,アカクジラウオダマシ科およびクジラウオ科とともに,3 個の固有派生形質を含む 5 個の共有派生形質によって強く支持されるクレードに含まれた.さらにこの中で本種は前者 3 科とともに,3 個の固有派生形質を含む 4 個の共有派生形質で強く支持されるクレードに含まれることが推定された.
キンメダイ系は非単系統群と推定され,さらに Nelson et al.(2016)の分類体系で本種が含まれていたキンメダイ目 Beryciformes も非単系統群と推定された.

【分類体系】
得られた系統類縁関係に基づいて,Hispidoberyx ambagiosus と近縁群の科から目レベルの新分類体系を提唱した.Nelson et al.(2016)が定義するキンメダイ系にカンムリキンメダイ目 Stephanoberyciformes,カブトウオ目 Melamphaiformes,ヒウチダイ目Trachichthyiformes,キンメダイ目 Beryciformes およびイットウダイ目 Holocentriformesの 5 目を認めた.これらの目のそれぞれの単系統性は過去の形態および分子学的研究でもよく支持される.本種のみを含む Hispidoberycidae を新たに定義されたカンムリキンメダイ目に含めた.さらに本目にはカンムリキンメダイ亜目 Stephanoberycoidei とクジラウオ亜目 Cetomimoidei の 2 亜目を認め,本科を前者に含めた.

【総合考察】
1)Hispidoberyx ambagiosus の形態的特異性
本種が有する,Tominaga’s organ がある,体側に乳頭状突起からなる側線系があるなどの多くの特異的な派生形質は,カンムリキンメダイ目またはカンムリキンメダイ亜目の共有派生形質であることが推定され,本研究で発見された本種の固有派生形質は 1 個のみであった.一方,本種の標徴とされている鋤骨歯がある,口蓋骨歯がある,背鰭と臀鰭に棘条がある,鱗で支持される側線系があるという形質はいずれも本亜目内では原始的な特徴であることが推定された.さらに,系統解析には用いなかった,生鮮時の体色が鮮やかな赤色である,および背鰭が比較的前方に位置するという本種の特徴についても,本目における原始的状態を保持していると推定された.

2)カンムリキンメダイ目魚類の生息水深
本種を含むカンムリキンメダイ目魚類はいずれも深海性魚類であるが,その採集記録はアカチョッキクジラウオなどの約 100 m から Acanthochaenus luetkenii の 5400 mと幅広い.本目魚類の生息水深について,本研究で得られた分岐図を用いて本目魚類の共通祖先の生息水深の復元を行った結果,水深 1000–1499 m に生息していたと推定された.その結果,水深 560–1360 m からの採集記録がある Hispidoberyx ambagiosusは,本目魚類の共通祖先の生息水深を保持しつつ,やや浅い水深にも進出していることが推定された.従って本種は生態学的にも本目内の原始的状態を保持していることが示唆された.

3)カンムリキンメダイ亜目における Tominaga’s organ の進化
本種を含むカンムリキンメダイ亜目魚類は嗅房の付近に Tominaga’s organ と呼ばれる機能不明の腺状器官をもつことが確認されたが,本器官は分類群ごとに異なる形態を有している.得られた分岐図上で本器官に関する 3 形質(葉の数,体外への開口,器官の大きさ)について祖先形質の復元を行った結果,本種の Tominaga's organ における 1 葉形,体外への開口がある,およびよく発達するという特徴はいずれも本亜目の共通祖先の状態を保持していると推定された.

4)結論
Hispidoberyx ambagiosus は多くの特異的な派生形質を他のカンムリキンメダイ目およびカンムリキンメダイ亜目魚類と共有する一方,本亜目内では多くの原始的特徴を保持し,独自の派生形質は少ない種であると考えられる.従って,カンムリキンメダイ亜目内では最も早期に他の本亜目魚類から分岐したことも考え合わせて,本種は形態的に本亜目の共通祖先からの進化の程度が小さい種であると結論づけた.

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