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書き出し

包括的酸化脂質解析手法の開発および非アルコール性脂肪肝炎モデルマウスへの応用

齋藤, 耕太 SAITO, Kota サイトウ, コウタ 九州大学

2023.03.20

概要

九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository

包括的酸化脂質解析手法の開発および非アルコール
性脂肪肝炎モデルマウスへの応用
齋藤, 耕太

https://hdl.handle.net/2324/6787554
出版情報:Kyushu University, 2022, 博士(創薬科学), 課程博士
バージョン:
権利関係:Public access to the fulltext file is restricted for unavoidable reason (3)

(様式5)




論文題名

:齋藤

耕太

:包括的酸化脂質解析手法の開発および非アルコール性脂肪肝炎モデルマウスへ
の応用





:甲















我々の生体内には様々な脂質分子が存在し、それらは膜の構成成分やエネルギー源として生体
恒常性の維持に重要な役割を果たしている。一方で、脂質は非常に酸化されやすく、生体内の活
性酸素種(ROS)と反応することで、脂質過酸化反応(LPO)が惹起される。本反応は、その進
行にともなって、様々な酸化修飾をうけた酸化脂質を生成・蓄積させる。近年、酸化脂質が炎症
や細胞死の誘導に寄与し、種々の疾患の発症へと関与することが明らかになってきている。この
ことから、生体内にて生じる酸化脂質を解析することは、疾患の発症/進展機序解明に大きく貢献
することが期待される。
ここで、生体内で生じる酸化脂質は、LPO の複雑な反応機序および生体脂質の多様性から、そ
の数と種類は膨大となることが予想される。さらに酸化脂質は、それぞれの酸化修飾構造や脂質
クラスに応じて異なる生理活性を有することが報告されていることから、疾患発症時には、個々
の酸化脂質が異なる機序で病態形成に寄与していることが考えられる。一方で、従来の酸化脂質
解析は、既報の酸化脂質種を標的としたかなり限定的なものであり、疾患発症にともない生成す
る酸化脂質の種類や生理的意義についてはその多くが不明なままであった。以上背景から、疾患
発症にともない産生される多様な酸化脂質を包括的に解析することができれば、病態進展におけ
る LPO 進展機序の解明および病態進行に寄与する酸化脂質の探索が可能になるのではないかと
考えた。そこで、本研究では、生体内にて生じる酸化脂質の包括的解析技術の開発、ならびに疾
患モデル動物への応用を行った。
一章では、序章として上記背景、および目的を述べている。
二章では、生体内酸化脂質の包括的解析手法の開発について述べている。これまでの限定的な
酸化脂質解析の原因のひとつとして、酸化脂質構造情報の不足が挙げられる。それに対して、当
研究室では近年、構造未知の酸化脂質に対する構造解析技術を開発し、リン脂質の一種であるホ
スファチジルコリンから生じる酸化脂質の構造情報を網羅的に獲得した。そこで、本研究では、
得られた酸化脂質構造情報をもとに、種々の脂質クラスに由来する酸化脂質種の推定構造を獲得
し、さらにそれらを応用した生体内酸化脂質の包括的解析技術を確立した。本技術を用い、非ア
ルコール性脂肪肝炎(NASH)モデルマウス肝臓中にて生じる酸化脂質を解析したところ、計 132
種の酸化脂質の構造同定に成功した。構造同定された酸化脂質は、複数の脂質クラスに由来して

おり、かつ新規化合物も含んでいた。つまり本分析手法は、生体内にて生じた、構造未知かつ多
様な酸化脂質種に対する分析を可能としており、従来法の課題を克服したといえる。
三章では、NASH モデルマウスにおける病態関連酸化脂質の探索ならびにその生成機序解明に
ついて述べている。NASH の進展には、LPO およびその反応産物が関与することが分かっている。
一方で、NASH 発症時に、どのような酸化脂質が、いつ・どこで・如何にして産生されるか、そ
の詳細な分子メカニズムは不明であった。したがって、NASH 発症にともなう酸化脂質形成の全
貌を明らかにすることは、本疾患における LPO 進行機構の解明を通じて NASH 治療薬の提案に
繋がると考えた。そこで本研究では、NASH 発病時に生じる酸化脂質の包括的分析を行い、それ
らが生成する時期、箇所、機序について評価を行った。1、3、6 週間コリン欠乏メチオニン添加
高脂肪食を与えた NASH モデルマウスを作製し、病態および酸化脂質形成を評価したところ、
NASH 病態初期段階(1 週モデル)において中性脂質であるトリグリセリド由来の酸化物(oxTG)
が顕著に増加することを明らかとした。このとき、リン脂質由来の酸化物は oxTG よりも後期に
増加したことから、NASH 発症時には、病態進行度に応じて異なる機序での LPO 発生が示唆され
た。さらに、oxTG 形成箇所について検討を行った結果、oxTG は肝細胞中の脂肪滴において発生
した LPO によって産生されることを明らかとした。また、さらなる検討により、脂肪酸 β 酸化の
過剰亢進によって生じたミトコンドリア由来 ROS が、脂肪滴における LPO を誘導していること
を示唆した。以上の研究成果から、NASH 発症時に生じる酸化脂質の包括的解析により、これま
で報告のなかった NASH 病態形成にともなう LPO 進行メカニズムを初めて明らかにした。
本研究を通じて、疾患発症時に生じる酸化脂質を包括的に解析することで、病態進行に寄与す
る LPO の発生時期、箇所および機序について体系的な評価が可能となることが示された。本研究
成果は、種々の酸化ストレス性疾患における LPO 進行機序の解明や新たな病態関連分子/バイオ
マーカー候補分子の探索、LPO 標的治療薬の開発に貢献することが期待される。

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