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Elucidation of 2-oxo-imidazole-containing dipeptides-mediated physiological functions

垣花 優希 大阪府立大学 DOI:info:doi/10.24729/00017394

2021.05.11

概要

【緒言】
イミダゾールジペプチド(IDPs)は、内在性イミダゾール化合物の一つである。IDPs は幅広い脊椎動物の中枢神経系や骨格筋に豊富に存在し、カルノシン、アンセリン、ホモカルノシンなど様々な種類が知られている。IDPs は抗炎症活性や抗糖化活性など多様な機能を持つが、最も注目されている機能の一つとして抗酸化活性が知られている。IDPs の抗酸化活性に関しては、IDPs と活性酸素種(ROS)との反応性や、酸化ストレスが関与する癌、神経変性疾患、糖尿病など様々な疾患に対する IDPs の保護効果など、数多くの報告がなされている。その一方で、IDPs の抗酸化活性は、グルタチオンやアスコルビン酸などの内在性抗酸化物質に比べて極めて低いことが示されており、 IDPs の抗酸化メカニズムは不明な点が多い。

様々な病態において過剰に産生される ROS は、核酸、アミノ酸、脂質といった生体分子を損傷することで、疾患を増悪させることが知られている。これまでに、酸化ストレス関連病態において生じる 8-オキソデオキシグアノシン(8-oxo-dG)のような安定な酸化修飾体は、酸化ストレスマーカーとして同定され、病態との関連性が研究されている。一方で近年、ROS は正常な細胞内においても産生され、その下流で生じる生体分子の酸化修飾体が、二次メッセンジャーとして様々なシグナル伝達に関与することが明らかとなってきた。このように ROS は、酸化ストレスマーカー、二次メッセンジャーなどのレドックス代謝物の産生を介して、生理・病理機能を制御している。

先行研究により、イミダゾール基の 2 位が酸化された修飾体(酸化イミダゾール基)の試験管内合成が明らかにされており、その構造が酸化ストレスマーカーである 8-oxo-dG と類似していることから、生体内においてもイミダゾール基が ROS と反応し、酸化イミダゾール基が産生される可能性が示唆されてきたが、これまでに、酸化イミダゾール基の生体内産生は確認されていない。

以上から、IDPs の抗酸化メカニズムには、ROS と反応して産生する IDPs 誘導体が関与しているのではないかと考えた。しかし、生体内における IDPs 誘導体の存在様式や産生メカニズム、生理・病理機能は解明されていない。本研究では、新規 IDPs 誘導体である酸化 IDPs の生体内産生および生理機能を明らかにすることを目的とし、以下の研究を行った。酸化 IDPs の定量解析や産生メカニズム解析を行い、さらに酸化 IDPs の抗酸化活性や細胞保護効果を検討した(第 1 章)。続いて、 IDPs の抗酸化活性における酸化 IDPs の役割を解析した(第 2 章)。最後に、IDPs の一つであるホモアンセリンおよび 2-オキソホモアンセリンの定量解析を行った(第 3 章)。

第 1 章 酸化 IDPs の生体内産生および生理機能解析
【目的】
酸化 IDPs の生体内産生を調べる上で定量解析が必要不可欠であるが、市販の酸化 IDPs 標品はなく測定方法も確立されていない。本章では、高感度定量法を確立し、生体内酸化 IDPs の存在を明らかにすることを目的とした。加えて、酸化 IDPs の産生メカニズムや生理機能の解明を試みた。

【方法・結果・考察】
測定方法の確立
タンデム型質量分析装置(LC-MS/MS)を用いた多重反応モニタリング法(MRM 法)と、安定同位体希釈法による酸化 IDPs の高感度な網羅的絶対定量法を確立した。既報に基づき酸化 IDPs(安定同位体標識体を含む)を調製し、MRM 法の最適条件を決定した。その結果、定量下限が 100 fmolという極めて高感度な定量法を確立した。

定量解析
C57BL/6J マウス(10 週齢, 雄)の組織を用いた解析から、酸化 IDPs の生体内産生を世界に先駆けて発見した。2-オキソカルノシンは脳、腎臓、筋肉で検出された。また、2-オキソアンセリンは測定した組織全てで検出され、2-オキソホモカルノシンは脳でのみ検出された。

酸化ストレスモデルマウスを用いた動態解析
リポ多糖(LPS)を用いて酸化ストレス病態モデルである敗血症関連脳症モデルマウスを作製し、酸化ストレス下における酸化 IDPs の脳内生成動態の解析を行った。その結果、酸化 IDPs が LPS 投与後 8 時間で増加しており、動物個体内で酸化ストレスに依存して酸化 IDPs が増加することを明らかにした。

酸化 IDPs 産生に及ぼす ROS の影響
カルノシン合成酵素を過剰発現させたヒト神経芽細胞腫(SH-SY5Y 細胞)を作製し、2-オキソカルノシン産生及び ROS 産生の関係を調べた。過酸化水素や rotenone 処理により細胞内の 2-オキソカルノシンが増加したが、膜透過性カタラーゼを前処理することで 2-オキソカルノシン産生が抑制された。以上から、2-オキソカルノシン産生に ROS が関与していることが強く示唆された。

産生メカニズム解析:酸素原子の由来
酸化反応溶液中の分子状酸素または水を安定同位体標識体に置換した系で 2-オキソカルノシンの in vitro 合成を行い、LC-MS/MS で解析した。反応溶液中の酸素を安定同位体標識酸素に置換すると、安定同位体標識酸素が付加した 2-オキソカルノシンが産生したが、安定同位体酸素を含む水への置換では、産生されなかった。この結果から、2-オキソカルノシンに付加された酸素原子は分子状酸素由来であることがわかった。

