リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

大学・研究所にある論文を検索できる 「SREBP-1a欠損マウスを用いたSREBP-1a生理機能の解析」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

コピーが完了しました

URLをコピーしました

論文の公開元へ論文の公開元へ
書き出し

SREBP-1a欠損マウスを用いたSREBP-1a生理機能の解析

荒木, 雅弥 筑波大学

2023.09.04

概要









論 文 題 目
SREBP-1a 欠損マウスを用いた SREBP-1a 生理機能の解析

指導教員
人間総合科学研究科
島野



疾患制御医学専攻

仁 教授



筑波大学大学院 人間総合科学研究科 疾患制御医学専攻





荒木

雅弥




SREBP-1a が制御する脂質生合成の腸管を構成する細胞内における重要性を

明らかにする。



実験動物
野生型(WT)マウス、SREBP-1a の Exon1a 上にある開始コドン含む配列を

欠損させた SREBP-1a 全身欠損(KO)マウス、Exon1a の開始コドンを含む配
列を loxP で挟んだ SREBP-1a flox/flox(flox)マウスと LGR5-GFP CreERT2 Tg
マウスを掛け合わせて作製した薬剤誘導性腸管幹細胞特異的 SREBP-1a 欠損
(ISC KO)マウスを用いて解析を行った。
SREBP-1a の腸管における局在の検討
WT マウスの腸管で in situ hybridization を行うことによって、Srebf1a が発現
する腸管の部位と腸管構成細胞での局在を検討した。
SREBP-1a による脂質合成が空腸内部構造に与える影響の検討
食事応答性の絨毛伸長に対する SREBP-1a による内因性脂質合成の評価を行
うため、24 時間の絶食後に無脂肪食を 12 時間再給餌した条件の WT マウス、
KO マウスのサンプルを回収した。このサンプルを用いて、空腸の内部構造の評
価のため形態、構成細胞、細胞の分化・増殖能を検討し、脂質合成との関連を
評価するため脂質合成と腸管内脂質濃度の測定し、栄養吸収の評価を行うため
血液の分析を行った。KO マウスで認められた空腸内部構造の変化に対する腸管
幹細胞内の SREBP-1a 欠損の影響を評価するため、ISC KO マウスでも同様の
栄養条件で空腸の形態の評価を行った。KO マウスで認められた空腸内部構造の
変化が、SREBP-1a 欠損による脂質の不足によってもたらされるものか検討す
るため、24 時間の絶食後にカロリー比 5%のオリーブオイルを添加した無脂肪
食を 12 時間再給餌した条件の WT マウス、KO マウスのサンプルを回収した。
このサンプルを用いて、無脂肪食再給餌条件と同様の検討を行った。
腸管幹細胞の機能に重要な SREBP-1a によって合成される脂肪酸種の特定
WT マウスと KO マウスより腸管オルガノイドを作製し、その腸管オルガノイ
ドの生育過程を経時的に観察することで、腸管幹細胞の分化・自己複製能を評
価した。KO の腸管オルガノイドで認められた形態変化に対する SREBP-1a に
よって合成される脂質の影響を検討するため、培養液にマウス生体の解析結果
を基に選定した脂肪酸を添加し、腸管オルガノイドの培養を行った。
SREBP-1a 欠損による腸管機能の障害が腸炎の病態に与える影響の検討
WT マウスと KO マウスに 3.0%または 1.5%のデキストラン硫酸ナトリウム
(DSS)を含んだ水と無脂肪食を 5 日間摂取させた後、水道水と無脂肪食の摂

取下で 1 日間飼育し、サンプルを採取し、DSS によって誘導される腸炎の病態
を評価した。



SREBP-1a の腸管における局在の検討
Srebf1a は十二指腸、空腸、直腸に多く存在し、陰窩構成細胞に局在した。
SREBP-1a による脂質合成が空腸内部構造に与える影響の検討
WT マウスに比べて KO マウスでは腸管幹細胞からの吸収上皮細胞への分化、

