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大学・研究所にある論文を検索できる 「細胞の動的3次元パターニングによるオンチップ臓器へ挑戦」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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書き出し

細胞の動的3次元パターニングによるオンチップ臓器へ挑戦

秋山, 佳丈 信州大学

2020.03.12

概要

2版

様 式 C−19、F−19−1、Z−19 (共通)

科学研究費助成事業  研究成果報告書
平成 30 年

6 月 26 日現在

機関番号: 13601
研究種目: 挑戦的萌芽研究
研究期間: 2015 ∼ 2017
課題番号: 15K14232
研究課題名(和文)細胞の動的3次元パターニングによるオンチップ臓器へ挑戦

研究課題名(英文)Dynamic three-dimensional cell patterning toward organ-on-a-chip

研究代表者
秋山 佳丈(Akiyama, Yoshitake)
信州大学・学術研究院繊維学系・准教授

研究者番号:80585878
交付決定額(研究期間全体):(直接経費)

3,000,000 円

研究成果の概要(和文):動物実験を代替する手法として,マイクロ流体デバイスにおける微小組織構築
(Organ-on-a-chip)が注目されている.しかし,そのためには,マイクロ流路内での細胞や微小組織を操作す
るための技術が必要である.本研究では,マイクロ流路内での高度な3次元微小組織構築に向けて,研究者の提
案する「ラベルフリー磁気アセンブリ法」の有用性を検証した.特に,磁石アレイを用いた細胞パターニングお
よび電磁石デバイスを用いた微小組織の操作を実証した.

研究成果の概要(英文):As an experimental-animal substitution method, micro-tissue construction in
microfluidic devices (Organ-on-a-chip) has been attracted much more attention. Achievement of
Organ-on-a-chip requires to development a manipulation method for cells and micro-tissues in the
microchannel. In this study, the label-free magnetic assembly method that the author proposed was
assessed. We demonstrated label-free cell patterning using a magnet array and label-free magnetic
manipulation of micro-tissues using an electromagnetic device.

研究分野: ナノマイクロシステム
キーワード: 細胞パターニング マイクロ流体デバイス 組織工学 磁気アルキメデス効果

様 式 C−19、F−19−1、Z−19、CK−19(共通)
1.研究開始当初の背景
多細胞生物は,個体−器官系−器官−組織−
細胞という階層構造を成している.しかし,
現在,創薬スクリーニングにおいては,最下
層である細胞レベルの評価が中心となって
おり,個体レベルの実験動物およびヒトでの
治験結果との隔たりが問題となっている.こ
の問題の解決に向けて,微細加工技術により
作製したマイクロ流体デバイスが注目を集
めている.培養環境を微小化することで,単
純に高価な細胞や試薬の使用量が削減でき,
システムの集積化が容易になるだけではな
く,レイノルズ数の低下により層流条件とな
るため細胞周辺環境の精密な制御が可能と
なる.このようなマイクロ流体デバイスでの
細胞培養に関する研究は,近年急激な発展を
遂げており,高度な流体制御技術や複雑な微
小構造を組み合わせることで,細胞から機能
や構造を持つ微小組織を構築するに至って
いる.さらに,Shuler 教授により,1つの基
板上に複数の組織や器官を作り上げる Organ
on a chip または Human on a chip と呼ばれるコ
ンセプトが提案され,現在最も注目される研
究分野の1つとなっている.これまでに機能
や構造を持つ微小組織の構築が報告されて
はいるが,閉鎖空間であるマイクロ流路内で
の細胞の操作は困難であり,生体同様の複雑
かつ多機能な組織を構築するには至ってい
ない.
2.研究の目的
本研究では,Organ-on-chip における最終ゴー
ルであるマイクロ流路内での高度な 3 次元微
小組織構築に向けて,著者の提案する「ラベ
ルフリー磁気アセンブリ法」の有用性を検証
する.具体的には,ラベルフリー磁気アセン
ブリ法により,磁石アレイを用いた細胞パタ
ーニングおよび電磁石デバイスを用いた微
小組織の操作を実証する
3.研究の方法
(1) ラベルフリー磁気アセンブリ
溶液中の粒子に作用する磁力 F m は以下の式
(1)で表すことができる.

