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Molecular mechanisms underlying environmental and epigenetic fruit ripening control in highbush blueberry

LI, TAISHAN 京都大学 DOI:10.14989/doctor.k23526

2021.09.24

概要

ハイブッシュブルーベリー(Vaccinium corymbosum)(以下,HB)は,抗酸化作用を示すポリフェノールを多量に含む高機能性果実として人気が高く,近年世界的に生産量が伸びている.HB生産拡大を阻む要因のひとつが,収穫に労力がかかることである.HBは果房内果粒が不斉一に成熟することから,ブドウのような房取りではなく,果粒ごとに個別収穫されており,このことがコスト増の要因となっている.よって,果実成熟メカニズムの解明とそれに基づく人為成熟促進技術の開発が求められている.HBはノンクライマクテリック型果実に属し,その成熟プロセスには植物ホルモンであるアブシシン酸(ABA)が関与するが,過去に行われた研究ではHB果実に対するABA処理の成熟促進効果は限定的であった.本研究では,紫外線照射(有効波長280-315nm; UV-B)やDNAメチル化阻害剤(5-アザシチジン; 5-AzaC)処理がHBの果実成熟を促進することを見いだし,これらの処理がどのような分子メカニズムにより果実成熟促進効果をもたらすかを明らかにした.

第1章では,収穫前の長期間UV-B照射がHB果実成熟に及ぼす影響を調査した.生物学的に有効な照射量を目安として,3段階の照射強度を設定し,緑色果実段階から収穫まで断続的に照射した.その結果,すべての強度のUV-B照射により果実発達が促進されるとともに,果実着色や糖蓄積が促進された.UV-B照射はアントシアニン生合成律速酵素遺伝子のひとつであるUFGTの発現を増加させた.ベンサミアナタバコ(Nicotiana benthamiana)を用いたルシフェラーゼ一過性発現解析により,MYBA1ならびにMYBC2がUFGTの転写を,それぞれ正ならびに負に制御することを明らかにした.また,MYBPA1がMYBA1を正に制御することを明らかにした.さらに,UV-B照射がアントシアニン蓄積を誘導する分子機構が,緑色果実と成熟果実で異なることを明らかにした.すなわち,緑色果実においては,UV-B照射が光受容体HY5の発現を促進し,その結果MYBPA1の発現上昇とMYBC2の発現低下が引き起こされアントシアニン生合成が増加すると考えられた.一方成熟果実においては,UV-B照射がMYBA1やMYBPA1の発現を促進するとともに,HY5非依存的経路によりMYBC2も発現促進することで,アントシアニン蓄積のバランスを維持することが示された.以上より,収穫前の長期間UV-B照射により,アントシアニン合成を制御するMYB転写因子の発現がステージ特異的に制御されることで着色が促進され,果房内果粒成熟の斉一化が誘導されることを明らかにした.

第2章では,HBの果実成熟におけるDNAメチル化の関与を検証した.緑色前期(SG),緑色後期(G),着色期(P),成熟期(M)の4つの果実ステージにおいて,果皮と果肉からDNAとRNAを抽出し,全ゲノムバイサルファイトシーケンス解析とmRNA-seq解析をおこなった.果実成熟に伴い果肉ではCHGおよびCHHのメチル化レベルが上昇し(hypermethylation),一方果皮ではCHGおよびCHHのメチル化レベルが減少した(hypomethylation).Pステージにおいて,果肉・果皮ともに,RNA依存型DNAメチル化(RdDM)関連遺伝子群の顕著な発現低下がみられた.一方Mステージでは果肉特異的に,RdDM関連遺伝子群の発現が増加した.
このことが, M ステージの果肉におけるhypermethylation と果皮における hypomethylationを誘導すると考えられた.さらにエチレンがRdDM経路に及ぼす影響を調査したところ,エチレンがRdDM関連遺伝子群の発現低下を誘導することが明らかになった.すなわち,HB果実成熟中に引き起こされるエチレン上昇がDNAメチル化の統御を担う可能性が示された.次に, 5-AzaC処理が果実成熟に及ぼす影響を調査した.その結果,Gステージ処理果実において,5-AzaC処理は果実成熟を促進し,果房内果粒成熟が斉一化した.一方,この効果はSGステージ処理ではみられなかった.SGとGステージ間ではABA生合成遺伝子の発現が顕著に異なったことから,ABAの有無が処理効果の違いの原因であると仮定し,SGステージ果実に対して,ABAと5-AzaCの複合処理をおこなった.その結果,果実成熟が顕著に促進された.さらに,複合処理によるアントシアニン蓄積には,MYBA1発現上昇が,糖蓄積にはショ糖輸送体であるSWEET15の発現上昇が関係していることを示した.以上より,DNA脱メチル化は,エチレン刺激によるABA誘導型果実成熟開始のハブ因子として機能するという新たな知見を得た.さらに,DNA脱メチル化処理がHBの果房内果粒成熟の斉一化に有効であることを明らかにした.

第3章では,第2章で示されたABAと5-AzaCの複合処理による果実成熟促進メカニズムについてさらに検討をおこなった.ABA単独処理ではABAによるABAシグナル伝達抑制(ネガティブフィードバック)がみられたが,5-AzaC単独処理では,CHGあるいはCHH型メチル化シトシンの脱メチル化により,ABAシグナル伝達遺伝子群の発現が上昇した.すなわち,ABAと5-AzaCの複合処理は,ABAによるネガティブフィードバックを抑制し,ABAシグナル伝達経路をより活性化させる可能性が推察された.また以下に示すように,ABAとDNA脱メチル化のクロストークが遺伝子発現に及ぼす影響について新たな知見を獲得した.ABAシグナル伝達遺伝子のひとつであるWRKY24にはABA応答配列がプロモーターに存在する. Gステージ果実ではプロモーター領域のメチル化と発現抑制がみられる一方,Mステージ果実ではこの領域の脱メチル化と発現上昇がみられた.これは植物ホルモンとDNAメチル化のクロストークの存在を説明しうるはじめての知見である.以上より,ABAと5-AzaCの複合処理による成熟促進には,MYBA1などの成熟関連遺伝子の発現上昇だけではなく,ABAシグナル伝達経路の活性化によるABAホメオスタシスの変動が関与する可能性が推察された.

以上の通り,本研究により,環境制御ならびにエピジェネティクス制御により HB果実成熟の人為制御が可能であることが示された.また,これらの制御が成熟関連遺伝子群やABAシグナル伝達遺伝子群の発現変動を誘導することで果実成熟が促進されることを明らかにするとともに,果実成熟におけるDNAメチル化の役割について新たな知見が獲得された.本研究により,HB果実の房取り収穫技術の開発に向けた基礎知見が得られた.

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