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大学・研究所にある論文を検索できる 「小腸絨毛形態変化を促進するペクチン構造と細胞増殖機構との相関の解明」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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小腸絨毛形態変化を促進するペクチン構造と細胞増殖機構との相関の解明

後藤, 咲季 岐阜大学

2022.03.14

概要

水溶性食物繊維の一種であるペクチンの摂取は,消化管上皮組織の形態に影響を及ぼすことがこれまでに明らかとなっているものの,そのメカニズムについては不明な点も多い。また,誘導された小腸絨毛の伸長の生理的意義についての報告はない。ペクチンは,すべての陸生植物の細胞壁と中葉組織とに偏在している多糖類であり,その複雑な構造は由来する植物種や組織によって大きく異なっている。本研究では,ペクチンの構造に関する詳細な報告がない柿由来ペクチンに注目し,その分子構造を明らかにした上で,構造の異なるペクチン分子を用いて,ペクチンによって誘発される小腸絨毛形態変化に関与しているペクチン分子内構造を明らかにすることを目的とした。さらに,「ペクチン摂取による小腸絨毛の伸長が,栄養吸収効率に有意に作用する」ことが予想されるため,柿由来ペクチンが小腸絨毛形態変化とそれに伴う栄養吸収能に及ぼす影響の解析を行うことで,ペクチンによる小腸絨毛形態変化のメカニズムを明らかにし,小腸において消化吸収されないペクチンが,直接的に作用して小腸絨毛を伸長させる生理的意義の解明を目指した。

 3品種の柿(富士,刀根,富有)由来のペクチンについて分子構造を分析したところ,品種によらず天然には希少なLMペクチンに属し,ラムノガラクツロナン領域を豊富に含む構造を有していることが明らかとなった。また,構造の異なるペクチン画分の細胞増殖促進効果の違いから,ペクチン分子内構造のうち,ペクチン側鎖に含まれる分岐したアラビノースをもつアラビノガラクタン部分が,小腸の形態変化を誘発する活性部位であることを見出した。

続いて,ペクチンによる細胞増殖と栄養吸収への影響について,ペクチン添加によって細胞増殖が促進する際の分化Caco-2細胞におけるintestinal alkaline phosphatase(IAP)活性を測定することで,ペクチン添加による栄養吸収能への影響について検討すると共に,ペクチン添加時の分化Caco-2細胞における糖およびカルシウムの吸収に関連する遺伝子発現の調査および透過吸収率の測定を行った。その結果,ペクチンによる分化Caco-2細胞の糖およびカルシウム吸収に関連する遺伝子発現の増加が示されたが,カルシウムの透過率のみペクチンの添加によって増大することが確認され,カルシウムの吸収を向上することが知られている活性型ビタミンD添加群と同様の結果を示した。一方で,IAPの活性およびカルシウム吸収に関連する遺伝子群の発現は,ペクチンと活性型ビタミンD添加群との間に相違が確認されたことから,分化Caco-2細胞におけるカルシウムの透過吸収率への影響について,ペクチンは活性型ビタミンDと同様の効果を示すが,その細胞シグナル伝達の経路は異なっていることが示唆された。

 さらには,小腸絨毛の伸長の鍵となるペクチンによる細胞増殖機構を明らかにするために,ペクチン添加時の分化Caco-2細胞および未分化Caco-2細胞のmRNAを抽出し,ヘパラン硫酸(HS)糖鎖関連遺伝子およびWntタンパク質の遺伝子発現変化について調査した。その結果,柿由来ペクチンに応答した分化Caco-2細胞による未分化Caco-2細胞の増殖促進に関与する物質は,ペクチン刺激により増加するWnt5aタンパク質である可能性が示唆され,過剰に分泌されたWnt5aによって,未分化Caco-2細胞表面のHS糖鎖の硫酸化構造が変化し,Wntシグナル伝達が亢進することで細胞増殖促進が誘導されることが示唆された。

 以上の結果より,ペクチン分子内側鎖において分岐したアラビノース残基を有するアラビノガラクタン部分が小腸上皮細胞に作用してWntシグナル伝達を亢進し,細胞増殖を促進することで小腸絨毛が伸長すること,そしてそれによりカルシウムの吸収に影響を及ぼす可能性があることを本研究により明らかにした。また,ペクチンによりIAP活性が減少することも示され,IAPを介したペクチンの新しい機能性も示唆された。これらの知見は,食物繊維の生理機能が腸内細菌を介したプレバイオティクス効果に注目が集まる中,新たな食物繊維の機能性の発見に寄与するものである。

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