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大学・研究所にある論文を検索できる 「Creation of Octagon-embedded Warped Nanocarbons by Palladium-Catalyzed Annulative Coupling」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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書き出し

Creation of Octagon-embedded Warped Nanocarbons by Palladium-Catalyzed Annulative Coupling

松原, 聡志 名古屋大学

2023.06.29

概要

学位報告4

別紙4
報告番号





















論文題目

Creation of Octagon-embedded Warped Nanocarbons by
Palladium-Catalyzed Annulative Coupling
(パラジウム触媒を用いた環化カップリング反応による含八員環湾曲ナ
ノカーボンの創製)



松原 聡志



論 文 内 容 の 要 旨
ナノメートルサイズの炭素物質群であるナノカーボンは多彩な物性を示し、次世代材
料として注目を集めている。ナノカーボンは曲面の空間的な広がり方に対応して、零次
元(フラーレン)、一次元(カーボンナノチューブ)、二次元(グラフェン)に分類される。さ
らに、このいずれにも分類されないナノカーボンとして八員環を含む三次元周期性カー
ボンがある。1991 年に初めて提唱されて以降、様々な構造をもつ三次元周期性カーボン
が理論家によって提案されてきた。これらの三次元周期性カーボンは自発的な磁性の発
現や太陽光電池への応用が期待される光電子的特性といった破格の物性をもつことが
理論計算により予測された。しかし八員環構造を規則的に組み込んだ三次元周期性カー
ボンは未だ発見、合成されていない物質である。
三次元周期性カーボンには、その三次元構造を生み出すために湾曲した八員環構造が
必要である。ナノカーボンの大部分を構成する平面六員環と比べて高度に湾曲した八員
環の形成は不利とされる。含八員環ナノカーボンの合成法はこれまで 40 年以上にわた
り検討されてきたが、いずれも八員環形成は非効率的な多段階反応に依存していた。さ
らに三次元周期性カーボンに必要な複数の八員環を迅速に構築する手法も存在しなか
った。そこで申請者は三次元ナノカーボンの精密合成を可能とする、八員環構築反応の
開発に取り組んだ。本論文は三章構成である。
第一章では、含八員環ナノカーボンを直接合成できる環化二量化反応について論じて
いる。本反応ではクロロフェナントレン誘導体に対してパラジウム触媒を作用させるこ
とで、C–H 結合の活性化を伴いながら含八員環ナノカーボンを一段階かつ高収率で得る
ことができる。二つの平面分子を八員環構造で連結し湾曲ナノカーボンを合成すること
に成功した。さらに合成したナノカーボンに酸化剤を作用させることで高度な縮環構造
を有する多様なナノカーボンへと誘導できることを見出した。また本反応の機構解明研

学位関係

究の結果から、八員環を形成する鍵となる中間体としてスピロパラダサイクル種の
生成が示唆された。
第二章では、ビフェニレンを用いた環化クロスカップリング反応について論じて
いる。パラジウム触媒の作用によって、四員環構造を有するビフェニレンが高い交
差選択性(クロス選択性)を伴ってクロロフェナントレンとカップリング反応を起
こし、含八員環化合物を与えることを見出した。反応条件において、クロロフェナ
ントレンとビフェニレンがいずれも二量化しうるにもかかわらず、二つの基質が選
択的に交差的に反応する。本反応によって三次元周期性カーボンに必要な複数の八
員環構造を一段階で形成することができる。例えばトリクロロトリフェニレンにビ
フェニレンを作用させることで、三つの八員環構造を有するナノカーボン分子を高
収率かつ一段階で合成することに成功した。この分子はプロペラ上に大きく湾曲し
た D3 対称性の構造をもつことが X 線結晶構造解析によって明らかになった。また
このラセミ混合物から、キラル HPLC によってエナンチオマーを分離し、CD スペ
クトルと理論計算によるシミュレーションの一致からその絶対配置を推定できた。
第三章では量子化学計算を用いた八員環構築反応の機構解明研究について論じ
ている。波動関数計算を利用した反応エネルギーの定量的評価により、第一章およ
び第二章から想定された反応機構の妥当性を示した。環化二量化反応ではパラダサ
イクル中間体に対するクロロフェナントレンの酸化的付加が高温条件で進行し、四
価のパラジウム錯体を与えることを明らかにした。反応性の高い四価のパラジウム
錯体から迅速な C–H 結合の活性化と C–C 結合形成が進行し、八員環構造へと誘導
されることが示された。環化クロスカップリング反応においては一回目の酸化的付
加はクロロフェナントレン、二回目の酸化的付加はビフェニレンでそれぞれ高選択
的に進行することが活性化障壁の評価によって明らかになった。またビフェニレン
から生じる回転自由度の高いフェニレン構造が八員環形成に有利であり高いクロ
ス選択性に寄与することが示された。さらにクロロフェナントレンよりも容易に酸
化的付加を起こすブロモフェナントレンを用いた際の実験結果も量子化学計算に
よって再現することができた。本章で検証されたパラジウム触媒サイクルは限られ
た実験的事実から推測されたものであったが、量子化学計算を適用することでその
合理性が明確に示された。
以上、申請者は新奇含八員環湾曲ナノカーボンの創製を可能とするパラジウム触
媒を用いた八員環構築反応の開発に成功した。三次元周期性カーボンに必要な複数
の八員環を迅速に構築できる本手法は三次元ナノカーボン合成におけるマイルス
トーンとなった。さらに量子化学計算による反応機構の解析も踏まえて本手法を拡
張することで、未踏の三次元周期性カーボン合成へと展開できる可能性がある。破
格の物性をもつ三次元周期性カーボンの応用が社会にもたらす影響は計り知れな
い。そのため本研究は合成化学や反応化学のみならず、材料科学・産業分野に大き
く貢献することが期待される。

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