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大学・研究所にある論文を検索できる 「体内時計調節を介した筋代謝制御とその制御機構の解明」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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書き出し

体内時計調節を介した筋代謝制御とその制御機構の解明

桐山, 晃平 名古屋大学

2023.11.17

概要

報告番号



















論文題目

体内時計調節を介した筋代謝制御とその制御機構の解




桐山



晃平

論 文 内 容 の 要 旨
肥満やメタボリックシンドロームは先進国だけでなく、発展途上国におい
ても増加している。日本においても、日本人男性の 3 人に 1 人が肥満に該当
する。肥満やメタボリックシンドロームの発症は、エネルギーの過剰摂取、
喫煙や運動不足により誘発される。人体で最大の組織であり、エネルギー代
謝の中心的な役割を担っている骨格筋の代謝が、肥満やメタボリックシンド
ローム等の脂質代謝疾患の予防に関与していることが示唆されている。骨格
筋の減少は、脂質代謝疾患だけでなく、高血圧や糖尿病などの生活習慣病の
発症リスクを増加させるため、骨格筋の代謝制御はメタボリックシンドロー
ムや生活習慣病の発症を予防する上で重要なターゲットとなる。
社会の変化や技術の進化により、現代人の生活は大幅に変化してきた。デ
ジ タ ル 機 器 の 普 及 に よ り 、 24 時 間 活 動 す る 環 境 が 整 っ て い る 。ラ イ フ ス タ イ
ルの変化に伴う食事の欠食や夜食などの食習慣の乱れは生活リズムを乱す。
近年、概日リズムの乱れは、肥満やメタボリックシンドローム、生活習慣病
の発症と関連していることが明らかになってきた。当研究では、これまでに
食事のタイミングが末梢組織における概日リズムを制御する時計遺伝子を調
節し、脂質代謝を制御することを報告してきた。一方で、食事のタイミング
による概日リズムの変化が骨格筋の代謝に及ぼす影響は明らかとなっていな
い。
末梢組織の時計は食事のタイミングにより調節される。朝食は長期絶食後
の活動期始めに摂る食事であり、末梢組織の時計に大きく影響すると考えら
れる。これまでに高脂肪食を摂取させた朝食欠食モデル動物において、体重
増加や肝臓の概日リズムの乱れ、脂質代謝異常を示すことを報告している。
高脂肪食による実験は、一般的な食生活から解離した条件であるため、普通
食を摂取させた朝食欠食モデルにおいて、末梢組織の概日リズムの変化およ

