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大学・研究所にある論文を検索できる 「Pathological features of reinnervated skeletal muscles after crush injury of the sciatic nerve in ob/ob mice」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Pathological features of reinnervated skeletal muscles after crush injury of the sciatic nerve in ob/ob mice

浅野 貴裕 三重大学

2022.05.09

概要

[緒言]
末梢神経障害の治療は筋力や感覚障害の回復がゴールとなる。 臨床では、治療によって適切な神経軸索再生や骨格筋の再神経支配が生じているにも関わらず、 運動機能の回復が悪い例がみられる。 筋力低下は日常生活に影響するため、 臨床における重大な懸念である。 脱 神 経後の骨格筋では筋体積の減少やサテライトセルの減少、 筋線維タイプシフト、 線維組織の形成といった生化学的および生理学的変化が生じているが、さらに基礎疾患が骨格筋の再神経支配の過程を阻害しているかもしれない。
肥満は皮下や腹腔臓器への脂肪沈着増加や異所性脂肪沈着といわれる非脂肪組織への脂肪沈着に特徴づけられる。 脂肪沈着は心臓や肝臓において炎症や線維化を生じ、心筋拡張障害、 非アルコール性肝障害といった変化を引き起こす。この過程は脂肪毒性と定義されるが、 骨格筋も異所性脂肪沈着の標的臓器であり、 骨格筋でも同様の変化が危惧される。In vivoでの脂肪毒性の影響やそれに伴う機能への影響はあまり研究されていないが、 in vitro研 究では、 骨格筋 細 胞に対する脂 肪毒性に関する多数の報告があり、 肥満マウスの骨格筋では、末梢神経障害後に脱神経や脂肪毒性による過剰なコラーゲン沈着があるのではないかと仮説を立てた。本研究の目的は、
1 .肥満モデルマウスであるob/obマウスの骨格筋を評価
2 . 脱神経後骨格筋における筋線維、 脂肪細胞蓄積、コラーゲン沈着を評価することである。

[方法]
20匹の057/8l6-01)/0bマウス(10週齡、雄)(ob)およびコントロールとして同数のC57/BL6マウス(con)を用いて実験を行った。ペントバルビタール腹腔内投与による麻酔を行い、体重および筋湿重量を測定した後に後肢より前脛骨筋および腓腹筋を採取した(n=5)。 腓 腹 筋は新鮮凍結切片とし、 nicotinamide adeninedinucleotide-tetrazolium reductase染色、 Piero-Siriusred染色行った。 組織学的評価としてそれぞれ無作為1 5 視野で筋線維タイプごとの断面積やコラーゲン面積を計測し、 type Iグルーピングについても測定した。また免疫組織学的評価では、 P e r i l i p i n 1 、 type Iコラーゲンの免疫染色を行い、同様に脂肪細胞数、コラーゲン面積を測定した。さらにS i r c o 】コラーゲン分析では、前脛骨筋を用いて骨格筋内のコラーゲン量を測定した。
また神経損傷モデルとして、 過去の報告に準じて、マウスの坐骨神経に対する処置を行った。マウスにペントバルビタール腹腔内投与による麻酔を行った後に、右後肢を切開し、 鋭な鑑子で坐骨神経を1 5 秒間摘まむことで神経を挫滅させた。 術後1 、 2 、 4 週(各n = 5 )でSciatic Functional Index ( S F I )を用いた神経機能評価を行った後に、同様に骨格筋の採取、 評価を行った。 統計学的評価はM ann-Whitney U検定を用いてo b / o bマウスとコントロールマウスとの2 群間比較行った。さらにKruskal Wallis検定とそれに続くSteel-Dwass検定を利用して、 神経損傷前後におけるo b / o bマウスとコントロールマウスの多重比較を行った。 P < 0 . 0 5を統計学的有意とした。

[結果]
O b / o bマウスの体重は4 1 . 9 ± 2 . 3 g (平均土標準偏差)はコントロールマウス( 2 5 . 4 g士1 . 2 g )と比較して有意に重いにも関わらず、 o b / o bマウスの前脛骨筋および腓 腹 筋の筋湿重 量 (それぞれ3 5 . 3 ± 2 . 1 m g 、 9 7 . 5 ± 9 . 3 m g )はコントロールマウス
( 4 7 . 9 ± 2 . 7 m g 、 1 2 7 . 9 ± 7 . 9 m g )と比較して有意に小さかった。 組織学的評価では、 o b / o b マウスの骨格筋でtype U 線 維断面 積が有意に小さく ( o b : 1459 . 0 ± 392 . 2 pm 2 、 con: 2355 . 0 ± 6 10 . 0 pm 2 ) . type Iグノレーヒ。ング率が高かった
( o b : 7 . 0 ± 5 . 1 % 、c o n : 1 . 4 ± 1 . 7 % ) oさらに骨格筋内の脂肪細胞およびコラーゲン断面
積はo b / o bマウス(それぞれ5 . 2 ± 1 . 5 、 7 . 0 ± 5 . 1 % )でコントロールマウス( 1 . 4 ± 0 . 5 、
3 . 1 ± 1 . 9 % )と比較して有意に増加していた。免疫組織染色におけるtype Iコラーゲンの断面 積もo b / o bマウスで有意に増加していた( o b : 4 . 4 5 ± 0 . 6 1 % 、 c o n : 3 . 0 4 ± 0 . 4 2 % ) 。コラーゲン分析でも同様にo b / o bマウスでコラーゲン量の有意な増加を認めた(ob:4.7±0.3%、con:3.0±0.4%)o
神経損傷後のS F Iでは、 両群ともに損傷直後に最も低下し、その後徐々に改善を
認めた。いずれの時期においても2 群間のS F Iに有意差は認めなかった。しかし、受傷4 週後の筋線維断面積の健側比ではtype I 線維に有意差を認めなかったが( o b : 8 . 0 ± 0 . 9 、c o n : 8 . 6 ± 0 . 1 ) 、type l l 線維はo b / o bマウス( 7 . 1土7 . 0 )でコントロールマウス( 8 . 3 ± 0 . 9 )と比較して有意に小さく、さらにtype Iグルーピング率が増加していた。再神経支配後の骨格筋では両群ともに脂肪細胞数および筋線維間のtype 1コラーゲンが増加しており、 特にo b / o bマウスで顕著であった( o b : 5 . 9 ± 0 . 5 % 、 c o n : 4.0±0.5%)。