Fm 



p

  m V

20

B 2

(1)

ここで,χp:粒子の磁化率,χm:溶液の磁化
率,V:粒子の体積,μ0:真空の透磁率,B:
磁束密度である.溶液中の粒子に磁場を印加
しても磁化率に差がないため,粒子は磁場か
らの影響を受けない.また,溶液中に磁性粒
子が含まれる場合,(χp -χm)は正となるため,
粒子に対して引力が働く.一方,正の磁化率
を持つ溶液中に粒子が含まれる場合は,(χp
-χm)が負となるため,粒子は相対的に反磁性
体として振る舞い,粒子は磁場から斥力を受
ける.その結果,粒子は磁力の弱い場所に凝
集する.
(2) 細胞パターニング装置概要
実験装置の概要を図 1 に示す.パターニング

に必要な磁場は,横方向に磁化されたネオジ
ム磁石(幅 1 mm,高さ 5 mm,奥行き 30 mm)
を 15 個並べ,間にスペーサとしてアルミニ
ウム(幅 0.1 mm,高さ 3 mm,奥行き 25 mm)
をはさんだ磁石アレイにより作製した.磁石
アレイの上に,ガラスボトムディッシュに枠
を貼り付けることで作製したチャンバを設
置し,その中でパターニング実験を行った.
チャンバは,縦 10 mm,横 10 mm,高さ 5mm
とした.

図 1 磁石アレイの上に設置したチャンバ.
(3) 蛍光ビーズのパターニング実験
細胞と物理的性質の近い直径 15 μm の蛍光ポ
リスチレンビーズを使用して実験を行った.
DPBS(-)に常磁性化合物(Gd-DOTA)を 40 mM,
蛍光ポリスチレンビーズを 4.1×104 個/mL 添
加して蛍光ビーズ懸濁液を作製した.この懸
濁液を 560 μL をチャンバに導入し,常温で 1
時間半静置した後撮影を行った.チャンバー
は,底面の厚み 0.14 mm のものを使用して実
験を行った.
(4) 細胞パターニング実験
マウス繊維芽細胞(3T3)を用いて,蛍光ビ
ーズと同様の実験を行った.細胞懸濁液は,
Gd-DOTA 40 mM を 添 加 し た 培 地 Hank’s
MEM (10%FBS, 1%AB)に,PKH67 Green
Fluorescent Cell Linker Kit(Sigma Aldrich)で
染色した 3T3 細胞を 4.1×104 個/mL になるよ
うに懸濁することで作製した.
(5) 細胞上への細胞パターニング実験
チャンバーへ PKH26 で染色した細胞を播種
し,3 日間培養した.培地を取り除き,PKH67
で染色した細胞を含む細胞懸濁液を 560 µL
導入し,1 時間半静置した.チャンバは底面
の厚みが 0.11 mm のものを使用して実験を行
った.
(6) 電磁石デバイス
本研究で使用する電磁石デバイスの概要図
を図 2 に示す.本デバイスは,2 対のヨーク
とコイルで構成されており,各コイルに電流
を印加することで各ヨークの先端から磁場
が発生する.発生した磁場はヨークの先端か
らチャンバの中央に向かって磁束密度勾配
を生成する.

図 2 電磁石デバイスの概要.
4.研究成果
(1) 蛍光ビーズのパターニング
実験開始から 1 時間半後の様子を図 3a に示す.
また,得られた画像を元に画像処理ソフト
ImageJ により背景の減算をした後 2 値化し,
Adjustable Watershed で分割した上で水平方向
の座標を算出した.スペーサの中心を 0 とし
たときのビーズの水平方向の距離を横軸,ビ
ーズの数を縦軸にプロットしたグラフを図.
3b に示す.約 80 %のビーズが 141 µm の幅に
収まっていた.以上から,本手法により,パ
ターニングが可能であることが確認できた.

図 4 パターニングされた細胞の蛍光像.
(3) 細胞上への細胞パターニング
実験開始から 1 時間半後の様子を図.5 に示す.
写真中で赤色の点が 1 層目の細胞,緑色の点
が 2 層目の細胞である.
パターニング幅は 256
µm であった.以上から,細胞もポリスチレ
ンビーズと同様にパターニングできること
が確認できた.
従来の細胞接着分子のパターニングによる
細胞パターニングでは困難であった細胞上
への細胞パターニングに成功した.また,チ
ャンバ底面を厚みを 0.14 mm から 0.11 mm と
薄くすることでパターニング幅を 256 µm と
狭くすることに成功した.今後,より薄いガ
ラスや樹脂フィルムを底面とすることでパ
ターニング幅をより狭くすることが可能で
あると考えられる.

図 5 細胞上にパターニングされた細胞.