び代謝に及ぼす影響を検証した。通常食を用いた朝食欠食群は対照群と比較
して体重および脂肪重量の増加を認めた一方で、足底筋重量が減少した。朝
食 欠 食 群 で は 、朝 食 欠 食 の 時 間 帯 に 体 温 の 上 昇 が 認 め ら れ な か っ た こ と か ら 、
朝食欠食によりエネルギー消費量が減少している可能性が示唆された。食事
の影響を受けやすい肝臓において、朝食欠食群では肝臓および脂肪組織にお
いて、時計遺伝子および脂質代謝関連遺伝子の概日リズムが変化していたこ
とから、朝食欠食による脂質代謝の異常が示唆された。骨格筋では、時計遺
伝子および筋代謝関連遺伝子の概日リズムが変化しており、筋重量の減少に
概日リズムの変化が関与している可能性が考えられた。朝食欠食は体内時計
および代謝のリズムの乱れを引き起こし、メタボリックシンドロームや骨格
筋量の低下、筋萎縮を助長する可能性が示された。
朝食欠食による筋萎縮の可能性が示されたため、筋萎縮の制御機構につい
て 検 証 し た 。 我 々 は こ れ ま で に DNA マ イ ク ロ ア レ イ を 用 い た 網 羅 的 な 遺 伝 子
発 現 解 析 に よ り 、筋 萎 縮 が 進 行 し た 骨 格 筋 に お い て A p o l i p o p r o t e i n D( A p o D )
が 強 力 に 発 現 す る こ と を 明 ら か に し て い る 。筋 萎 縮 の 進 行 と A p o D 発 現 の 関 与
について詳細に検証するため、ラット坐骨神経切除による筋萎縮モデルを作
製 し た 。ApoD は リ ポ カ リ ン フ ァ ミ リ ー に 属 す る リ ポ タ ン パ ク 質 で 、 神 経 系 に
おいて神経保護の役割が報告されている。一方で、骨格筋におけるその生理
機能や役割に関してはほとんど報告がない。坐骨神経切除手術が施されたラ
ットを、術後 1 週間および 5 週間の時点で解剖した。主要な後肢骨格筋重量
は 、 手 術 後 1 週 目 と 比 較 し て 5 週 目 で 有 意 に 減 少 し た 。 骨 格 筋 に お け る ApoD
の遺伝子およびタンパク質の発現は手術から 5 週目で大きく増加した。一方
で 、 血 中 の ApoD 濃 度 は 筋 萎 縮 の 進 行 に 伴 う 有 意 な 増 加 は 認 め ら れ な か っ た 。
こ れ ら の 結 果 か ら 、 坐 骨 神 経 切 除 後 の 筋 萎 縮 の 進 行 に 伴 い 、 骨 格 筋 内 で ApoD
の発現量が増加することが示唆された。
我 々 は 骨 格 筋 に お け る ApoD の 発 現 増 加 が 筋 萎 縮 に 関 与 し て い る 可 能 性 を
考 え た 。 in

vitro 実 験 に よ り 骨 格 筋 に お け る ApoD の 機 能 評 価 を 行 い 、 ApoD

の 発 現 の 増 加 と 筋 萎 縮 の 関 連 性 を 検 証 し た 。マ ウ ス 筋 芽 細 胞 C 2 C 1 2 に A p o D を
過 剰 発 現 さ せ 、 筋 分 化 に 及 ぼ す 影 響 を 検 証 し た 。 ApoD 過 剰 発 現 細 胞 で は 、 細
胞 内 ApoD の 遺 伝 子 お よ び タ ン パ ク 質 の 発 現 増 加 を 確 認 し た が 、 細 胞 外 へ の
A p o D 分 泌 の 寄 与 は 低 か っ た 。A p o D 過 剰 発 現 細 胞 は 、通 常 細 胞 と 同 様 の 増 殖 能
力、細胞形状を示したが、筋管細胞へ分化させると通常細胞で観察される筋
管 形 成 が 阻 害 さ れ た 。そ こ で 筋 代 謝 関 連 遺 伝 子 の 発 現 解 析 を 実 施 す る と 、A p o D
過剰発現により、筋分化に関与する遺伝子発現が顕著に減少していた。骨格
筋 に お け る A p o D の 過 剰 発 現 が 、筋 分 化 経 路 を 阻 害 す る こ と で 筋 合 成 を 抑 制 す
る可能性が示された。
本研究により、朝食欠食がそれぞれの末梢組織において時計遺伝子、脂質
代 謝 関 連 遺 伝 子 、筋 代 謝 関 連 遺 伝 子 の 概 日 リ ズ ム の 調 節 に 関 与 し て い る こ と 、

さらに脂肪組織重量の増加だけでなく、骨格筋重量が減少することを初めて
明らかにした。朝食欠食は筋重量減少による筋萎縮を引き起こす可能性があ
るため、朝食の介入は筋萎縮への有効なアプローチになりうる。筋萎縮の制
御 因 子 と し て ApoD に 着 目 し 、 骨 格 筋 に お け る 過 剰 な ApoD が 筋 分 化 を 抑 制 す
る 可 能 性 を 示 し た 。今 後 、A p o D の 分 子 メ カ ニ ズ ム が 詳 細 に 解 明 さ れ る こ と で 、
ApoD を 標 的 と し た 筋 萎 縮 の 治 療 法 や 予 防 策 の 開 発 に も つ な が る こ と が 期 待
される。

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