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Wild ramification, the nearby cycle complexes, and the characteristic cycles of ℓ-adic sheaves

加藤, 大輝 東京大学

2022.06.22

概要

本論文では,SaitoとYatagawa[SY]の結果の精密化を証明している.彼らは,代数多様体の上のℓ進層(ℓは基礎体の標数と異なる素数)の特性サイクルは境界に沿った暴分岐で決まるということを証明した.彼らは境界のすべての点の暴分岐を考える必要があったが,本論文では特性サイクルが暴分岐で決まるという主張を各点毎に証明する.

1 同じ暴分岐を持つという概念について
 エタールコホモロジー理論においてはℓ進層よりもねじれ層の方が一般的かつ柔軟なので,ℓ進層を考える代わりにmodℓ構成可能エタール層を考える.

記号1.1. 以下では,ΛとΛ′は有限体とし,標数は考えているスキーム上可逆であると仮定する.

定義1.2 (c.f.[I],[V],[SY]).Xを連結で正規なスキーム,UをXの稠密な開部分スキームとする.V→Uを有限ガロワエタール被覆としそのガロワ群をGと書く.xをXの幾何的点とする.
 1. g∈Gがxで惰性的であるとは以下が成り立つことを言う:任意のU上同型な固有射X′→Xに対して,X′のVにおける正規化の幾何的点で,xの上にあり,gによって固定されるものが存在する.
 2. GとG′をU上の局所定数で構成可能なΛ層とΛ′層とし,V→Uで自明化されると仮定する.G|VとG′|Vに対応するGの表現をM,M′と書く.このとき,GとG′がxで同じ暴分岐を持つとは以下が成り立つことを言う:xで惰性的で位数がpベキである任意の元g∈Gに対して

 dimΛ(M) g = dimΛ′ (M′ ) g

 が成り立つ.

注意1.3. 上の定義は,Xのブローアップを取っているので一見Xの大域的な構造に依っているように見えるが,実際には同じ暴分岐を持つという性質は局所的な性質である.例えば,GとG′がxと同じ暴分岐を持つことは,G|U×XとG′|U×Xがxで同じ暴分岐を持つことと同値である.

注意1.4. 定義1.2.1においてブローアップを考えずに,単に「ある幾何的点を固定する」ものを惰性的と呼ぶことにしてしまうと「同じ暴分岐を持つ」という条件が強くなりすぎてしまう.実際,そのように定義してしまうと,二つの層であって明らかに順(tame)分岐であるのに同じ暴分岐を持たない例が作れてしまう([K, Section B]).

注意1.5. 定義1.2.2において,dimΛ(M)g=dimΛ′(M)gという部分をTrQBr(g,M)=TrQBr(g,M)と書き換えても同値な定義が得られる[K, Section 6].ここで,TrBrは[K]においてrational Brauer traceと呼んでいるもので,BrauerトレースTrBr(g,M)を含むようなQの有限次拡大Eをとり,TrBr(g,M)=1TrE/QTrBr(g,M)と定義される.主定理の証明においてはこちらを使う.

2 主結果
 Xを完全体k上の滑らかな代数多様体とする.[S2]において,構成可能なΛ層Fに対してその特性サイクルCC(F)が定義された.CC(F)はXの余接束T∗X上のサイクルである.

定理2.1. Xを完全体k上の滑らかな代数多様体,j:U→Xを開埋め込みとする.GとG′を局所定数で構成可能なΛ層とΛ′層とする.x0∈Xとx0の上にある幾何的点xをとる.このとき,GとG′がxで同じ暴分岐を持つならば,x0の開近傍においてCC(j!G)=CC(j!G′)が成り立つ.

注意2.2. 既存の結果について説明する.Xのコンパクト化Xをとる.[I]や[SY]では,Xのすべての幾何的点で同じ暴分岐を持つことを「同じ暴分岐を持つ」と呼んでいた.[I]では,この意味で(正確に言うとわずかに強い)同じ暴分岐を持つ二つの層が同じEuler数を持つことが示されている.[SY]では,同じ暴分岐を持つ二つの層が同じ特性サイクルを持つことが示されている.

