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Bullous Pemphigoid and Dipeptidyl Peptidase 4 Inhibitors: A Disproportionality Analysis Based on the Japanese Adverse Drug Event Report Database

新井 正法 横浜市立大学

2022.03.25

概要

1. 序論
DPP-4 阻害薬は糖尿病治療に用いられる経口血糖降下薬であり,食事摂取により惹起されインスリン分泌促進等を介して血糖低下を引き起こすインクレチンの分解を担う DPP-4 のペプチダーゼ活性を阻害することによりその血糖低下を引き起こす.DPP-4 はそれ以外に免疫を担当するT 細胞表面のマーカーである CD26 と相同であり,薬剤の開発当初は免疫に影響を及ぼす懸念も指摘されていた.しかし,臨床試験などでは明らかな免疫関連の有害事象リスクの増大は見られず,本邦では 2009 年のシタグリプチン発売を皮切りに 2015年までに 9 種の成分が上市に至った.その後市場で大きなシェアを獲得し,低血糖リスクの少ない比較的安全な経口血糖降下薬としての地位を確立してきている.一方で,多くの患者に使用されるにつれ,いくつかの症例報告やヨーロッパにおける薬剤副作用データベースの 2 つの解析で,稀な皮膚疾患である水疱性類天疱瘡(Bullous Pemphigoid; BP)の報告がなされた(Pasmatzi et al., 2011, Bene et al., 2016, Garcia et al., 2016).しかしその確たる因果関係やその発症機序,クラスエフェクトか薬剤特異的な現象であるのかどう か,欧米人以外でもリスク上昇があるのかなどに関して不明な点も多くある.本研究は,我が国における副作用データベースである Japanese adverse event report database(JADER database)を使用し,主に日本人における DPP-4 阻害薬によるBP リスク上昇に関して明らかにし,BP が DPP-4 阻害薬に共通した副作用であるか,そうであればさらにそのリスクを高める因子は何であるかを探索する目的で行った.

2. 研究材料と方法
2017 年 6 月時点で医薬品医療機器総合機構(PMDA)のホームページ上(http://www.pmda.go.jp)で公開されていた JADER database を対象に解析をおこなった.薬剤副作用データベース内でリスク評価に用いることが可能とRothman et al. (2004)が報告している報告オッズ比 (Reporting Odds Ratio; ROR) を類天疱瘡に関し算出した.対象薬剤としてはDPP-4 阻害薬として 9 種の DPP4 阻害薬と DPP4 阻害薬全体,その他の血糖降下薬として 23 種の経口血糖降下薬とそれらが属する 7 種のクラスおよびインスリン製剤,Stavropoulos, et al (2014)が報告したリスク薬を参考に 54 種のリスク薬剤とネガティブコントロールとしてアセトアミノフェンを解析対象とした.また,DPP-4 阻害 薬,DPP-4 阻害薬以外の血糖降下薬,既報のリスク薬それぞれに関して互いに併用している例を除外しての解析も行った.性別,年齢の影響も解析を行った.


