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Early volume loss of skeletal muscle after esophagectomy : a risk for late-onset postoperative pneumonia

西村, 廣大 名古屋大学

2022.12.22

概要

【緒言】
食道癌は世界で6番目に関連死の多い癌であり、化学療法や放射線治療が比較的奏功するとはいえ、手術治療が主となる。我が国における食道癌手術は3領域郭清を伴う食道亜全摘術が主流である。しかし食道癌術後は呼吸器関連合併症が多く、特に術後肺炎は10~24%にみられ、致死的になりうる。食道癌術後肺炎のリスク因子は肥満、ブリンクマン指数高値、低肺機能、開胸手術、長時間手術などが報告されているものの、いずれも術後早期に発症した肺炎early-onset post operative pneumonia(EOPP)を対象としている。一方、退院後のフォロー期間で遅発性に発症する食道癌術後肺炎late onset post operative pneumonia (LOPP)も多いが、これに関するデータは乏しい。また近年、消化器外科手術の周術期における骨格筋量の減少が合併症に関連するとの報告が散見される。食道癌でもEOPP発症との関連が示唆されているが、LOPPとの関連は明らかでない。よって本研究では、食道癌術後LOPPの発症率およびリスク因子の解析をおこない、術後の骨格筋量減少との関連性を調べた。

【対象および方法】
2006年1月~2016年12月に当院で施行した食道癌に対する食道切除術238例をretrospectiveに検討した。臨床病期の検討はTNM分類第7版を用いた。肺炎発症の定義は胸部X線またはCT検査で肺炎像を認めるものとした。LOPPは術後3か月以降に発症した遅発性の術後肺炎、EOPPは手術入院中に発症した早期の術後肺炎と定義した。LOPPの重症度をGradeⅠ(治療なし)、GradeⅡ(外来治療)、GradeⅢ(入院治療)、GradeⅣ(死亡)とそれぞれ定義し、GradeⅢ以上の肺炎を臨床的に意義のあるclinically relevant-LOPP(CR-LOPP)とした。

骨格筋量の指標はCT水平断の臍レベルにおいてSYNAPSEVINCENTを使用して算出した両側腸腰筋断面積の合計値total psoas area(TPA)を用いた。TPAを術前と術後3か月のCTで各々測定し、術後のTPA減少率を求めた。またそれぞれのTPAを用いて男女別に体表面積で補正した値(補正TPA)の下位1/3をサルコペニア群とした。

LOPPを複数回発症した場合、その重症度は記録した重症度の最も高いGradeとし、累積発症率は初回のイベントを用いてカプランマイヤー法で算出した。リスク因子の検討は術前因子11項目、術中因子8項目、術後因子11項目でそれぞれCR-LOPPを対象として単変量解析をおこなった。単変量解析でP<0.05と有意差があった因子を用いて多変量解析をおこなった。連続変数のカットオフ値はROC曲線を作成して求めた。

【結果】
238例中63例を除外し、175例が本研究の対象となった(Fig.1)。男女比は152:23、年齢中央値は66歳、BMIの中央値は21kg/m2であった。胸腔鏡下手術が77例(44%)、3領域郭清が136例(78%)、胃管再建が143例(82%)に施行された。手術時間と出血量の中央値はそれぞれ576分、756mLであった。

術前における補正TPAの中央値は男性711mm2/m2、女性518mm2/m2であった。男性では補正TPA<637mm2/m2、女性では補正TPA<449mm2/m2が各々の術前サルコペニア群となった。また術後3か月における補正TPAの中央値は男性660mm2/m2、女性477mm2/m2であった。男性では補正TPA<597mm2/m2、女性では補正TPA<441mm2/m2の症例が各々の術後サルコペニア群となった。TPA減少率の中央値は4.06%であった。

観察期間中央値は45か月であった。175例中46例(26.3%)がLOPPを発症した。26例は単発で20例は複数回(2~5回)発症していた。重症度はGradeⅠ:11例(6.3%)、GradeⅡ:6例(3.4%)、GradeⅢ:25例(14.3%)、GradeⅣ:4例(2.3%)であった。よってCRLOPPは29例(16.6%)にみられ、このうち4例が死亡しているためCR-LOPPの死亡率は13.8%であった。LOPPの累積発症率は3年で21.6%、5年で32.3%であり、CR-LOPPでは、各々15.6%、22.4%であった(Fig.2)。