 特性サイクルは隣接サイクル複体の全次元(total dimension)を用いて定義されているので,定理2.1は次の隣接サイクル複体の暴分岐に関する結果からただちに従う.

定理2.3. Kを強ヘンゼルな離散付値環,Xを整数環OK上有限型のスキーム,j:U→XKを開埋め込みとし,U上の局所定数で構成可能なΛ層GとΛ′層G′を考える.xをXの特殊ファイバーの幾何的点とする.このとき,GとG′がxで同じ暴分岐を持つならば,(Rψj!G)xと(Rψj!G′)xは同じ暴分岐を持つ,つまり,任意の暴惰性群の元σ∈PKに対して

 ∑i(−1)idimΛ((Riψj!G)x)σ=∑i(−1)idimΛ′((Riψj!G′)x)σ

が成り立つ.

注意2.4. 定理2.3の設定でXはOK上固有であると仮定する.Vidalは[V]において,GとG′がすべてのXの幾何的点で同じ暴分岐を持つならば,Hi c (UK, G) と Hi c (UK, G ′)が同じ暴分岐を持つことを示した.定理2.3は彼女の結果の局所類似と考えることもできる.

3 定理2.3の証明の方針
3.1 絡公式による帰着
定理2.3の設定で,Gを自明化する有限ガロワエタール被覆V→Uをとる.そのガロワ群をG,定数層G|Vに対応するGの表現をMと書く.すると,エタールコホモロジーとBrauerトレースの一般論により,各 σ ∈ PK に対し,絡公式

 TrBr(σ,(Rψj!G)x) = 1/|G| ∑ g∈G Tr((g, σ),(Rψ(j!h∗Qℓ))x) · TrBr(g, M)

を得る.定理2.3は絡公式と以下の命題から従う.

命題3.1. Tr((g,σ),(Rψ(j!h∗Qℓ))x)はℓに依らない整数で,̸=0ならgはxで惰性的である.
 ℓ独立性は以下のように用いる.(Rψ(j!h∗Λ))xがΛ[G]加群の複体として完全であることとBrauerトレースの理論により,命題のトレースが ̸=0ならgの位数がℓと互いに素であることがわかる.したがって,トレースがℓに依らないことが分かれば,gの位数はpのベキでなければならないことが言え,定理2.3を得る(注意1.5を参照).

注意3.2. 絡公式を用いることとℓ独立性からgの位数がpベキであることを導出するという議論はDeligneとIllusie[I]による「同じ暴分岐を持つならば同じEuler数を持つ」という結果の証明と同様である([V]も参照).

3.2 ガロワ作用の幾何的解釈
 命題3.1の証明について説明する.ここが本論文の肝である.ℓ独立性とgが惰性的なことは同時に証明される.Tr((g,σ),(Rψ(j!h∗Qℓ))x)を,オルタレーションに関するdeJongの結果とウェイトスペクトラル系列を用いて幾何的に解釈する.[O]や[V]においても同様の方針でTr((g,σ),RΓc(VK,Qℓ))の幾何的な解釈が与えられていた.
 簡単のためxをXの特殊ファイバーの閉点と仮定する(実際,定理2.1を示すには閉点の場合を考えれば十分である).X′→XをU上同型な固有射とし,Y′をX′のVにおける正規化とする.命題3.1は有限群GがOK上作用するスキームY′についての命題だと考えることができる:

命題3.3. Y′を有限群Gの許容的なOK上の作用をもつOK上有限型のスキーム,u:V→Y′KをG共変な開埋め込み,ZをY′の特殊ファイバーの閉部分多様体でG安定かつOK(の剰余体)上固有なものとする.このとき,Tr((g,σ),RΓ(Z,Rψ(u!Qℓ)))はℓによらない整数で,̸=0ならgはZ上に固定点をもつ.