産生メカニズム解析:反応中間体の検出
2-オキソカルノシンの in vitro 合成系にラジカル捕捉剤である 4-amino-TEMPO を加え、LC-MS/MSで解析した。その結果、4-amino-TEMPO 存在下でのみ m/z 399 のピークが検出された。プロダクトイオン解析から、カルノシンに 4-amino-TEMPO が付加した 4-amino-TEMPO-カルノシンの生成が確認され、酸化反応はイミダゾール基のラジカル化を介して起こることが示唆された。

抗酸化活性測定、ラジカル剤との反応性
ラジカル剤である 2,2-diphenyl-1-picrylhydrazyl (DPPH) を用いて抗酸化活性を測定し、Trolox 等価活性(TEAC)で評価した。その結果、驚くべきことに 2-オキソカルノシンの活性はカルノシンと比べはるかに高い活性を示した。生体内の主要な抗酸化物質であるアスコルビン酸やグルタチオンと比較しても同等以上の活性を示した。また、LC-MS/MS を用いた解析より、反応溶液中の 2-オキソカルノシン量が DPPH 濃度依存的に減少していたことから、2-オキソカルノシンが DPPH と反応し、構造の変化が起きていることが示唆された。

細胞保護効果
SH-SY5Y 細胞を用いて、酸化ストレス誘発剤である rotenone 誘導性の細胞死に対するカルノシンおよび 2-オキソカルノシンの細胞保護効果を調べた。その結果、2-オキソカルノシン前処理群において、rotenone 誘導性細胞死に対して有意な細胞保護効果が認められたが、カルノシン前処理群では認められなかった。以上より、カルノシンの細胞保護効果への 2-オキソカルノシンの関与が示唆された。

第 2 章 IDPs の抗酸化活性における酸化 IDPs の役割
【目的】
第 1 章で、2-オキソカルノシンが高い抗酸化活性をもち、酸化ストレスに対しても高い細胞保護効果があったことから、今までに報告されている IDPs の抗酸化活性には酸化 IDPs が関与していることが示唆された。本章では、IDPs の抗酸化活性における酸化 IDPs の役割を調べることを目的とし、in vitro 実験から解明を試みた。

【方法・結果・考察】
市販 IDPs 標品中の酸化 IDPs 含有量と抗酸化活性の相関
市販カルノシン標品を用いて抗酸化活性を調べた結果、メーカー間で抗酸化活性が大きく異なることがわかった。高速液体クロマトグラフィー、LC-MS/MS を用いた解析から、標品中に 2-オキソカルノシンがわずかに混入していることが明らかとなった。興味深いことに 2-オキソカルノシンの混入量と抗酸化活性に相関が見られた。そこで、2-オキソカルノシンを除去したカルノシン標準品を調製し、同様に抗酸化活性を測定した。その結果、2-オキソカルノシンを除去することで抗酸化活性も減少することが明らかとなった。以上より、カルノシンの抗酸化活性には 2-オキソカルノシンが大きく関与していると考えられる。

第 3 章 ホモアンセリンおよび 2-オキソホモアンセリンの生体内産生
【目的】
これまでに IDPs の一つであるホモアンセリンの研究はほとんど進んでおらず、生体内の組織分布は不明である。また、第 1 章で、複数の酸化 IDPs の生体内産生が示されたことから、ホモアンセリンの酸化体(2-オキソホモアンセリン)の生体内産生も示唆されるが、その生体内産生に関する知見はない。そこで本章では、ホモアンセリンおよび 2-オキソホモアンセリンの定量方法を確立し、生体内産生および組織分布、加えて加齢に伴う変化を解析した。

【方法・結果・考察】
測定方法の確立
第 1 章と同様の方法で調製し MRM 法の最適条件を決定した。その結果、定量下限がホモアンセリン、2-オキソホモアンセリンそれぞれ 50 fmol、10 fmol という極めて高感度な定量法を確立した。

定量解析
C57BL/6J マウス(10 週齢, 雄)の組織を用いて解析したところ、ホモアンセリンは脳に多く、肺、心臓、脾臓、筋肉に存在し、2-オキソホモアンセリンは脳に存在することを発見した。また、若齢期の脳内においてホモアンセリンが劇的に増加しており、神経発生などに影響を与えている可能性が示唆された。

【総括】
マウスを用いた解析から、複数の酸化 IDPs(2-オキソカルノシン、2-オキソアンセリン、2-オキソホモカルノシン、2-オキソホモアンセリン)の生体内産生を示した。また、酸化 IDPs は酸化ストレスに依存して増加することが明らかとなり、細胞実験の結果から酸化 IDPs の産生には ROS が関与していることが強く示唆された。酸化 IDPs の機能解析により、酸化 IDPs には高い抗酸化活性があり、前駆体の IDPs と比べ高い細胞保護効果を持っていたことから、酸化 IDPs は単なる酸化ストレスマーカーではなく機能性分子であることが示された。さらに、市販 IDPs 標品を用いた解析から、これまでに報告されている IDPs の抗酸化活性は、混入している酸化 IDPs が大きく関与していると考えられる。本研究は、ROS が関与する疾患の予防・治療法開発への貢献とともに IDPs 研究分野の飛躍的な発展が期待される。

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