+5 細胞化から杯細胞への分化が障害され絨毛の長さが減少した。さらに、WT
マウスに比べて KO マウスで腸管幹細胞の自己複製と Transient-amplifying(TA)
細胞の細胞増殖が低下し腸管幹細胞、TA 細胞の数が減少し、陰窩の厚みが減少
した。そのため、WT マウスに比べて KO マウスでは栄養吸収能力が低下し、再
給餌前後での体重増加が抑制され、血中脂質濃度や血糖値が低下した。また、flox
マウスに比べて ISC KO マウスで絨毛の長さや陰窩の厚みの減少、再給餌前後で
の体重増加の抑制が確認された。脂肪酸解析から WT マウスに比べて KO マウ
スでは、空腸の陰窩構成細胞に含まれるパルミトレイン酸とオレイン酸の量が
減少することが示された。オリーブオイルによって食餌からパルミトレイン酸
とオレイン酸を摂取させると、WT マウスと KO マウスの空腸の内部構造に差は
認められず、腸管幹細胞や TA 細胞の機能にも差は認められなかった。また再給
餌前後での体重増加量も WT マウスと KO マウスで同等であった。
腸管幹細胞の機能に重要な SREBP-1a によって合成される脂肪酸種の特定
WT の腸管オルガノイドに比べて KO の腸管オルガノイドは腸管幹細胞の分
化・自己複製機能が低下し、大きさが小さく不完全な腸管様三次元構造体を形
成した。また KO の腸管オルガノイドでは細胞の生存率が低下した。パルミト
レイン酸の培養液への添加で KO の腸管オルガノイドの生存率が WT の腸管オ
ルガノイドと同等まで回復した。オレイン酸の培養液への添加で KO の腸管オ
ルガノイドの大きさが回復し、WT の腸管オルガノイドと同等になった。パルミ
トレイン酸とオレイン酸を同時に培養液に添加すると KO のオルガノイドの生
存率、大きさ共に WT のオルガノイドと同等まで回復した。
SREBP-1a 欠損による腸管機能の障害が腸炎の病態に与える影響の検討
WT マウスに比べて KO マウスは、DSS によって誘導される炎症が悪化した。




パルミトレイン酸の不足はパネート細胞から腸管幹細胞への Wnt 分泌を減少
させ、腸管幹細胞の自己複製能を低下させたと考えられる。オレイン酸は Notch
シグナルに応答した腸管幹細胞の分化に必要な基質となり、オレイン酸の不足
は腸管幹細胞の吸収上皮細胞への分化を障害したと考えられる。またオレイン

酸の不足は TA 細胞の EGFR を介したシグナル伝達を障害し、TA 細胞の細胞増
殖能を低下させることが示唆された。陰窩構成細胞内のパルミトレイン酸、オ
レイン酸の減少は、脂質を原料としたエネルギー生成を低下させ、グルコース
を原料としたエネルギー生成を活性化させた。この細胞内エネルギー状態の変
化が KO マウスの+5 細胞の杯細胞への分化を障害していると考えられる。杯細
胞の減少に伴い腸管バリア機能が低下したため、KO マウスでは DSS 感受性が
高まり、DSS によって誘導される腸炎が悪化したと考えられる。



パルミトレイン酸やオレイン酸は腸管幹細胞や TA 細胞、+5 細胞の機能を制

御するシグナルの直接的な活性化は行わないが、各シグナル伝達において不可
欠な存在であり、シグナル伝達に必要な量の合成を SREBP-1a による制御で賄
っている。また、SREBP-1a によって制御される腸管幹細胞内の脂質エネルギ
ー状態は、腸管陰窩構成細胞の分化運命の決定に関与することが示唆された。
本研究による結果は、細胞内の脂質制御によって腸管幹細胞の機能が管理でき
ることを提示し、これは腸管幹細胞を標的とした生活習慣病や炎症性腸疾患の
新規治療法につながると考える。 ...

全国の大学の
卒論・修論・学位論文

一発検索!

この論文の関連論文を見る