Development of an entirely plasmid-based reverse genetics system for 12-segmented double-stranded RNA viruses
概要
〔目的(Purpose)〕
レオウイルス科は9〜12本の分節型二本鎖RNA (dsRNA)をゲノムとして持つ非エンベロープウイルスのグルーブである。これまでにウイルス学的解析に必須の技術であるリバースジェネティクス系は10および11分節ゲノムを有するレオウイルス科のウイルスで確立されているものの、レオウイルス科の中でも12分節ゲノムを持つウイルスで は確立されていない。コルチウイルス属は12分節dsKNAゲノムを有しており、ヒトに発熱、悪寒、頭痛、腹痛など の症状をもたらすColorado tick fever virusが代表種として知られ、現在では北米、ヨーロッパ、アフリカ、アジア、オーストラリアなど世界中で様々なコルチウイルス属のウイルスが報告されている。日本国内においても野生のキチマダニからTaruroizu tick virus (TarTV)が単離されている。しかしながらコルチウイルス属のウイルス生活環、病原性発現機序などはほとんど明らかになっていないのが現状である。本研究では、新たに国内のタヌキから分離されたTarTV Kochi株を用いて、コルチウイルス属ならびに12分節のdsRNAゲノムを持つウイルスとして初となるリバースジェネティクス系の確立を目的とした。
〔方法ならびに成績(Melhods/Results)〕
これまでに確立されているレオウイルス科のリバースジェネティクス系と同様の手法を用いてTarTVのリバースジェネティクス系の確立を試みた。TarTVの12分節のゲノムのプラス鎖cDNAをプラスミドにクローニングした。ウイルスゲノムcDNAの上流にはT7プロモーター、下流にはD型肝炎ウイルス由来の自己切断型リボザイムが配置されている。12分節のウイルスRNAゲノムを発現するプラスミド(12種類)をT7 RNAボリメラーゼ発現細胞に導入することで組換えウイルスの作出に成功した。さらに組換えウイルス作製効率の向上を目的として、TarTVタンパク質およびワクシニアウイルスキャッピング酵素を加えた改良系の開発を行った。
TarTVのリバースジェネティクス系を用いて、Kochi株を遺伝的バックボーンとしSegment12のみをマダニから分離されたT117株由来のものに置換したモノリアソータントウイルスを作製した。さらに様々なSegment12の変異ウイルス作製し、Segment12がコードするVP12はN-結合型糖鎖を持つ糖タンパク質であることを明らかにした。VP8のC末端にルシフェラーゼの断片(HiBiTタグ)を挿入したレボーターウイルスについても作製した。レポーターウイルスは野生型ウイルスと同程度の増殖性を示し、有意に高いルシフェラーゼ活性が認められた。
〔総括(Conclusion)〕
コルチウイルス属初となるTarTVのリバースジェネティクス系を確立した。VP12が糖修飾を受けることを示唆する結果を得た。作製したレボーターウイルスはウイルス複製阻害薬などのスクリーニングに有用と考えられる。本研究で開発に成功したTarTVのリバースジェネティクス系によりコルチウイルス属の解析が飛躍的に進展すると期待される。