 命題3.1を導出するには,Z=x×XY′に命題3.3を適用すればよい.命題3.3はY′の次元に関する帰納法でV=Y′Kの場合に帰着される.
 実際にはde Jongの結果を用いて準安定なオルタレーションをとる必要があるが,ここでは簡単のため次を仮定する:Kの有限次ガロワ拡大Lと生成ファイバー上同型でG′=G×Gal(L/K)共変な固有射Y′′→Y′⊗OOLであって,Y′′がOL上強準安定なものが存在することを仮定する.ウェイトスペクトラル系列の構成([RZ],[S1])と同様にスペクトラル系列

 E ij 1 = ⊕ a Hj−2a (Z (i+2a) , Qℓ)(−a) ⇒ Hi+j (Z ×Y ′ Y ′′, RψY ′′/OL Qℓ) ∼= Hi+j (Z, RψY ′/OK Qℓ)

を構成できる.ここで,Z(i)は以下のように定義されるZ×Y′Y′′の閉部分多様体の非交和である:(Y′′)(i)をY′′の特殊ファイバーの既約成分i+1個の共通部分を全通り考えてその非交和をとったものとして,Z(i)=Z×Y′(Y′′)(i)とおく.
 このスペクトラル系列は G × Gal(K/K) の作用に関して共変である.また,E1 項への作用は G′ =G×Gal(L/K)のZ(i+2a)への幾何的な作用から来ているのでLefschetz跡公式を適用でき,ℓ独立性とトレースが ̸=0のときの固定点の存在が言える.

注意3.4. 命題3.3と似た既存の結果について述べる.
 1. V=Y′Kの場合はℓ独立性の部分はMiedaによってすでに証明されていた[M].固定点の存在は[M]では述べられていないが,この場合には[M]の証明から導出できる.したがって,命題3.3は定式化された時点で次元に関する帰納法によって[M]に帰着される.ただし,xが閉点でない場合は命題3.3にあたる命題がもう少し複雑になる.その場合には[M]では不十分だと思われる.
 2. [M]の証明の手法は我々のものとかなり近く,どちらもオルタレーションを使って準安定な場合の考察からもとの場合を導出している.導出の手法が少し異なっており,我々は次元に関する帰納法を用いているが,彼は有限群の作用よりも広く代数対応の作用まで考えることでそれを可能にしている.
代数対応の作用付きで議論するためには少々込み入ったスペクトラル系列の構成が必要であり,我々の手法は,彼の証明を単純化していると見ることもできる.
 3. OKの剰余体がFpの場合,ℓ独立性の部分はZhengによる結果[Z]の帰結である.彼は,局所体上の代数多様体上で,隣接サイクル関手がℓ進層の整合系を整合系に送るということを証明しており,我々とは異なる手法を用いている.また,固定点の存在を彼の証明から導出するのは難しいと思われる.

参考文献

[I] L.Illusie,Th´eoriedeBraueretcaract´eristiqued’Euler-Poincar´e,d’apr`esDeligne,Caract´eristiqued’Euler-Poincar´e,Expos´eVIII,Ast´erisque82-83(1981),161-172.

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[M]Y.Mieda,Onℓ-independenceforthe´etalecohomologyofrigidspacesoverlocalfields,CompositioMath.143(2007)393–422.

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[RZ]M.RapoportandT.Zink,U¨berdielokaleZetafunktionvonShimuravariet¨aten.Monodromiefiltra-tionundverschwindendeZykleninungleicherCharakteristik,Inv.Math.(1982),21–101.

[S1]T.Saito,Weightspectralsequencesandindependenceofℓ,JournaloftheInst.ofMath.Jussieu(2003)2(4),583–634.

[S2]T.Saito,Thecharacteristiccycleandthesingularsupportofaconstructiblesheaf,Invent.Math. 207597-695(2017).

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[V]I.Vidal,Th´eoriedeBraueretconducteurdeSwan,J.AlgebraicGeom.13(2004),no.2,349-391.

[Z]W.Zheng,Surl’ind´ependancedeℓencohomologieℓ-adiquesurlescorpslocaux,Ann.Sci.E´c.Norm.Sup´er.(4)42(2009),no.2,291–334.

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