図 3 蛍光ビーズのパターニング. (a)蛍光顕微
鏡像. (b)画像解析によるビーズの分布.
(2) 細胞のパターニング
実験開始から 1 時間半後の様子を図 4 に示す.
図中で緑色の点が細胞,赤い部分がスペーサ
のアルミニウムを示す.画像解析の結果,パ
ターニング幅(約 80 %の細胞が収まる幅)は,
402 µm と蛍光ビーズの結果の 2 倍以上とな
った.原因としては,細胞と蛍光ビーズの磁
化率の違いや細胞は底面までたどり着くと,
接着してしまうことが挙げられる.

(4) 電磁石デバイスの磁場解析
電磁石デバイスにおいて,各コイルに印加す
る電流の大きさを制御することで,ヨークの
中心に設置したマイクロチャンバ内の磁束
密度の分布が変化させることができる.例え
ば,各コイルに位相をπ/2 ずつずらした正弦
波電流を印加すると,図 6 に示すような磁束
密度が最小である点が回転するような磁場
を生成することができる.その結果,スフェ
ロイドはチャンバの中心を回転中心とした
円運動をする.
汎 用 FEM 解 析 ソ フ ト ウ ェ ア (COMSOL
Multipysics 5.1)を用いて印加電流の振幅と角
度を変化させた時の磁束密度分布を解析し
た.印加する電流の概要と各条件における磁
束密度分布を図 6 に示す.

Conference on Miniaturized Systems for
Chemistry and Life Sciences (MicroTAS
2017)(国際学会).

図 6 各ヨークに印加する電流と磁束密度分
布.
(5) マイクロ流路内での微小組織の操作
微小組織(スフェロイド)を予めチャンバに
導入し,チャンバ中央に配置した.3 時間置
くことで,チャンバ底面に細胞を接着させた.
接着後,新たなスフェロイドを流路に導入し
た.コイルに電流を印加し,チャンバ中央に
固定したスフェロイドに 0 度,
90 度,
180 度,
270 度の方向から,スフェロイドを接着させ
た(図 7)
.固定したスフェロイドに対して,
0 度,90 度,180 度,270 度の方向からスフ
ェロイドを融合させることに成功した.



Y. Akiyama, A. Watanabe, “Label-free
Electromagnetic Spheroid Manipulation
Based on the Magneto-Archimedes Effect,”
27th 2016 International Symposium on
Micro-Nano Mechatronics and Human
Science (MHS2016)(国際学会).



Y. Akiyama, J. Sugihara, “Direct muscle
tissue formation between micropillars by
label-free magnetic cell assembly,” The 20th
International Conference on Miniaturized
Systems for Chemistry and Life Sciences
(MicroTAS 2016)(国際学会).



秋山佳丈,“ラベルフリー磁気アセンブ
リによるオンチップスフェロイド形成
と融合” 化学とマイクロ・ナノシステム
学会 第 34 回研究会.



渡辺彬生,秋山佳丈,“閉鎖空間内にお
ける電磁石を利用した微小生体組織の
ラベルフリー磁気操作” 化学とマイク
ロ・ナノシステム学会 第 33 回研究会.



秋山佳丈,柴田健吾,秋山義勝,大和雅
之, “磁気走査型細胞パターニングデバ
イス開発に向けた基礎的検討” 第 15 回
日本再生医療学会総会.



Y.
Akiyama,
“Assessment
of
electromagnetic device for label-free
magnetic cell assembly,” International
Conference on Biofabrication 2015(国際学
会.



秋山佳丈, “ラベルフリー磁気細胞アセ
ンブリによる微小構造体上への直接的 3
次元組織構築,” 日本機械学会 2015 年度
年次大会.



Y.
Akiyama,
“Three-dimensional
Biofabrication
toward
Biohybrid
Microdevices,” The 15th International
Union
of
Materials
Research
Societies,International Conference in Asia
(IUMRS-ICA)(国際学会).

図 7 各方向からのスフェロイド操作.
5.主な発表論文等
〔雑誌論文〕
(計 2 件)
① 秋山佳丈,逆転の発想で,細胞を磁場
であやつる,生物工学会誌,査読無,2018,
96, p. 143.


秋山佳丈,磁気を使って細胞を任意形状
に配置,ケミカルエンジニヤリング,査
読無,2017, 61, pp. 35-41.

〔学会発表〕
(計 10 件)
① 菱田豊, 秋山佳丈, “磁気アルキメデス効
果を用いた磁気走査型細胞パターニン
グ―3 次元磁気走査システムの構築とそ
の 評 価 ―,” 日 本 機 械 学 会 ロ ボ テ ィ ク
ス・メカトロニクス講演会 2017.

〔産業財産権〕
○出願状況(計 1 件)



H. Suenaga, J. Sugihara, M. Horie, Y. ...

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