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Feasibility of endoscopic ultrasonography using a 60-MHz ultrasound miniature probe in the upper gastrointestinal tract

浅井, 裕充 名古屋大学

2022.07.06

概要

【緒言】
 リンパ節転移リスクの低い消化管早期癌に対する内視鏡治療は、侵襲が低く根治が期待できる標準治療として普及している。内視鏡治療の適応を決定するためには、胃癌においては深達度として粘膜層/粘膜下層浅層(M/SM1)を、食道癌においては粘膜筋板/粘膜下層浅層(MM/SM1)を正確に診断することが重要である。超音波内視鏡は消化管の層構造の観察を可能とし、白色光観察と併用することで深達度診断能が向上することが知られている。超音波検査は周波数を高くすることで描出深度は浅くなるものの、より詳細な画像イメージを得ることができる。超音波内視鏡ではこれまで30MHzまでの報告はあるものの、実臨床で使用されている20MHz機器と比較して、診断能向上に寄与するとは言い難い結果であった。
 今回、60MHzの超高周波プローブの試作を行い、ファントムに対しての描出能及び切除検体での消化管壁の描出能について検討した。

【対象及び方法】
 本研究は単施設、前向きの観察研究である。60MHz細径プローブの描出能を明らかにするためにphantom studyとspecimen studyを行った。60MHz細径プローブは試作機であり、シースとその内部に1mmの振動子を内在し、描出の際にはシース内を生理食塩水で満たした状態で使用した。デバイス強度が十分でなく内視鏡の鉗子孔を通しての使用ができないため、浸水下で振動子部分を直接標本に近接させて描出を行った。

Phantom study
 多目的超音波ファントムモデル(Model 551, Eastek Co., Tokyo, Japan)を用いて、試作機の60MHz細径プローブ(Prototype, Fujifilm Co., Tokyo, Japan)と、従来の実地臨床で使用している7.5MHzコンベックス型超音波内視鏡(EG580UT, Fujifilm Co.)及び20MHz細径プローブ(UM-3R, Olympus Co., Tokyo, Japan)の描出能を検討した。ファントムは表層から1-5mmまでは1mm間隔、5mm以深は5mm間隔で直径0.05mmの超極細モノフィラメントを内在しており、ファントム上層に生理食塩水を貯留させ、各デバイスで描出できた最深深度を描出可能範囲と判定した。

Specimen study
 本研究に登録された16名から内視鏡的切除もしくは外科的切除で得られた食道、胃、十二指腸の計25部位(正常部位8、腫瘍組織17)について検討を行った。標本は切除直後の検体を標本板の上にピン固定し、容器に生理食塩水を満たしたうえで浸水下に60MHz細径プローブで検体の描出を行い、描出した部位は固定ピンでマーキングを行った。切除検体は実験後に10%ホルマリンで固定し、固定後標本をマーキングピンの位置で切り出し、ヘマトキシリン染色を行った。60MHz細径プローブで描出された画像と対象となる切片の病理学的所見を対比して消化管壁の層構造について評価した。画像計測には顕微鏡用イメージングソフトウェアのcellSens(Olympus Co.)を使用した。本研究は名古屋大学大学院医学系研究科生命倫理委員会の承認を得て行われた(No.2014-0224)。

【結果】
Phantom study
 60MHz細径プローブ、20MHz細径プローブ及び7.5MHzコンベックス型超音波内視鏡はそれぞれ2mm、5mm及び60mmの深さまで描出できた(Figure 1)。

Specimen study
 60MHz細径プローブは、深さ2mmまでの描出可能範囲において、食道、胃、十二指腸をそれぞれ5層構造で描出することができ、粘膜筋板を食道、胃では第4層、十二指腸では第2層として描出することができた(Figure 2)。層構造が消失した2症例以外の全ての症例において、粘膜筋板の描出が可能であった(92%, 23/25)。
 60MHz細径プローブの超音波画像と病理標本の層構造を比較すると、食道の粘膜上皮(EP)は2層構造に描出され、第3層は粘膜固有層(LPM)、第4層は粘膜筋板(MM)、第5層は粘膜下層(SM)に相当していた。胃は粘膜層(M)が3層構造に描出され、第4層がMM、第5層がSMに相当していた。胃壁の観察において、SM深部までは描出不能であった。十二指腸は第1層がM、第2層がMM、第3層がSM、第4層が固有筋層(MP)、第5層が漿膜(S)に相当していた。

【考察】
 消化管に対しての超音波内視鏡細径プローブの研究は、我々の知る限りではこれまで30MHzまでの高周波プローブの報告しかなく、本研究は60MHz高周波プローブに関する初めての報告である。
 従来の20MHz細径プローブでは胃の粘膜筋板の描出率は50%と報告されており描出は容易ではなかったが、60MHz細径プローブでは化学放射線療法の治療効果による線維化と腫瘍浸潤により層構造が不明瞭化していた2症例を除き、全例で粘膜筋板を視認することができた。
 内視鏡治療適応を適切に決めるためには、粘膜筋板への腫瘍浸潤を正確に診断することが重要である。早期胃癌に対する深達度診断では、白色光観察でのM/SM1、SM2/SM深部以深の正診率が68.1%、47.5%に対して、20MHz細径プローブを用いた超音波内視鏡を併用することにより、それぞれ74.4%、73.7%と診断能の上昇を認めたと報告されている。一方、食道表在癌に対する食道癌血管分類を用いた画像強調拡大内視鏡による深達度診断は、EP/LPM95%、MM/SM168.6%、SM2/SM392.9%とMM/SM1で低下がみられ、20MHz細径プローブを用いた診断でも画像強調拡大内視鏡と同様に、EP/LPM81%、MM/SM160%、SM2/SM390%とMM/SM1において正診率の低下がみられる。胃癌においては超音波内視鏡は内視鏡治療境界であるM/SM1とSM2/SM深部以深において診断能の上乗せ効果があるものの、食道表在癌においては治療方針を左右するMM/SM1の深達度診断能は十分とは言えない。
 本研究では60MHz高周波プローブにより粘膜筋板が明瞭に描出されることを示し、食道、胃では粘膜下層まで、十二指腸では全層の描出が可能であることを明らかにした。従来のプローブでは画像の解像度の問題から微細な構造の描出が困難であったが、60MHz細径プローブでは拡張した腺管や食道腺を描出できた症例もあり、周波数が高いことからより詳細な層構造描出が可能になったと考えられる。粘膜筋板や粘膜内の構造物の描出ができることは、より正確な深達度診断への一助となり、それは内視鏡治療適応の有無など適切な治療選択につながる可能性がある。ただし、描出範囲が2mmまでと限定されることから、今回の研究結果からは胃よりも食道や十二指腸など壁の薄い臓器での使用が適していることと、描出範囲の問題から丈の高い隆起性病変や陥凹の深い潰瘍性病変に対しては描出が難しく評価困難となる可能性があることが推測された。
 本研究は、機器の耐久性の問題及び薬事未承認であることから生体外での使用に限定されており、生体内での画像評価ができていない。また実地臨床で使用される20MHz細径プローブなどの機器との画像比較も未試行である。臨床応用のためにはそれらの評価を行い、有用性を確認する必要がある。

【結語】
 60MHz細径プローブは、粘膜筋板と粘膜下層までの層構造を良好に描出することができた。これは上部消化管早期癌の深達度診断の精度向上に寄与し、より適切な治療選択を可能にすると考えられる。

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参考文献

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