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大学・研究所にある論文を検索できる 「ピエゾ駆動方式パルスウォータージェット技術の肝切除への応用に関する基礎研究―動物実験モデルとヒト摘出肝を用いた臨床応用の可能性の検討―」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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ピエゾ駆動方式パルスウォータージェット技術の肝切除への応用に関する基礎研究―動物実験モデルとヒト摘出肝を用いた臨床応用の可能性の検討―

横沢 友樹 東北大学

2020.09.25

概要

【背景】
ウォータージェット技術は、組織に熱損傷を与えることなく血管や神経などの索状構造物を温存しながら組織を切開できる特性をもつが、従来の連続噴流を用いたウォータージェット技術は水量が多いことに起因する問題を抱え、さらに、切開深達度の制御が困難であることから、手術機器としての課題を有している。現在開発中のピエゾ駆動方式パルスウォータージェット技術(Piezo Actuator-Driven Pulsed Water Jet System:ADPJ)は、従来の連続噴流を用いたウォータージェット技術よりも使用する水量が少なく、また、駆動電圧により、切開深達度を調整可能なことから、これらの課題を解決する可能性がある。しかし、肝切除への臨床応用には、安全性の確認や従来のデバイスとの比較など未だ解明すべき点がある。本研究の目的は、より安全でより侵襲の低い肝切除を可能にする手術機器の開発と臨床応用に向けた評価を行うことである。

【方法】
Ⅰ.ADPJ 噴流特性の工学的検討
高速度カメラでパルスがノズルから噴射した直後の状態を連続撮影し、ADPJ に至適な水量を求めた。また、圧力センサを用い、各出力条件において噴射されるジェットが持つジェット圧を測定した。

Ⅱ.ADPJ と CUSA® Excel+の比較
ブタ摘出肝に一定時間のもと、ADPJ と既存の超音波手術器(CUSA® Excel+)を用いて切開を入れ、血管温存率と断面積を測定した。また、その断面の十点平均粗さを測定した。

Ⅲ.ラットモデルにおける肝部分切除後の肝組織損傷度と回復の検討
120 匹のラットをシャム群、電気メス群、ADPJ 群、CUSA® Excel+群の 4 郡に分けて、肝部分切除を施行した。術後 1、3、7、14、28、および 56 日目に、各群 5 匹のラットから血液検体を採取し、残留肝臓を採取した後、安楽死させた。血清中のアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(aspartate aminotransferase:AST)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(alanine aminotransferase:ALT)、およびグルタミン酸デヒドロゲナーゼ(glutamate dehydrogenase:GLDH)の濃度を測定した。切除表面を、ヘマトキシリン-エオシン(hematoxylin– eosin:HE)染色し、顕微鏡にて評価した。

Ⅳ.ヒト摘出肝の物理学特性の調査
小型卓上試験機を用いて肝組織の破断応力値を測定した。 Ⅴ.ヒト肝臓における ADPJ の切開能力の検討(移動切除)肝組織を移動ステージの上にのせ、一定速度で移動させながら、ADPJ にて切開し、その深達度を測定した。

Ⅵ.ブタ摘出肝とヒト摘出肝における比較
同様の方法で、ブタ摘出肝の各組織の破断応力値と切開深達度を測定し、ヒト摘出肝の結果と比較・検討した。

【結果】
Ⅰ. ADPJ 噴流特性の工学的検討
ADPJ の至適水量は駆動電圧に正の相関関係を示し(P < 0.001)、ジェット圧は駆動電圧に正の相関関係を示した(P < 0.001)。

Ⅱ. ADPJ と CUSA® Excel+の比較
ADPJ でブタ摘出肝を切開したところ、血管温存率は、80 V までは 100%であった。ADPJ による切開速度は駆動電圧に正の相関を示し(P < 0.001)、80 V では、有意に CUSA® Excel+よりも早かった(P < 0.001)。また、十点平均粗さは、ADPJ で有意に小さかった(P < 0.001)。

Ⅲ. ラットモデルにおける肝部分切除後の肝組織損傷度と回復の検討
ラットモデルによる肝部分切除では、1 日目の AST、ALT、GLDH の値は、ADPJ で有意に低かった(P< 0.05)。ADPJ 群の離断面からの変性の最大深度は、CUSA® Excel+群と比較し、28 日目で有意に浅かった(P < 0.05)。変性が完全に消失したラットの数は、28 日目で他のデバイスよりも ADPJ が有意に多かった(P < 0.05)。

Ⅳ. ヒト摘出肝の物理学特性の調査
ヒト摘出肝における正常肝実質は肝硬変肝実質に対して、有意に低い破断応力値を示した(P = 0.001)。正常肝実質および肝硬変肝実質はともに肝静脈やグリソン鞘より有意に低い破断応力値を示した(P < 0.001)。また、肝腫瘍の破断応力値は、背景肝実質よりも有意に高かった(P < 0.001)。

Ⅴ. ヒト肝臓における ADPJ の切開能力の検討(移動切除)
ADPJ による切開深達度は、駆動電圧に正の相関を示し(P ≦ 0.01)、破断応力値と切開深達度には弱い負の相関がみられた(P < 0.01)。

Ⅵ. ブタ摘出肝とヒト摘出肝における比較
ブタ摘出肝でも同様に、肝実質では肝静脈やグリソン鞘より有意に低い破断応力値を示し(P < 0.001)、切開深達度は駆動電圧に対し、正の相関を示した(P < 0.01)。

【結論】
ADPJ は既存の超音波手術器よりも血管を温存しつつ、早く肝切除が出来る可能性が示された。また、肝切除後の肝組織損傷を減らし、回復を早めた。ヒトの肝臓はブタの肝臓よりも組織間の破断応力値の差が大きいことから、より安全に肝切除が行える可能性が示された。

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