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大学・研究所にある論文を検索できる 「The microbiome can predict mucosal healing in small intestine in patients with Crohn's disease」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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The microbiome can predict mucosal healing in small intestine in patients with Crohn's disease

服部, 峻 名古屋大学

2022.05.25

概要

【緒言】
クローン病は再燃と寛解を繰り返す炎症性腸疾患であり、全消化管に炎症を起こしうる。治療目標として内視鏡により消化管の粘膜治癒を確認することが重要とされている。しかし内視鏡所見と臨床症状は必ずしも相関せず、クローン病患者ではしばしば狭窄や瘻孔を認めることから、内視鏡による炎症の評価は、特に小腸において必ずしも容易ではない。そのため小腸の粘膜治癒を評価する、より非侵襲的な方法が必要である。また以前からクローン病と腸内細菌叢の関与についての報告は多いが、現在までに小腸の内視鏡所見と腸内細菌叢の関連を明らかにした報告はない。そこで本研究では小腸の内視鏡的疾患活動性の有無による腸内細菌叢の違いを明らかにし、腸内細菌叢が小腸の粘膜治癒を予測することができるかを検討することを目的とした

【対象及び方法】
2016 年 5 月から名古屋大学医学部附属病院で小腸の活動性を評価するためにカプセル内視鏡またはバルーン内視鏡が予定されたクローン病患者を対象に単施設の前向き観察研究を行った(UMIN000020269)。2018 年 12 月までに内視鏡を行った患者の中で、腸内細菌に影響を与えるとされる抗生剤の使用と大腸に炎症を伴う患者を除外し、内視鏡で全小腸を評価しえたクローン病患者の糞便の腸内細菌叢を解析した。小腸全体が評価された患者は、内視鏡所見に基づいて UL 群(潰瘍あり)と MH 群(潰瘍なし)に分類した。細菌叢の解析は、糞便から DNA を抽出後 16SrRNA 遺伝子の V3-4 領域を増幅して Miseq で測定し、2 群間での細菌叢の比較を行った。特徴的な細菌叢から小腸の粘膜治癒の予測スコアを作成し、粘膜治癒予測の感度、特異度、陽性適中率、陰性適中率を計算した

【結果】
観察期間内にカプセル内視鏡またはバルーン内視鏡を施行したクローン病患者は65 名で、そのうち 38 名における糞便の腸内細菌叢が解析された。UL 群は 24 例、MH群は 14 例であり、病型や罹病期間、腸内細菌叢に影響を与える可能性がある喫煙歴やBody mass index、プロトンポンプ阻害薬の使用などを含めて、それぞれの患者背景に有意差は認めなった。腸内細菌叢の解析では MH 群は UL 群と比較して高い α 多様性を示したが(Observed species; P=0.006, Chao-1 index; P=0.004)、β 多様性では有意差は認めなかった(Fig.1)。属レベルでの比較では、Faecalibacterium(P=0.008)、Lachnospira(P=0.009)、Paraprevotella(P=0.01)、Dialister(P=0.012)、Streptococcus(P=0.025)、Clostridium(P=0.028)が MH 群で有意に豊富であった(Linear discriminant analysis Effect Size: LEfSe,Fig.2)。これらの 6 属の菌種を用いて小腸の粘膜治癒の予測スコアを定義し、6 属の中で存在する種類数を点数と設定すると、AUC は 0.795(P=0.003)で、5 点をカットオフとすると感度 0.643、特異度 0.917、陽性適中率 0.818、陰性適中率 0.815 であった(Fig.3)
また今回作成した予測スコアが長期予後を反映するかどうかを検討するために、予測スコア 5 点以上(n=11)と 5 点未満(n=27)の 2 群に分けて累積再燃率を比較したとこ ろ、5 点以上の群で有意に累積再燃率が低い結果であった(P=0.034)。さらに、5 点以上の群は全例で観察期間内に再燃は認めなかった(Fig.4)

【考察】
クローン病と腸内細菌叢の関与については以前から報告も多いが、疾患活動性に応じて細菌叢が異なるかどうかの報告は少なく、特に小腸の内視鏡所見と腸内細菌叢の関連については明らかではない。内視鏡で全小腸粘膜を評価したクローン病の細菌叢を検討した報告はこれまでなく、本研究において小腸の潰瘍の有無で腸内細菌叢が異なることが初めて明らかとなった。潰瘍を認めない症例で有意に存在が多かった 6 属のうち、Faecalibacterium 属は以前からクローン病において減少する菌として報告が多い菌である。また Clostridium 属の一部の菌は制御性 T 細胞を誘導するとの報告があり、抗炎症作用をもつ菌として注目されている。これらは代表的な酪酸産生菌であり、クローン病における炎症にこれらの菌種が関与している可能性がある。Lachnospira属、Paraprevotella 属は腸管内自生菌であり、その存在は正常の腸管の状態を反映している可能性がある。Dialister 属と Streptococcus 属は口腔内に存在する菌でありクローン病の細菌叢で変化するという既報もあるが、確定的な見解は得られていない
クローン病患者は再燃と寛解を繰り返すことから定期的な疾患活動性の評価をすることが重要である。さらに内視鏡的粘膜治癒は長期予後に関連する重要な所見であるが、それにもかかわらず特に小腸全体を内視鏡により評価することは困難な場合も多い。そのため小腸の評価にはより非侵襲的なバイオマーカーが必要であり、本研究では腸内細菌叢に着目することとした。本研究で初めて明らかになった小腸の潰瘍の有無における腸内細菌叢の違いから予測スコアを作成したところ、小腸の粘膜治癒を高い特異度で予測することが可能であった。これは侵襲の大きい小腸内視鏡を補完する有用なバイオマーカーとなる可能性があると考えられた。また今回の予測スコアは長期予後も反映する可能性が示唆された。今後さらなるデータセットで評価が必要であり、また経時的な腸内細菌叢の変化についても今後の検討課題と考える

【結語】
クローン病患者において小腸の潰瘍の有無で腸内細菌叢が異なることが明らかとなり、今回明らかとなった一部の菌種を用いた予測スコアは小腸の粘膜治癒の診断マーカーとして有用である可能性がある。

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