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書き出し

Studies on the kidney function in environmental adaptation of euryhaline bull shark, Carcharhinus leucas

今関, 到 東京大学 DOI:10.15083/0002006489

2023.03.24

概要

審 査 の 結 果 の 要 旨

氏 名 今関 到

本論文のジェネラルイントロダクションでは、軟骨魚類の体液調節の仕組みと海洋環境
への適応について、本研究の背景、目的と必要性、具体的な研究内容が記述されている。
軟骨魚類は体内に高濃度の尿素を蓄積し、体液浸透圧を環境の海水よりも高く維持するこ
とで、海洋という環境に適応する仕組みを獲得した。そのため淡水環境に進入できる軟骨
魚は少ない。オオメジロザメ(Carcharhinus leucas)はサメ類でほぼ唯一の広塩性魚である
が、広塩性の仕組みや河川に進入する理由や実態など、未だ不明な点が多い。論文提出者
は、広塩性オオメジロザメの研究をとおして軟骨魚類の環境適応を明らかにすることを目
的として、実験生理学とフィールド生理生態学の両面から研究を進めた。その結果は2章
からなる本文にまとめられている。
第1章では、飼育実験による淡水移行個体の腎臓を用い、オオメジロザメの広塩性に関
わるネフロン分節と輸送分子群が明らかにされた。第1章は3つの節からなり、第1節で
は、淡水移行させたオオメジロザメの腎臓では NaCl の再吸収量が増加し、発現が増加した
遺伝子が RNA シーケンシングにより 138 種類見出された。なかでも溶質輸送体ファミリー
に属する Na+-Cl- 共輸送体(NCC)の発現が淡水個体の腎臓で大きく上昇した。NCC は、
淡水個体の遠位尿細管後部(LDT)に、NaCl 輸送の駆動力を生み出す Na+/K+-ATPase(NKA)
と共発現し、NKA の発現も淡水移行により上昇したことから、LDT において NCC を介し
た NaCl の再吸収が亢進したと考えられた。NCC と NKA の発現上昇は集合細管(CT)でも
観察され、NaCl の再吸収とともに尿素の再吸収も亢進したことが示唆された。このような
変化は狭塩性種のドチザメ(Triakis scyllium)ではみられず、LDT と CT がオオメジロザメ
の広塩性を可能にする重要なネフロン分節であることが示された。
第2節では上皮性 Na+チャネル(ENaC)に注目して研究が進められた。a, b, gという 3 つ
のサブユニットが淡水移行個体の LDT に強く発現し、なかでも Na+ 輸送活性を有する
ENaCaが淡水移行により発現が大きく上昇した。LDT に加え、淡水移行により ENaCaは
CT 全体に、輸送活性の調節に関わる ENaCbと ENaCgも CT の前半に発現し、ENaC もオオ
メジロザメの淡水適応に重要な分子であることが示唆された。
第3節では逆に、淡水移行により発現が低下する遺伝子に注目して研究が進められ、75
種類の遺伝子が見出された。このうち Slc4a11 が海水個体の LDT に強く発現し、淡水個体
では NCC と入れ替わるように発現が消失した。Slc4a11 がホウ酸輸送活性を持つことも示さ

れた。LDT は海水中ではホウ酸などの不要物質の排出を担い、環境変化に伴う LDT の機能
切替が本種の広塩性能力に重要であることが示唆された。
第2章では、沖縄県西表島の浦内川に遡上する野生のオオメジロザメをモデルに、5 年間
にわたるフィールド調査と、捕獲個体における遺伝子発現の解析が行われた。生後間もな
い個体の新規加入は 6 月からみられ、水温の低下する 10 月以降、オオメジロザメは捕獲さ
れなかった。浦内川では、上流まで川底に海水が入り込む塩水楔が発生しており、浦内川
のオオメジロザメは血漿よりも低浸透圧な汽水環境に生息することが確認された。NCC の
発現量が海水群と淡水群の中間の値となるなど、汽水環境に生息するために腎機能を部分
的に切り替えていることも示唆された。
以上の結果から、オオメジロザメは外環境の塩濃度に応じて腎機能を切り替える能力を
持ち、淡水環境では NaCl や尿素の再吸収を亢進させ、体内のホメオスタシスを維持するこ
とが明らかとなった。一方で実際の河川では、オオメジロザメは汽水環境である塩水楔に
生息することも明らかとなった。淡水環境に進入する能力は持つものの、体内外の浸透圧
差が少ない汽水環境を選択することで体液調節にかかるコストを節約すると考えられた。
ジェネラルディスカッションでは、これらの結果を統合的な観点から考察し、明解にまと
めている。
本論文はオオメジロザメの広塩性のメカニズム、さらには河川でのオオメジロザメの実
態を明らかにした初めての成果である。ラボワークとフィールドワークを並行して行った
本研究だから為しえたもので、学術上寄与するところが大きい。本成果は、軟骨魚類の環
境適応と生息域拡大の理解、さらには亜熱帯のマングローブ生態系の理解と保全にも貢献
するものである。全ての研究において、論文提出者が主体となって実験と解析を行ったも
のであり、よって審査委員一同は本論文が博士(農学)の学位を授与できるものと認めた。

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