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大学・研究所にある論文を検索できる 「肝疾患および心疾患がテオフィリンクリアランスに及ぼす影響に関する研究 : pharmacometricsによる臨床データを活用した重症度別評価および推奨投与量の推定」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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書き出し

肝疾患および心疾患がテオフィリンクリアランスに及ぼす影響に関する研究 : pharmacometricsによる臨床データを活用した重症度別評価および推奨投与量の推定

倉田, 賢生 KURATA, Yasuo クラタ, ヤスオ 九州大学

2023.03.20

概要

九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository

肝疾患および心疾患がテオフィリンクリアランスに
及ぼす影響に関する研究 : pharmacometricsによる
臨床データを活用した重症度別評価および推奨投与
量の推定
倉田, 賢生

https://hdl.handle.net/2324/6787702
出版情報:Kyushu University, 2022, 博士(臨床薬学), 論文博士
バージョン:
権利関係:Public access to the fulltext file is restricted for unavoidable reason (2)

(様式5)






倉田

賢生

論文題名



肝疾患および心疾患がテオフィリンクリアランスに及ぼす影響に関する研究

- pharmacometrics による臨床データを活用した重症度別評価および推奨投与量の推定区





















Pharmacometrics は、数学的モデルやシミュレーションを含む統計学的手法を駆使し、薬剤の薬
物動態学的・薬力学的特性を定量的に解析し予測するための理論体系およびその手法で ある。
Pharmacometrics のうち、母集団薬物動態解析(population pharmacokinetic analysis: PPK 解析)
は、解析対象を集団として取り扱い、薬物動態の平均的な挙動およびばらつきを母集団パラメータ
として評価するものである。一般に臨床では幅広い背景を有する患者データが多く蓄積され得るこ
とから、臨床応用される医薬品の PPK 解析を実施するにあたって、薬物動態に影響する因子の特
定および定量評価のためのデータ収集の場として理想的であると考えられる。一方、得られる血中
濃度はルーチン業務に伴う定常状態の最低血中濃度(トラフ値)であることが多く、トラフ値とは
別に経時的に吸収相や分布相等の血中濃度データを得ることは、患者の負担やコストの面からも困
難を伴う。よって臨床データにより構築されたデータセットを用いて PPK 解析を実施する際には、
工夫が求められる。NONMEM における multiple trough screen analysis は動態モデルとしてクリ
アランスと投与量および定常状態の平均血中濃度との関係式を応用することで、トラフ値のみから
なるデータセットを用いてクリアランス、およびクリアランスの共変量を評価することが可能な手
法である。
本 研 究 は 、「 肝 疾 患 お よ び 心 疾 患 が テ オ フ ィ リ ン ク リ ア ラ ン ス に 及 ぼ す 影 響 に 関 す る 研 究 pharmacometrics による臨床データを活用した重症度別評価および推奨投与量の推定-」と題し、
臨床における患者データおよび気管支拡張薬テオフィリンのトラフ値を蓄積し、テオフィリンクリ
アランスに及ぼす慢性肝疾患および心疾患の影響を、疾患の重症度を考慮したうえ multiple trough
screen analysis を用いた PPK 解析により評価し、各々の疾患における推奨投与量を重症度別に推
定することを目指した。

第 1 章では、テオフィリンクリアランスに及ぼす慢性肝疾患の影響について、慢性肝疾患の代表
的な病態である慢性肝炎および肝硬変に着目し、両者の影響を定量評価した。その結果、慢性肝炎
はテオフィリンクリアランスを 11.1%低下させるのに対し、肝硬変は 44.3%低下させることが示さ
れ、両者の影響の違いが特徴づけられた。また、クラリスロマイシンの併用および喫煙もテオフィ

リンクリアランスに有意に影響する因子であり、それぞれテオフィリンクリアランスを 13.9%低下
および 40%上昇させることが示された。

第 2 章では、慢性肝疾患のうち肝硬変をさらに重症度別に分類し、慢性肝炎を含む種々の重症度
ステージにおける慢性肝疾患下でのテオフィリンクリアランスを推定した。PPK 解析により、CP
スコアを用いて肝硬変を分類した CP model、および MELD スコアにて分類した MELD model の
2 つのモデルを得た。テオフィリンクリアランスは慢性肝疾患の進展に応じて低下することが両モ
デルから示された。さらに MELD model では、MELD スコアが有する広いダイナミックレンジを
活かし、肝硬変を詳細に分類することで肝硬変患者のテオフィリンクリアランスをより正確に記述
することができ、テオフィリンクリアランスの評価において MELD スコアが有用である可能性が
示唆された。両モデルを用いてテオフィリンのトラフ値のシミュレートしたところ、慢性肝疾患を
有さない患者、および慢性肝炎患者の推奨投与量は、それぞれ両モデルで同等となった。一方で、
各々のモデルで最も重症度の高い CP class C および MELD ≥25 を有する肝硬変患者においては推
奨投与量が異なり、MELD model でより低い投与量が推奨された。

第 3 章では、心不全に伴う肺うっ血および肝うっ血が及ぼすテオフィリンクリアランスへの影響
について、NYHA 心機能分類による心不全の重症度を考慮に入れ評価した。肝うっ血を有する患者
のテオフィリンクリアランスは、心不全の重症度に応じて低下することが示された。また NYHA
class IV においては、肝うっ血を有さない場合であってもテオフィリンクリアランスが低下(41.4%)
することが示された。対照的に、肺うっ血による有意な影響は確認されなかった。トラフ値のシミ
ュレートにより、心疾患を有さない患者の推奨テオフィリン投与量は 500mg/day と推定された。
また、肝うっ血を有する NYHA class II、III、および IV の患者、ならびに肝うっ血を有さない NYHA
class IV 患者の推奨投与量は 400、300、および 200、ならびに 300mg/day と推定された。

本研究により、肝疾患および肝うっ血併存時の心疾患の重症度の進展に応じてテオフィリンクリ
アランスが低下することが示された。また、各々の疾患の重症度別のテオフィリン推奨投与量を提
示することができた。慢性肝疾患患者にテオフィリンを投与する際は、重症度に応じた適切な投与
量調整を行う必要があると考えられる。心不全患者に対しては重症度評価に加え、肝うっ血の有無
を評価して用量調整を行うことが肝要であるが、NYHA class IV の心不全患者に対しては肝うっ血
の有無にかかわらずテオフィリンを減量する必要があると考えられる。

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