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Prediabetes is associated with proteinuria development but not with glomerular filtration rate decline: A longitudinal observational study

古川, 麻里子 名古屋大学

2022.01.27

概要

【緒言】
 慢性腎臓病(CKD)は、末期腎不全、心血管疾患、死亡のリスクであり、その予防は重要である。糖尿病がCKDのリスクとなることは広く知られているが、糖尿病診断時に既にアルブミン尿の存在を認める報告もあり、糖尿病の前段階である境界型糖尿病の時点で既に腎機能障害が始まっている可能性がある。しかし、境界型糖尿病とCKDの関連、特にCKDをアルブミン尿、糸球体濾過量(GFR)とに分けて、それぞれに対する関連については未だ明らかではない。本研究では、日本人間ドック学会大規模データベースを活用し、CKDを蛋白尿の出現と推算糸球体濾過量(eGFR)の低下に分けて、それぞれに対する境界型糖尿病の影響を検討した。

【対象および方法】
 日本人間ドック学会大規模データベースを後ろ向きに検討した。対象は、日本人間ドック学会機能評価認定施設にて2014年に健診を受け、CKDを認めない(尿蛋白陰性または±かつ、eGFR≥60ml/min/1.73m2)者で、2年後の2016年にも健診を受け、腎機能のデータ(尿蛋白、eGFR)を有する例とした。ベースライン(2014年)の空腹時血糖値と血糖降下薬の服薬有無により、対象者を正常血糖(100mg/dl未満かつ服薬なし)、境界型糖尿病(100-125mg/dlかつ服薬なし)、糖尿病(126mg/dl以上または服薬あり)に分類した。ベースラインの耐糖能の状態(正常血糖、境界型糖尿病、糖尿病)と、2年後の蛋白尿の出現(尿蛋白1+以上)、2年後のeGFRの低下(eGFR<60ml/min/1.73m2)との関連について、それぞれ多変量ロジスティック回帰分析を用いて検討した。多変量ロジスティック回帰分析は強制投入法により行った。調整変数はCKDガイドライン、既報を参考にして、ベースライン時の性、年齢、BMI、eGFR、高血圧有無、脂質異常症有無、喫煙有無、心疾患既往、脳卒中既往とした。また、上述の空腹時血糖値による耐糖能分類に加えて、HbA1c≥6.5%の対象者を糖尿病と分類した場合も同様に、多変量ロジスティック回帰分析を行った。

【結果】
 2014年に日本人間ドック学会機能評価認定施設にて健診を受けた505,873例のうち、CKDを認めなかったのは412,391例であり、2年後の腎機能データを有していた405,487例を対象者として分析した(Fig.1)。2年後に、対象者のうち378,799例は腎機能を維持しており、7,037例は蛋白尿の出現(尿蛋白+以上)、19,015例はeGFRの低下(eGFR<60ml/min/1.73m2)、636例は蛋白尿の出現かつeGFRの低下を認めた(Fig.1)。対象者のうち正常血糖は265,708例(65.5%)、境界型糖尿病は116,951例(28.8%)、糖尿病は22,828例(5.6%)であった(Table.1)。2年後に蛋白尿の出現を呈した割合は、正常血糖1.5%、境界型糖尿病1.9%、糖尿病3.8%であり、2年後にeGFRの低下を呈した割合は、正常血糖4.2%、境界型糖尿病5.6%、糖尿病5.7%であった(Table.2)。
 2年後の蛋白尿の出現を従属変数とした多変量ロジスティック回帰分析の結果、ベースラインでの境界型糖尿病(vs.正常血糖)の存在は、蛋白尿の出現に独立して関連があることが示された(OR, 1.233; 95% CI, 1.170–1.301)(Table.3)。同様に2年後のeGFRの低下を従属変数とした多変量ロジスティック回帰分析を行ったが、ベースラインでの境界型糖尿病(vs.正常血糖)の存在とeGFRの低下との関連は示されなかった(OR, 0.981; 95% CI, 0.947–1.017)(Table.4)。また、2年後の蛋白尿の出現またはeGFRの低下いずれかを発症することを従属変数とした多変量ロジスティック回帰分析では関連があることが示された(OR, 1.036; 95% CI, 1.006–1.067)(Table.5)。
 また、空腹時血糖値のみの耐糖能分類に加えてHbA1c≥6.5%の対象者を糖尿病と分類した場合も同様に多変量ロジスティック回帰分析を行った。その結果、ベースラインでの境界型糖尿病(vs.正常血糖)の存在は、蛋白尿の出現には独立して関連があることが示されたが(OR, 1.220; 95% CI, 1.156–1.287)、eGFRの低下との関連は示されなかった(OR, 0.983; 95% CI, 0.948–1.019)。

【考察】
 大規模データベースを活用した約40万人の一般住民の分析により、境界型糖尿病は2年後の蛋白尿の出現単独と関連があるが、eGFRの低下単独とは関連があるとはいえず、腎機能悪化を「蛋白尿の出現またはeGFRの低下いずれか」と定義した場合は、関連があるということが示された。これらの結果は、既報のメタアナリシスにて、境界型糖尿病とCKDは関連があるとされている一方、CKDをeGFRの低下単独で判断している大多数の既報では、関連を認めなかったという結論と合致しており、本研究は、境界型糖尿病と蛋白尿の出現単独は関連があるということを、大規模データを用いて明確に示したといえる。
 糖尿病の前段階である境界型糖尿病の時点からCKDのリスクは存在し、特に「蛋白尿の出現」が臨床的指標になる可能性が示された。臨床現場において、境界型糖尿病をCKDのリスクがある集団として、積極的に診断を行い、定期的な腎機能評価・治療介入を行っていく必要があると考えられる。

【結語】
 一般住民において、蛋白尿の出現とeGFRの低下それぞれ単独で検討することにより、境界型糖尿病が蛋白尿の出現に対し影響を及ぼすことが明らかとなった。境界型糖尿病において、蛋白尿の出現は早期の腎障害を示す臨床的指標であることが示唆される。

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