CR-LOPPにおけるリスク因子の単変量解析結果をTable1-3に示した。術前因子では臨床病期≧Ⅲ(P=0.005)、術前Prognostic Nutritional Index(PNI)<45(P=0.035)がCRLOPP発症と有意に関連していた。術中因子はいずれも関連がみられなかった。術後因子では不整脈(P=0.014)、術後在院期間≧40日(P=0.003)、TPA減少率>5%(P<0.001)が有意に関連していた。一方、術前および術後サルコペニアはともにCR-LOPP発症との関連はみられなかった。

これらの因子を用いて施行した多変量解析の結果をTable4に示した。臨床病期≧Ⅲ(HR3.01、P=0.004)、術後在院期間≧40日(HR2.51、P=0.015)、TPA減少率>5%(HR9.93、P<0.001)がCR-LOPPの独立危険因子となった。

【考察】
食道癌手術は高侵襲で術後合併症率も高く、肺炎はその代表的な合併症である。これまでの食道癌術後肺炎に関するリスク因子の報告はEOPPに関するものがほとんどであり、それらは本研究におけるCR-LOPPのリスク因子とは異なっていた。また本研究においてEOPP発症はCR-LOPP発症のリスク因子とはならなかった。よってEOPPとLOPPでは発症機序が異なると思われた。LOPPではEOPPに関与する手術侵襲による免疫低下、疼痛に伴う喀痰排出不全、嚥下訓練不足などの要因が無く、術後の低栄養状態が持続することで急速に骨格筋量が低下し、免疫や呼吸機能が低下して発症するものと推察された。

術前サルコペニアがEOPPのリスク因子とする報告もあったが、本研究において術前および術後のサルコペニアはともにCR-LOPPのリスク因子とはならなかった。しかし、術後3か月の筋肉量減少がCR-LOPPの独立危険因子になったことは、非常に興味深い結果であった。この結果からも食道癌手術の高い侵襲による術後の急速な骨格筋量減少が、喀痰排出能を低下させてCR-LOPP発症に関与している可能性があると考えられた。

術後のTPA減少に加えて臨床病期、術後在院期間がCR-LOPP発症の独立危険因子となった。臨床病期に関しては、進行食道癌において術後の呼吸器関連合併症が増加するという報告があり、術前経口摂取が不十分となり低栄養状態を引き起こすことが要因と考察されている。本研究において術前PNI低値が、単変量解析でCR-LOPP発症のリスク因子となったことからも、術前の低栄養状態は術後肺炎を惹起しうると考えられる。多変量解析において個々の術後合併症は、CR-LOPP発症の独立危険因子とならなかったが、術後在院期間の延長は独立危険因子となった。それぞれの合併症が積み重なることによって入院期間が延長し、栄養状態の低下、骨格筋量の低下を引き起こすと考えられる。そしてこれら3つの独立危険因子のうちTPA減少のみが、運動療法と栄養補助によって改善できると思われるため、今後は周術期の積極的な運動療法と栄養療法を含めた前方視的な臨床試験が望まれる。

本研究にはいくつかの制限が含まれる。まず175例中72例に食道癌が再発し、化学療法や放射線治療が施行されており、57例は観察期間中に原病死している。よって再発治療や再発病巣の影響による肺炎が含まれ、それらの影響でCR-LOPPを抽出できていない可能性がある。しかし、再発群と無再発群においてCR-LOPP発症に有意差はみられなかった(P=0.102)。次に食道癌の再発がLOPP発症に影響している可能性が否定できない。これに関しては、無再発症例(n=103)のサブグループ解析をおこなったところ、TPA減少率>5%の群では21.4%にCR-LOPPの発症を認めたのに対して、TPA減少率≦5%の群では、2.1%しかCR-LOPPを発症しなかった(P=0.003)。これらの結果は、術後の筋肉量減少がCR-LOPP発症に関与することをより強く示唆している。最後に、本研究では骨格筋量の指標としてTPAを用いたが、総骨格筋量や呼吸筋量を正しく反映している確証がないため、今後の課題である。

【結語】
食道癌術後は長期に渡ってCR-LOPP発症率が高く、その独立危険因子は臨床病期Ⅲ以上、術後長期入院、術後3か月のTPA減少であった。TPA減少は周術期の栄養および運動療法によって改善が見込まれ、結果としてCR-LOPP発症予防に寄与し得ると考えられるため、今後積極的に導入していくことを予定している。

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