The CR9 element is a novel mechanical load-responsive enhancer that regulates natriuretic peptide genes expression
概要
〔目的(Purpose))
心肥大や心不全による左室壁ストレスの上昇およびアントラサイクリン系抗生剤であるドキソルビシンによる心海性に伴い血漿BNP濃度が上昇することはよく知られているが、これらの刺激によってNppb遺伝子の発現燈がどのように調整されているのかについては知られていない。Nppb遺伝子のエンハンサーであるCR9が心肥大・心不全に関連する特異的な条件に応答して発現を調整できるのではないかと考え、CR9エンハンサーの活性化とNppb遺伝子発現の増加が同時に起こる病態生理学的要因と経路について解明することを目的とした。
〔方法ならびに成績(Methods/Resulls)〕
Tg (CR9-luc)マウスに対し心肥大・心不全を誘発しうる薬剤(フェニレフリン(PE) •アドレナリン(Adr) ・ドキソルビシン(Dox))を投与したところ、CR9活性、Nppb roRNAおよび血漿BNPは上昇した。一方で同様の藥剤負荷を培養心筋細胞に行うと、DoxのみNppb発現が低下し、In vivo実験の結果との相違がみられた。
培養細胞にDoxを箇荷した条件下で細胞に機械的刺激(細胞の伸展および圧賀荷)を加えたところ、Nppb mRNAおよ び培地中のBNP濃度の上昇を認めた。次に機械的刺激がCR9活性とNppb mRNA上昇につなげるシグナル伝速経路について検討した。Csrp3遺伝子によってコードされるMLPは心筋細胞で発現するメカノセンサータンパク質の一つであるため、siRNAを用いてMLPの究現をノックダウンしたところ、CR9. Nppbともに機械的刺激環境下においても有意に低下した。
また、心筋ミオシンはZディスクとコスタミアに接続されているため、サルコメア内の心筋ミオシン張力がメカ ノセンシングとメカノトランスダクシヨンに影嚮を与えるのではないかと考え、心臓ミオシンII ATPaseの特異的阻害剤であるMYK-46IもしくはBDMの存在下で、機械的刺激またはアドレナリン刺激に曝露したところ、CR9, Nppbともに抑制された。
また、CR9エンハンサーが心肥大もしくは心不全の病態特捤的エンハンサーであることを示すため、Nppb遺伝子の最小ブロモーターとレボーター遺伝子(Luciferase)のみ{miniPNppb-Luc)、およびCR9、Nppb®小プロモータ一、レポーター遺伝子を有する(CR9-miniPBNP-Luc)レンチウィルスベクターを作製した。機械的刺激および薬剤条件下でLuciferase活性はCR9,iniPBNP-Lucをトランスフェクトした心筋細胞でのみNppb raRNAおよびBNP濃度に比例した上昇がみられ、ffi/niP/Yppb-Ucの場合や線維芽細胞にトランスフェクトした場合には有意な変化を認めなかった。
〔総 括(Conclusion))
CR9エンハンサーは、メカノセンシングおよびメカノトランスダクション経路を介して、心筋細胞における機械的負荷によって活性化される。体積過負荷または圧力過負荷のある心臓の病理学的条件では、CR9が活性化されて Nppb発現がアップレギュレートされる可能性がある。