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大学・研究所にある論文を検索できる 「Molecular mechanism of stress induced cellular reprograming」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Molecular mechanism of stress induced cellular reprograming

コールマン ダンカン ピーター 東京大学 DOI:10.15083/0002006246

2023.03.24

概要

論文審査の結果の要旨
氏名 コールマン ダンカン ピーター

本論文は 5 章からなる。第 1 章は序論、第 2 章は材料と方法、第 5 章は考察である。
研究内容は大きく 2 つに分けられ、第 3 章と第 4 章に記述されている。
第 1 章では、研究の背景と目的が述べられている。まず植物の細胞リプログラミン
グおよび再生の様々な経路を、植物ホルモンによって誘導される経路と傷害によって
誘導される経路を中心に整理し、
それぞれに関わる分子ネットワークを概説している。
また、傷害やその他のストレスによる細胞リプログラミング・再生に関し、代表的な
事例を主要制御因子とともに紹介している。次に高温応答と傷害応答との係わりにつ
いて、傷害が高温応答経路を活性化することなど、これまでの知見をまとめた上で、
HSFA1 などの高温応答制御因子が細胞リプログラミングに関与する可能性や、HSFA1
活性化機構における翻訳後制御の重要性を指摘している。さらに翻訳後制御の一つと
してタンパク質の SUMO 化を取り上げ、発生現象やストレス応答における SUMO 化
の意義を論じている。最後にこれらを踏まえ、HSFA1 と SUMO 化に着目して、スト
レス誘導性細胞リプログラミングの新しい制御系を明らかにする、という本研究の目
的を述べている。
第 2 章では、研究に用いた植物材料と各種解析の方法が詳述されている。
第 3 章では、シロイヌナズナのシュート再生を実験系として、高温応答経路で転写
制御の中核を担う HSFA1 が細胞リプログラミングに果たす役割を解析した研究が記
述されている。シロイヌナズナの胚軸断片を、合成オーキシンの 2,4-D を含むカルス
誘導培地(CIM)で培養した後、サイトカイニンを多く含むシュート誘導培地(SIM)
に移植すると、シュート再生が起きる。本章ではまず、この培養系を用いて、HSFA1
遺伝子の多重機能欠損変異体 hsfa1abd や恒常的活性化型 HSFA1 を発現する
35S::HSFA1d1 株からシュート再生を誘導する実験を行い、hsfa1abd ではシュート再
生が抑えられ、35S::HSFA1d1 ではシュート再生が昂進したことなどから、HSFA1 が
シュート再生を正に制御することを明らかにしている。続いて 35S::HSFA1d1 のトラ
ンスクリプトーム解析を行って、高温ストレス応答の強制発動が CIM 培養中のカルス
形成や多分化能の獲得に関わるとされる遺伝子の発現にはあまり影響せず、胚軸切断
直後のストレス応答関連遺伝子の発現や、SIM 移植後のシュート頂分裂組織制御因子

1

の発現に強く影響することを示している。
第 4 章では、SUMO 化によるタンパク質修飾と細胞リプログラミングの関係および
HSFA1 の SUMO 化に関する解析が記述されている。SUMO 化酵素遺伝子の機能欠損
変異 siz1 がシロイヌナズナのシュート再生を昂進すること、傷害誘導性の細胞リプロ
グラミングを仲介する転写因子 WIND1 の胚軸切断直後の発現を増大させることを見
出し、WIND1 の優性抑圧型 WIND1-SRDX の導入が siz1 によるシュート再生昂進を抑
えたことと合わせて、SUMO 化の低下が WIND1 を介してシュート再生を高めると結
論している。また、siz1 のトランスクリプトーム解析により、SUMO 化の低下が
35S::HSFA1d1 で高温ストレス応答を発動させた場合と同様に、カルス形成・多分化
能関連遺伝子にはあまり影響せずに、ストレス応答関連遺伝子やシュート頂分裂組織
制御因子の発現に強く影響することを示している。さらに免疫沈降等を用いた解析に
より、
高温に曝露した植物で実際に HSFA1 の SUMO 化が起きることを確認している。
第 5 章では、総合的な考察と結論、今後の展望が述べられている。とくにシュート
再生に先立つ傷害から細胞リプログラミングまでの過程については、結果全体の包括
的な論考に基づいて、傷害による HSFA1 の活性化が WIND1 を介して細胞リプログラ
ミングを促し、一方で SIZ1 による HSFA1 の SUMO 化はこの経路を抑制的に制御して
いる、という全く新しい枠組みを提示している。
研究全体を通して得られた成果は多大であり、植物の細胞リプログラミングとシュ
ート再生の分子機構、またストレス応答の分子機構に関し、重要な新知見を提供して
いる。本論文は、これらの成果を正確な図表と明快な英文で記述している。結果の考
察では、丁寧な論考により合理的な結論が導かれている。また、当該分野の文献は、
不足なく適切に引用されている。

なお、本論文に記載された研究は、河村彩子、池内桃子、David Favero、Alice Lambolez、
Bart Rymen、岩瀨哲、鈴木孝征、杉本慶子の各氏との共同研究であるが、論文提出者
が主体となって実験・解析および論証を行ったもので、論文提出者の寄与が十分であ
ると判断する。
したがって、博士(理学)の学位を授与できると認める。

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