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書き出し

Elucidation of the molecular mechanism of microtubule-dependent melanosome transport in melanocytes

丸田, 優人 東北大学

2023.09.25

概要

博⼠論⽂(要約)
Elucidation of the molecular mechanism of microtubule-dependent melanosome
transport in melanocytes
(メラノサイトにおけるメラノソームの微小管依存的な輸送機構の解明)

令和 5 年度
東北大学生命科学研究科
脳生命統御科学専攻
丸田 優人

1

研究背景

私たちの肌や毛髪の色を形成するメラニン色素は、メラノサイトで合成され、メラノソームと呼ばれる特
殊なオルガネラに包まれて細胞内を輸送されている。メラノソームは最終的に隣接するケラチノサイトや毛
母細胞に受け渡されることで肌や毛髪への色素沈着が起こる。この色素沈着に至るまでの機構は、紫外線に
よるダメージから肌を守るために重要な生理機能である。メラノサイトにおけるメラノソームの細胞内分布
は、微小管上とアクチン線維上の輸送のバランスによって主に調整されると考えられている。これまでの研
究で、アクチン線維上のメラノソーム輸送における制御機構の全容はほぼ明らかとなっているが、微小管依
存的な両方向性(核方向と細胞辺縁部方向)の輸送に関しては、その基礎となる輸送の分子機構や、細胞辺
縁部へのメラノソーム分布における重要性はまだ完全には解明されていない。そこで本研究の第一章では、
まず微小管上の逆行性輸送(核方向への輸送)に着目し、その輸送機構の全容解明を行った。次に、第二章
では順行性輸送(細胞辺縁部方向への輸送)に着目し、新規イメージング法を開発することで、メラノソー
ムの細胞辺縁部への分布における微小管輸送の重要性の解析を行った。

研究結果および考察
第一章

メラノソームの微小管逆行性輸送の新規制御因子 Rab44 の機能解析

メラノサイトで低分子量 G タンパク質 Rab27A が欠損すると、アクチン線維上の輸送が阻害されて微小管
上の逆行性輸送が優位となり、メラノソームが核周囲に凝集する。この輸送阻害のため、ケラチノサイトや
毛母細胞にメラノソームが受け渡され難くなり、ヒトではグリセリ(Griscelli)症候群と呼ばれる白皮症の一
種を発症することが知られている。グリセリ症候群の患者において、優位となっているメラノソームの逆行
性輸送を抑制することができれば、症状の回復が期待されることから、その分子機構の解明は重要な課題で
ある。そこで私はまず修士論文で、Rab27A 欠損によりメラノソームの逆行性輸送が優位となっている培養メ
ラノサイト(melan-ash 細胞)を用いて、微小管逆行性輸送を制御する分子の同定を試みた。その結果、当時
機能未知の melanoregulin(以下、Mreg)という分子をノックダウンすると逆行性輸送が阻害され、核周囲に
凝集していたメラノソームが細胞辺縁部へ分散することを見出した。詳細な解析を行ったところ、Mreg はメ
ラノソームに局在してアダプタータンパク質(RILP)を介してダイニン-ダイナクチン・モーター複合体の構
成因子 p150Glued と相互作用し、逆行性輸送を制御することが明らかとなった。その後、Rab36 も同様の機構
でメラノソームの逆行性輸送を制御することが所属研究室の研究で示されたが、melan-ash 細胞で Mreg と
Rab36 をダブルノックダウンしても逆行性輸送は完全には阻害されなかった。そこで第三の制御因子の存在
を想定し、小胞輸送を制御する典型的な Rab 約 60 種類の関与を検討したが、その中に有力候補は無かった。
そこで、高分子量の非典型的な Rab ファミリーである Large Rab(Rab44 と Rab45)に着目した。Large Rab
は C 末端領域の Rab ドメイン以外に、N 末端領域に EF ハンド、中央領域にコイルドコイルドメインを有す
る特徴的な構造を持つ。まず、melan-ash 細胞で Large Rab のノックダウンを行ったところ、Rab44 のノック
ダウンでのみ逆行性輸送が有意に阻害され、メラノソームが細胞辺縁部に分散した。さらに、Rab44 のノッ
クダウンで観察された表現型が siRNA によるオフターゲット効果でないことを確かめるため、siRNA に耐性
の Rab44(Rab44SR)を作製し、ノックダウンレスキュー実験を行った。その結果、Rab44SR の再発現により、
細胞辺縁部に分散したメラノソームは核周囲に凝集し、表現型はレスキューされた。次に、EGFP タグを付
加した Rab44 および Rab44 の各ドメイン(EF ハンド、コイルドコイル、Rab ドメイン)を含む 3 種類の部分
欠損体を用いて、それらのメラノソーム上への局在を確認したところ、Rab44(全長)および Rab ドメイン
を含む C 末端領域がメラノソームと共局在した。Rab ドメインの C 末端側の脂質化修飾に重要なシステイン