3. 結果
JADER database 内には 454027 個人の有害事象報告登録があり,546 の BP 報告が存在した.BP 発症に関する ROR は,アログリプチン,アナグリプチン,シタグリプチン,トレラグリプチン,サキサグリプチン,リナグリプチン,オマリグリプチン,テネリグリプチン,ビルダグリプチン,DPP-4 阻害薬全体でそれぞれ 8.0 (4.9- 13.2), 10.8 (3.5- 34.0), 12.6(9.9- 16.1), 13.8 (3.4- 55.9), 15.9 (5.9- 42.8), 29.0 (21.4- 39.2), 43.8 (5.9-327.7), 58.5 (42.7- 80.1) ,105.3 (88.5- 125.3),87.6(72.6- 105.6)と全て有意であった.2 型糖尿病の治療領域特異的 ROR (ROR by therapeutic area; ROR-TA)を算出したところ,有意なROR-TA を持つものはリナグリプチン 2.67 (1.96- 3.64); テネリグリプチン 5.52 (4.01- 7.60); ビルダグリプチン 12.09(9.88– 14.79); DPP-4 阻害薬 69.49 (34.50– 139.99)であった. DPP-4 阻害薬使用は男性の方が女性より多かった(男性, 全 222,567 人中 8131 人; 女性, 全 215,460 人中 4,911 人,χ2 = 715.4; P = 2.2e-16).DPP-4 阻害薬使用者におけるBP 報告および非使用者における BP 報告に分けて解析すると男女で差がなかった(DPP-4 阻害薬使用者男性, 8,131 人中 238 人, 女性,4,911 人中 147 人, χ2 = 0.05, P = 0.83; DPP-4 阻害薬非使用者男性 214,436 人中 71 人,女性 210,549 人中 76 人, χ2 = 0.27, P = 0.60). 年代別に解析すると,大多数のDPP-4 阻害薬使用者における BP 症例は 60 代以上であり,50 代以下は 385 人中 22 人であった.

4. 考察
本研究は,本研究と同様に薬剤副作用データベースを解析した前述の 2 つの既報と比べて3-4 倍のBP 報告が含まれており,規模の面で信頼性の高い研究となった.また 9 種とい うかなり多数のDPP-4 阻害薬に関して網羅的に併用薬の影響も加味して解析を行ったという特徴があった.今回の結果から,全ての DPP-4 阻害薬で有意なROR を認め,BP が特定の DPP-4 阻害薬により惹起されるものというよりは DPP-4 阻害薬全体としてのクラスエフェクトである可能性が強く示唆された.また,既報においてはメトホルミン塩酸塩の併用による影響も示唆されていたが,本研究においてはメトホルミンを含めたその他のクラスの血糖降下薬を併用していなくともリスク上昇することが示唆され,DPP-4 阻害薬単剤でBP 発症のリスクとなり得ることを示した.既報と対照可能なビルダグリプチン,シタグリプチンなどとROR 値は大きく異ならなかったことから,欧州における DPP-4 阻害薬によるBP 誘発性と日本におけるそれが大きく異ならないであろうと思われ,このことから間接的にDPP-4 阻害薬のBP 誘発能が主に人種非依存的な経路を介して発揮されていることが推測された.また,一方で,ROR-TA において DPP-4 阻害薬の間に差異を認めたことから,その BP 発症リスクに関しては薬剤間にある程度の差異があり得ることも示され,その機序に関してはさらなる研究が必要と考えられた.また,既報では性差や年齢に関する考察はなかったが,今回の結果から,DPP-4 阻害薬誘発性のBP に関しては男女問わず注意が必要であるが,特に年齢に関しては高齢者において注意が必要であることが示唆された.

参考文献

1. Pasmatzi E, Monastirli A, Habeos J, Georgiou S, Tsambaos D. Dipeptidyl peptidase-4 inhibitors cause bullous pemphigoid in diabetic patients: report of two cases. Diabetes Care 2011;34: e133

2. Ben´ e J, Moulis G, Bennani I, et al.; French ´ Association of Regional PharmacoVigilance Cen- tres. Bullous pemphigoid and dipeptidyl pepti- dase IV inhibitors: a case-noncase study in the French pharmacovigilance database. Br J Der- matol 2016;175:296–301

3. Garc´ıa M, Aranburu MA, Palacios-Zabalza I, Lertxundi U, Aguirre C. Dipeptidyl peptidase-IV inhibitors induced bullous pemphigoid: a case report and analysis of cases reported in the European pharmacovigilance database. J Clin Pharm Ther 2016;41:368–370

4. Rothman KJ, Lanes S, Sacks ST. The reporting odds ratio and its advantages over the propor- tional reporting ratio. Pharmacoepidemiol Drug Saf 2004;13:519–523

5. Stavropoulos PG, Soura E, Antoniou C. Drug- induced pemphigoid: a review of the literature. J Eur Acad Dermatol Venereol 2014;28:1133–1140

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