[考察]
Ob/obマウスにおける骨格筋の特徴
本研究では肥満モデルとしてo b / o bマウスを用いたが、 肥満で肝臓や心臓に生じる異所性脂 肪沈着が、今回o b / o bマウスの骨格筋でも生じていた。したがってo b / o bマウスは骨格筋における脂肪毒性に暴露されたモデルとして適当であると考えられた。 O b / o bマウスの骨格筋では筋線維間のtype Iコラーゲンの増生が生じ、またtype I I 筋線維断面積の減少、 骨格筋萎縮がみられた。これらの結果は過去に報告された/カレたr oにおける肝臓での研究や肥満患者における肝臓、心臓での研究と類似しており、 肥満患者における骨格筋では脂肪毒性による慢性炎症によって萎縮をきたした可能性がある。実際、 肥満成人では大腿四頭筋の筋力が低下していたとする報告もある。
O b / o bマウスとコントロールマウス間における脱神経および再神経支配時の骨格筋
筋線維typeの違い
過去の臨床研究で、末梢神経疾患の術後に神経再生が生じているにも関わらず、肥満患者では機能回復が不良であったとする報告がある。Rohらは肥満と密接に関連するメタボリックシンドローム患者では、手根管症候群術後のピンチカや手指機能の回復が遅延したと報告している。またBurgstallerらは非肥満患者と比較して
肥満患者では腰部脊柱管狭窄症の手術加療後の回復が不良であったと報告している。これらの報告から、肥満では神経再支配過程の回復不良に関与して二至巴堂里が示唆される。本研究における神経損傷後の機能評価では、 術後4 週時のo b / o bマウス骨格筋ではtype U 線維の断面積低下やtype Iグルーピング率および筋線維間のコラーゲン沈着が増加しているにも関わらず、 S F Iでは2 群間に有意差を認めなかった。 一 般 的にtype I 線 維は抗重力筋とされるが、今回type I 線 維の回復には差がなく、このことがS F Iで差がみられなかった要因かもしれない。 一方type l l 線維は速筋として骨格筋筋力と関連し、 type Iグルーピングは脱神経や再神経支配過
程における加齢との関連性が報告されている。本研究では筋力測定は行っていないが、 o b / o bマウスにおける神経損傷後のtype I I 線維断面性の低下やtype Iグルービング率の増加から、 肥満患者では神経損傷後の筋力改善不良が潜在している可能性が示唆された。
脱神経後の骨格筋線維間のコラーゲン沈着
神経損傷後に筋線維間にコラーゲン沈着が増加することは知られている。本研究では同様の結果が得られ、 特にo b / o bマウスで顕著であった。 線維化は細胞外マトリックスへのコラーゲンの過剰な蓄積と定義され、 肝臓や心臓といった様々な組織で機能障害を生じることが報告されている。心筋線維では心筋のstiffnessを引き起こし、心筋の拡張障害や機能不全を生じさせる。 神経損傷後に筋線維間にコラーゲン沈着が増加することは過去にも報告されている。本研究でも同様に神経損傷後の骨格筋ではコラーゲン沈着が増加しており、 特にo b / o bマウスで増加が顕著であった。 骨格筋における線維化の病理学的所見は他の臓器ほど研究されていないが、骨格筋の線維化は筋ジストロフィーや筋炎、外傷後にも線維化は生じ、 骨格筋内へのコラーゲンの過剰な蓄積は、心筋同様に骨格筋のstiffnessを引き起こし、収縮力低下に寄与しているかもしれない。

[結論]
本研究において、 神経損傷後のo b / o bマウスの骨格筋では、 type I I 線維断面積の有意な低下だけでなく、 type Iグルーピング率やコラーゲン沈着の有意な増加がみられた。これらの結果から、 肥満患者では末梢神経疾患治療後の筋機能が十分に改善せず、治療成績が不良となる可能性が示唆された。

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