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大学・研究所にある論文を検索できる 「Nutrient absorption in the developing embryo of oviparous cloudy catshark, Scyliorhinus torazame」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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書き出し

Nutrient absorption in the developing embryo of oviparous cloudy catshark, Scyliorhinus torazame

本田, 祐基 東京大学 DOI:10.15083/0002006724

2023.03.24

概要

論文審査の結果の要旨
氏名

本田

祐基

本論文のジェネラルイントロダクションでは、軟骨魚類の特徴的な消化管と繁殖戦略、
さらにはそれぞれの繁殖戦略における消化吸収機構について、本研究の背景、目的と必要
性、具体的な研究内容が記述されている。軟骨魚類は体内受精を行う動物群で、発生期間
は長く、少ない数の成長した仔を産む。しかし、この長期間の胚発生期における成長を支
える栄養吸収機構はほとんどわかっていない。軟骨魚類の腸は、内部にらせん状の腸壁が
発達することで表面積を増やし、効率的な消化吸収を実現している。論文提出者は、卵生
のトラザメの胚発生過程を研究し、軟骨魚類の栄養吸収と成長のメカニズムを明らかに
することを目的として、分子生物学から形態学、生理学までの包括的な研究を進めた。そ
の結果は2章からなる本文にまとめられている。
第1章では、まず詳細な形態学的研究により、らせん腸の形成過程が明らかにされた。
トラザメの胚発生では、およそ2ヶ月が経過したところで卵殻の一部が開き、卵殻内に海
水が流入するようになる「プレハッチ」という現象が起こる。腸管の三次元立体構築によ
り、プレハッチ前に親魚と同じ巻き数になり、プレハッチ直後には卵黄柄内の膜状構造が
崩壊して卵黄が腸管内に流入すること、細胞表面の微絨毛ならびに絨毛ヒダもプレハッ
チ後に発達して表面積を増大させることがわかった。一方で、食道や直腸は、胚が卵殻か
ら出て餌を食べ始めるまで開口せず、口から総排泄腔までの消化管の中で、プレハッチ後
には腸のみが機能することも明らかになった。さらに、栄養吸収機能の指標としてペプチ
ド輸送体 PepT1 と中性アミノ酸輸送体 Slc6a19 の発現が調べられた。プレハッチ後には
PepT1 の発現が上昇し、特に発生後期のステージ 34 ならびに稚魚期には腸の前方に偏っ
た発現を示した。一方 Slc6a19 は腸全体で発現したが、ステージ 34 ではらせん腸の最後
部できわめて強い発現を示した。これらの結果は、腸の前方でペプチドを吸収し、より消
化の進んだアミノ酸を腸の後方で吸収すること、ステージ 34 での Slc6a19 の発現は限ら
れた栄養を最大限に吸収するためのしくみであることが示唆された。
第2章では、胚発生過程全体を通しての栄養吸収を理解するため、卵黄を包む上皮
(YSM)と腸で RNA-seq を行い、卵黄の主成分であるタンパク質と脂質の消化吸収に関
わる遺伝子の網羅的探索が進められた。その結果、多数のアミノ酸輸送体、脂質吸収に関
わる遺伝子、リソソーム消化酵素が同定された。腸での消化吸収遺伝子の発現はプレハッ
チ以降に上昇し、吸収機能が備わっていく様子が見られた。一方、予想に反して、多くの
消化吸収遺伝子が YSM でもプレハッチ後に発現を上昇させた。胚体重量がプレハッチ後
に有意に増加したことから、プレハッチまでは器官形成は行われるものの成長量は少な
く、プレハッチを境に腸と YSM を併用して栄養吸収を活発にし、成長が促進されること
が見出された。また、腸と YSM に発現するアミノ酸輸送体の種類からは、トラザメ胚の
腸では頂端膜タイプと側基底膜タイプの両方の輸送体が発現して上皮細胞から毛細血管
へとアミノ酸を運ぶことが示された。一方 YSM においては頂端膜タイプの輸送体が少な
く、エンドサイトーシスにより卵黄顆粒が内胚葉細胞に取り込まれ、細胞内で消化されて
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生じたアミノ酸が側基底膜タイプのアミノ酸輸送体を介して血中に放出されることが示
唆された。
以上の結果から、トラザメ胚では、プレハッチまでにらせん腸が形成され、プレハッチ
を境にして卵黄が流入して腸が機能的になること、YSM での消化吸収機能も発生後期に
活発となり、腸と YSM を併用して栄養吸収を行うようになるなど、卵生軟骨魚類の胚発
生期をとおした消化吸収機構が明らかとなった。ジェネラルディスカッションでは、これ
らの結果を進化発生学的観点から考察し、新たな考えを提唱している。すなわち、プレハ
ッチとは胚の消化吸収機能にとって大きな転換点であり、呼吸や尿素合成に関する先行
研究とあわせて考えると、胚体が生理学的に機能し始める発生イベントであると提唱し
た。プレハッチとは生理学的には真骨魚における孵化に相当し、少産少死の戦略をとる軟
骨魚類が、孵化後の仔魚を無事に大きく成長させるための適応戦略であることが示唆さ
れた。
本論文は、軟骨魚類胚の消化吸収機構を初めて明らかにし、生活史の適応戦略に対して
新たな説を提唱した重要な成果であり、学術上寄与するところが大きい。本論文は共同研
究者の協力を得た結果を含むが、すべての研究において論文提出者が主体となって実験
と解析を行ったものであり、論文提出者の寄与が十分であると判断する。
したがって、博士(理学)の学位が授与できると認める。

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この論文で使われている画像

参考文献

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Yamamura, J. I., Adachi, T., Aoki, N., Nakajima, H., Nakamura, R., and Matsuda,

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Yano, K. (1992). Comments on the reproductive mode of the false cat shark Pseudotriakis

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