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大学・研究所にある論文を検索できる 「ホソヘリカメムシにおけるKrüppel homolog 1 遺伝子の発現と機能に関する研究」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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ホソヘリカメムシにおけるKrüppel homolog 1 遺伝子の発現と機能に関する研究

董, 笠 京都大学 DOI:10.14989/doctor.k23044

2021.03.23

概要

幼若ホルモン(JH)は昆虫の発育と変態を司るホルモンの一種であり、主な機能は幼虫の変態抑制と成虫の生殖促進である。Krüppel homolog 1 (Kr-h1)遺伝子はC2H2ジンクフィンガータイプ転写因子をコードしており、いくつかの昆虫でJHの早期下流遺伝子としてJH受容体の下流で働くことが知られている。本研究の対象であるホソヘリカメムシRiptortus pedestrisは明瞭な光周性を示し、メス成虫は長日条件で卵巣が発達するが、短日条件で卵巣は発達せず生殖休眠に入る。本種の卵巣発達はJHに誘導される。本研究では、幼虫の変態抑制と成虫の生殖促進の両方の観点から、ホソヘリカメムシにおけるKr-h1遺伝子の発現と機能を検討した。

第1章では、まずメス成虫におけるKr-h1の発現パターンを調べた。成虫を短日条件から長日条件に移すと、日の経過と共にKr-h1の発現量が上昇した。一方、短日条件ではKr-h1の発現量は低く一定であった。メス成虫にJH類縁物質を塗布すると、短日条件でもほとんどの個体が卵巣を発達させ、Kr-h1の発現量が上昇した。以上より、Kr-h1の発現はJHに誘導されると考えられる。また、卵巣発達との時間経過の比較により、 JHは卵巣が発達し始める数日前に分泌されていると考えられた。昆虫の光周性には、概日時計が関与しており、ホソヘリカメムシにおいても卵巣発達を司る光周性に時計遺伝子が関与していることが報告されている。そこで、時計遺伝子Clock(Clk) と cryptochrome-m(cry-m)が卵巣発達とKr-h1発現量に及ぼす影響を、これらの遺伝子の二本鎖RNAを注射するRNA干渉により発現抑制を行って調べた。Clkの発現を抑制すると卵巣発達が長日条件で抑制され、Kr-h1の発現量が低下した。一方、cry-mの発現を抑制すると短日条件で卵巣が発達し、Kr-h1の発現量が上昇した。したがって、Kr-h1の発現は光周性の結果としてもたらされるJH分泌によって誘導されることが示された。

第2章では、まずメス成虫にKr-h1の二本鎖RNAを注射し、長日条件でKr-h1発現量と卵巣発達を調べた。Kr-h1発現量は頭部では変化しなかったが、腹部では著しく低下していた。そして、卵巣発達率は統計的に有意な差はないものの、コントロールに比べ低下した。したがって、ホソヘリカメムシの卵巣発達にKr-h1が必要と結論できなかったが、何らかの役割を果たしている可能性はある。次に、Kr-h1がJHのもう一つの機能である幼虫形態の維持に関与しているかどうかを調べるため、4齢幼虫にKr-h1の発現抑制を試み、その後の発育を調べた。その結果、Kr-h1の二本鎖RNAを注射した幼虫では、Kr-h1発現量は低下しており、5齢脱皮後、約85%の個体において、翅芽の形が正常な5齢幼虫と異なっていた。この翅芽に異常が見られた幼虫は、以後脱皮しなかった。また、これらの幼虫では単眼、結合板および交尾器の存在や、腹部背面が黄色みがかっているという成虫の形態的特徴が見られた。これらの結果から、ホソヘリカメムシのKr-h1は幼虫形態の維持に必要と考えられる。

以上の研究により、ホソヘリカメムシのKr-h1発現は成虫期に光周性の結果としてもたらされるJH分泌に誘導されており、JHによる幼虫形態の維持に関与していることが明らかになった。

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