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大学・研究所にある論文を検索できる 「Therapeutic effect of adipose-derived regenerative cells on bladder function in rats with underactive bladder」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Therapeutic effect of adipose-derived regenerative cells on bladder function in rats with underactive bladder

Mori, Aya 森, 文 名古屋大学

2020.05.14

概要

【緒言】
 高齢化社会を迎えて、男女を問わず排尿困難や尿勢低下、頻尿などの下部尿路症状(LUTS)を主訴に病院・クリニックを受診する患者が増加している。これらを来たす原因として、男性であれば前立腺肥大、女性であれば骨盤臓器脱などによる膀胱出口部の閉塞、尿道抵抗の増加に加え、近年、排尿筋低活動(DU;detrusor underactivity)によるものが注目されている。排尿筋低活動は、排尿筋の収縮力や収縮持続が減少するため、効率よく尿を排出できない膀胱機能障害であり、疫学調査によれば、明らかな神経疾患を有さないLUTS症例の約20-30%でみられるcommon diseaseである。しかし、診断には侵襲的検査である尿流動態検査を必要とするため、実臨床では、正確な診断が困難であり、また現時点では有効な治療法が存在しない。
 近年、再生治療が臓器や組織の欠損や機能障害・不全に対し有用であることが多く報告されており、一部、臨床応用され注目を浴びている。下部尿路機能障害の分野でもトピックであり、我々もこれまで脂肪組織から幹細胞を抽出し、前立腺手術後尿失禁患者(尿道括約筋機能低下症例)に対して傍尿道注入を行うことにより、幹細胞の括約筋への分化ならびに尿失禁の改善に加え、幹細胞注入局所における血流が経時的に増加することを報告している。これらの幹細胞を用いた再生治療はDUに対しても有効であると考えられ、DUに対する有効な治療法が存在しない状況を考えればその検討意義は高い。このような背景から、今回我々はDUの動物モデルを用いて、脂肪幹細胞(ADRC)の膀胱壁内へ注入による効果(①膀胱組織への影響、②膀胱機能への影響)を検討した。

【対象および方法】
 DU動物モデルについては、メスSDラット(200-260g)を用いて、麻酔下に尿道へカテーテルを挿入し、膀胱過伸展(生理食塩水を2.7mL注入)を1週間おきに4回(Day1, 8, 15, 22)行うことで作成した。検討は、control偽手術)群、DU(over-distention)群、ADRC1×105群(over-distentionモデルにADRC[1×105個/mL]をDay15に膀胱壁内に20μℓ注入)、ADRC1×106群(over-distentionモデルにADRC[1×106個/mL]をDay15に膀胱壁内に20μℓ注入)の4群で行った。なおADRCについてはオスF344ratsの腹壁脂肪から採取し、分離、培養、継代したものを、Cellvew Claret(PKH26)で標識した上で、膀胱壁内へ注入した。
 膀胱壁内注入の2週間後(Day28)に膀胱機能検査、膀胱組織学的変化、摘出膀胱収縮弛緩実験を施行し、ADRCの膀胱組織、膀胱機能に与える影響を検討した。

【結果】
 各群、8検体で検討を行った。膀胱機能検査では、DU(over-distention)群で、control群と比較して、有意な排尿間隔の遷延、残尿量の増加、排尿効率の低下(control群:平均97%、DU群:64%)がみられたが、ADRC群では、DU群と比較して、有意な残尿量の低下、排尿効率の改善(ADRC1×105群:85%、ADRC1×106群:93%)がみられた(表1)。
 膀胱組織学的検討として施行したマッソントリクロム染色による組織線維化の検討では、線維化比率がcontrol群では平均4%であったのに対し、DU群では、45%と有意な線維化の進行を認めた。ADRC群では、その線維化比率は、105群で、22%、106群で、30%と、DU群と比較して有意な線維化抑制効果がみられた。また、αSMA、S100免疫染色による検討では、ADRC群でDU群と比較して有意な発現の増加がみられ、Cellvew Claret(PKH26)、αSMA、S100の3重染色では、発現部位が一致していた。摘出膀胱組織を用いた電気刺激、カルバコールによる薬物刺激による収縮弛緩実験では、DU群では、control群と比較して、有意な膀胱収縮力の低下を認めたのに対し、ADRC群では、その収縮力は改善しており、DU群と比較して有意な改善、control群と比較して、ほぼ同等の収縮がみられた。

【考察】
 間葉系幹細胞を用いた再生医療は、下部尿路機能障害の分野でも注目されており、これまで腹圧性尿失禁(尿道括約筋低下)に対する基礎的検討は多く行われている。最近では、腹圧性尿失禁に対する臨床研究も始まり、我々のグループでも世界に先駆けて、前立腺手術後尿失禁患者に対し、脂肪由来幹細胞を傍尿道(尿道括約筋)に注入を行い、幹細胞の括約筋への分化ならびに尿失禁の改善に加え、幹細胞注入局所における血流が経時的に増加することを確認している。一方、DUに対しては、動物モデル作成の不安定さ、臨床における診断の煩雑さなどから、これまであまり検討が行われていなかったが、日常診療におけるDU罹患率の高さや治療需要を考えれば、今回の我々の研究成果は、意義高いものと考えられた。
 今回、膀胱過伸展により作成したDUモデルは、機能的、組織学的の両面において、ばらつきが少なく、恒常的に得られ、また作成も容易であることから、動物モデルとしては最適ではないかと考えられた。また、これらのモデルに対してADRCを投与した群では、有意な膀胱機能の改善(残尿量の低下、排尿効率の改善)がみられ、これは、収縮実験から得られたADRC投与による膀胱収縮力の改善が関与していると考えられた。組織学的検討から線維化の抑制、また平滑筋の存在を示唆するαSMA染色、神経組織の存在を示唆するS100染色による発現部位と、PKH26で標識したADRCの発現部位が一致していたことを考えれば、ADRCの膀胱組織保護作用に加え、平滑筋、神経組織への分化が、膀胱機能の改善につながっていると考えられた。
 今後の課題として、どのようなメカニズムで、注入した幹細胞が平滑筋組織、神経組織に分化していくかを検討する必要がある。これまでの他疾患に対する検討では、ADRC注入により、組織血流の増加、サイトカインや組織成長因子などの分泌が増加するといった報告もあり、DUモデルにおいても今後検討が必要であると考えている。また、投与するADRCの量については、用量依存的に機能が改善したパラメータ(膀胱収縮機能)と、そうでないパラメータ(排尿動態など)があり、膀胱へ注入したADRCの動態(膀胱への定着率など)を含めて、今後の検討課題である。

【結論】
 低活動膀胱モデルに対する脂肪由来幹細胞膀胱壁内注入は、平滑筋への分化を促進し、膀胱線維化の改善を認めた。また機能学的にも排出機能、膀胱収縮力の改善を認めたことから、脂肪由来幹細胞を用いた再生治療は低活動膀胱に対する有効な治療法となる可能性が示唆された。

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