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大学・研究所にある論文を検索できる 「悪性神経膠腫に対する対流強化薬剤送達技術によるニムスチン塩酸塩局所投与治療の開発:基礎特性の研究」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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悪性神経膠腫に対する対流強化薬剤送達技術によるニムスチン塩酸塩局所投与治療の開発:基礎特性の研究

邵 暁東 東北大学

2021.09.24

概要

背景:成人原発性脳腫瘍の中で神経膠腫は最も頻度が高く治療抵抗性である。その中で最も予後不良な膠芽腫では、最大限の手術摘出、化学療法および局所放射線療法による集学的治療をおこなっても生存期間中央値は約 12〜15 ヶ月である。治療抵抗性の原因の一つとして、血液脳関門による化学療法剤の脳実質内への到達が治療効果を得るには依然不十分であることが挙げられる。対流強化薬剤送達(convection-enhanced delivery:CED)法はこの問題を克服するために開発された脳実質内への薬剤局所送達方法で、脳腫瘍、パーキンソン病、てんかんを含む機能性神経系疾患などの多くの中枢神経系疾患に対する治療応用がされている。この CED 法は、マイクロカテーテルの先端に持続的な陽圧をかけることで、周囲脳組織に対流を形成し、脳実質内に薬剤を広く分布させる方法で、血液脳関門、血液腫瘍関門をバイパスすることが可能である。このように CED 法は有望な薬剤送達法であるが、今後の臨床応用を考える場合、有効な薬剤の選択、脳実質内での薬剤の分布範囲、局所送達によって引き起こされる腫瘍内微小環境の変化について明らかにする必要がある。そこで本研究では、CED 法を用いてニトロソウレア系の化学療法剤の一つであるニムスチン塩酸塩(Nimustine Hydrochloride:ACNU)を CED 法で脳実質内へ局所送達した際の、薬剤の局所分布・体内動態、およびそれにより惹起される免疫応答を中心とした腫瘍微小環境の変化について明らかにすることを目的として検討をおこなった。

方法:ACNU を CED 法で局所送達した際の脳内薬剤分布・体内薬剤動態を評価した。脳内局所薬剤分布は、ACNUとエバンスブルーを混合し CED 法で脳内送達を施行し、直後に①質量分析イメージング(mass spectrometry imaging:MSI)法による ACNU の代謝産物である塩酸モクソニジン C9H14N5OCl[M+H]分子についての拡がりを評価、②肉眼所見からエバンスブルーの拡がりを評価し、両者を比較した。体内動態は、14C 標識 ACNU 送達下でのラジオアイソトープイメージング法にて解析した。ACNU を CED 法で脳実質内へ局所送達することで免疫反応が惹起されるという仮説を立て、in vitro, in vivo で検討した。微小環境に与える因子として、アポトーシス誘導や細胞生存の双方に働く Fas タンパク質、微小環境内での腫瘍免疫を抑制する Transforming growth factor-b1(TGF-b1)に着目し、ACNU がヒト膠芽腫細胞株の Fas タンパク質の発現、TGF-b1 の産生に与える影響を in vitro で評価した。さらにラット膠肉腫細胞株 9L による脳内腫瘍移植モデルに ACNU を CED法で局所送達した際の腫瘍内への CD4/CD8 陽性リンパ球浸潤を組織学的に解析した。

結果:ラット脳実質内へ CED 法で ACNU 局所送達をおこない、MSI 法で薬剤分布を評価した結果、良好な ACNU分布が得られた。これは親水性染料であるエバンスブルーと同等の分布であった。ラジオアイソトープを用いた ACNU 動態解析では、ACNU を CED 法で局所送達した直後から腸や膀胱にラジオアイソトープの集積が確認され、短時間で消失した。一方で、脳実質内には 24 時間後まで ACNU の局在が確認された。In vitro で腫瘍細胞に ACNU を曝露すると、腫瘍細胞の Fas タンパク質発現は低下し、TGF-b1 分泌は低下した。脳内腫瘍モデルに対し CED 法で ACNU を腫瘍内に送達すると、腫瘍内への CD4・CD8 陽性リンパ球の浸潤がそれぞれ誘導された。

結論: ACNU を CED 法にてラット脳実質内へ局所送達すると、ACNU は脳実質内に良好に拡散し、かつ局所のクリアランスは比較的遅いことを確認した。さらに ACNU は腫瘍微小環境に影響を与え、CED 法での ACNU 局所送達後に腫瘍内に CD4 陽性・CD8 陽性リンパ球浸潤がそれぞれ誘導された。本研究結果から、ACNU は CED 法による脳実質内への局所送達における有望な薬剤となる可能性が示唆された。

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