2

残基に変異を加えるとメラノソームと共局在しなくなったことから、Rab44 は Rab ドメインの C 末端側の脂
質化修飾を介してメラノソームに局在していることが明らかとなった。また、Rab44 と逆行性輸送因子
p150Glued との相互作用を確認するため、免疫沈降実験を行った。その結果、Rab44 はコイルドコイルドメイン
を含む中央領域を介して逆行性輸送因子と相互作用することが明らかとなった。興味深いことに、Ca2+存在
下でその相互作用は有意に増強されたことから、EF ハンドドメインを含む N 末端領域で Ca2+に応答するこ
とで逆行性輸送因子との相互作用が調節される可能性が示唆された。さらに、Rab44 に加えて既知の 2 つの
制御因子(Mreg、Rab36)をトリプルノックダウンすると、メラノソームの逆行性輸送がほぼ完全に阻害さ
れたことから、これら三つの分子の協調作用で逆行性輸送が制御されることが明らかとなった。
第二章

AID-2×RBD27 システムを用いたメラノソームの順行性輸送のライブセルイメージング

一般的に、オルガネラの細胞辺縁部への輸送には微小管上の長距離輸送が関与すると考えられているが、
メラノソームの順行性輸送(細胞辺縁部方向への輸送)に、微小管上の長距離輸送が必要かどうかはこれま
で明確ではなかった。そこで、2×RBD27(Rab-binding domain specific for Rab27 isoforms:Rab27 トラッパー)
と AID2(auxin-induced degradation system 2:急速分解タグ)システムを組み合わせたライブセルイメージン
グ及び動態解析によって、メラノソームの細胞辺縁部への分布における微小管輸送の重要性を評価した。具
体的には、まず AID-2×RBD27 を野生型のメラノサイト(melan-a 細胞)に過剰発現し、細胞骨格には影響を
与えずにメラノソームを核周辺へと凝集させた。次に AID-2×RBD27 をオーキシン誘導体で急速に分解する
ことで、核周辺からのメラノソームの順行性輸送の観察およびその動態解析を行った。その結果、
AID-2×RBD27 が分解される初期の段階(オーキシン誘導体添加 0〜30 分)では、動きが速くかつ両方向性の
長距離移動を行うメラノソームが確認されたが、中後期(オーキシン誘導体添加 60〜120 分)では、そのよ
うな動的特徴を示すメラノソームは殆ど確認されず、動きが遅くかつ短距離移動のものが主であった。これ
ら結果に基づき、哺乳類の培養メラノサイトにおける核周囲から細胞辺縁部までのメラノソームの順行性輸
送経路には微小管とアクチン線維が段階的に関与し、輸送の初期段階で微小管上からアクチン線維上への積
極的な乗り換えが起きている可能性が示唆された。
総括

本研究では、メラノソームの微小管依存的な輸送機構の解明を行った。第一章では、メラノソームの逆行
性輸送の新たな制御因子として Rab44 を同定した。また、Rab44 は既知の制御因子(Mreg と Rab36)と協調
的に逆行性輸送を制御する可能性が示唆された。第二章では、AID-2×RBD27 と AID2 システムを組み合わせ
た新規イメージング法を開発した。本手法を用いた評価の結果、哺乳類の培養メラノサイトでは、微小管は
メラノソームの順行性輸送の初期段階で重要であり、以降の輸送はアクチン線維が主に担うという新たな輸
送モデルの提案に至った。

発表論文

Maruta, Y. & Fukuda, M. (2022) J. Biol. Chem. 298, 102508
*Brauer, N., *Maruta, Y. et al. (2023) Front. Immunol. 14, 1151166
Maruta, Y. & Fukuda, M. (2023) Encyclopedia Cell Biol. 2nd ed. 2, 281-290
*Ohbayashi, N., *Maruta, Y. et al. (2012) J. Cell Sci. ...

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