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オンラインによる「JICA水産分野留学生向け共通プログラム : 日本の開発経験」第1回の実施

松原, 花 石崎, 宗周 本田, 勝 名古屋大学

2023.03

概要

Journal of
International Cooperation for
Agricultural Development

J Intl Cooper Agric Dev 2022; 21: 2–4

 JICA 研修報告 

オンラインによる「JICA 水産分野留学生向け
共通プログラム―日本の開発経験―」
第 1 回の実施
松原 花 1)・石崎宗周 2)・本田 勝 3)
1)(一社)マリノフォーラム 21
2) 鹿児島大学 水産学部
3) 独立行政法人国際協力機構 経済開発部 農業農村開発第 1 グループ 第 2 チーム

論文受付:2022 年 4 月 10 日 掲載決定:2022 年 6 月 29 日

1.「JICA 水産分野留学生向け共通プログラム―日本の
水産開発経験―」概要

JICA は途上国の発展への貢献及び親日派・知日派

通プログラム」及び共通プログラムに先立つ試験的な
試みとして実施されたオンライン講義「日本の開発経験」
の開催の経緯と概要について報告する。

人材の育成強化を目的とし、各大学との連携・協働を
強化するための JICA 開発大学院連携構想を 2018 年に

2.「JICA 水産分野留学生向け 共通プログラム」の形成

打ち出した 。JICA 経済開発部でも同構想に基づいて

本プログラムの形成に当たり、JICA 経済開発部は国

「農林水産分野人材育成計画 2020-2030」を策定し、同

内の水産分野関連大学を対象として 2020 年 7 月に「水

計画を実現すべく「Agri-net プログラム」を 2020 年度か

産分野における大学─ JICA 連携に関する説明会」を開

ら本格開始した。開発大学院連携構想では各領域にお

催し、プログラムの構想を提示した。説明会後、プロ

ける「日本の開発」に関し、大学との協働により、すで

グラムの企画・運営への参加意思を示した教職員の中

に多くの大学で行われている各種の人材育成プログラ

から、特に JICA の研修や留学生の受入の経験を多く持

ムの充実(日本の近代化と ODA の経験に係る科目の追

つ 5 名にコアメンバーとして参加いただき、オンライ

加や改編)を図ることを目指している。上記の JICA の

ンでのコアメンバー会議を通じて本プログラムの形成

人材育成方針の中で、水産分野では 2020 年から 10 年間

を進めた。コアメンバーでの協議に基づき、プログラ

で計 100 名の長期研修員受入を予定している。全国各

ムの目的は「出席者が日本の開発経験と今後の課題に

地の大学に在籍する研修員を効果的に育成するために

ついて学び、帰国後に自国で活用できる知見を得ること」

は、自らの専門以外についても広く日本の水産開発経

及び「研修員同士の交流を通じたネットワーク形成を促

験を学ぶ機会や、研修員同士のネットワーク強化が求

進すること」の 2 点とした。開催時期は 2021 年度秋入

められることから、本プログラム形成の着想に至った。

学者が出席できるよう 11 月に決定した。当初は鹿児島

1)

本 報 告 で は、2021 年 11 月 22 日 ∼ 23 日 に 鹿 児 島 大

大学水産学部が受入先となり、近隣の漁業協同組合や

学、北海道大学、東京海洋大学、東海大学、三重大学、

養殖生簀など水産関連施設の見学、学生同士のディス

(一社)マリノフォーラム 21 の協働に基づいて実施され

カッション等を含めた 1 週間程度の合宿形式のプログラ

た第 1 回「JICA 水産分野留学生向け(以下、研修員)共

ムを計画していたが、新型コロナウイルス感染状況を

2 J Intl Cooper Agric Dev 2022

鑑み、本年度の開催は Web 会議システム Zoom を用い

学から計 15 名の出席となった。

たオンライン形式へと変更した。オンライン形式への

2021 年度の共通プログラムの内容は表 2 に示す通り

変更に伴い、視察等の行程は省略し、2 日間のプログ

である。研修員は事前に JICA の作成した日本の水産

ラムを再構成した。

業や水産資源管理に関する教材を基に事前学習を行い、
プログラム初日には自国の水産業のプレゼンテーショ

3.オンライン講義「日本の水産開発経験」の開催

ンを行った。その後、事前学習での学びを体系的に理

共通プログラムの内容を検討する傍らで、試験的な

解することを目的として、現在の日本の水産業の動向

試みとして 2021 年 6 月 27 日(日)に Zoom を用いたオン

に関する講義及び、縄文時代から続く日本の水産物利

ライン講義「日本の水産開発経験」を実施した。本オン

用の歴史に関する講義を受けた。2 日目は初日に学ん

ライン講義の内容は表 1 の通りである。共通プログラ

だ日本の水産開発経験を自国で効果的に活用するため、

ムと同一の目的を設定し、Zoom を用いて、講義と議

持続可能な開発目標(SDGs: Sustainable Development

論を中心とした 1 日のプログラムとしてこれを実施した。

Goals)と水産開発の関わりや、気候変動と水産業・養

出席者は JICA 研修員だけでなく、他の制度を利用す

殖の関わりについて講義を受けた。総合討論では研修

る外国人留学生や、将来的にグローバルに活躍するこ

員が本プログラムを通じて得た学びと、その学びを自

とを望む日本人学生も対象とし、国内 15 大学から計 64

国でどのように活用するかを各自発表し、
「今後の自国

名(外国人学生 38 名、日本人学生 22 名、社会人オブザー

の水産開発に必要なイノベーションは何か」を中心とし

バー 4 名)が出席した。講義後の総合討論では活発な議

た議論を行った。

論が行われ、開催後、出席者からは「水産業の改善に

議論の中では、出席者から特に印象的であった学び

繋がる技術的なアプローチや、具体的な日本の事例を

として日本の共同漁業管理に関する点が多く挙げられ、

学ぶことができた」
「講師と出席者による議論を通じた

自国でも漁業者による参加型資源管理を促進すべく法

双方向による学びが特によかった」等の感想が寄せられ

整備の改善や漁業者組合の強化を行いたいとの意見が

た。

多く述べられた。また、気候変動対応や SDGs への取
組みについても関係者の視点を取り入れた参加型の取

4.「JICA 水産分野留学生向け 共通プログラム」開催

組みを促進したいとの意見も寄せられた。

2021 年度は 11 月 22 日∼ 23 日(2 日間)の Zoom を用

いたオンライン開催となり、カンボジア、ラオス、イ

5.総括

ンドネシア、ミャンマー、ベナン、フィジー、バヌアツ

JICA はこれまでも水産分野において、日本側が研修

等の水産分野を専攻する研修員 9 名の他、農学分野を

内容を企画し研修員を招聘する課題別研修や特定の国

専攻する研修員 6 名のオブザーバーを併せ、国内 12 大

の要望に応える国別研修を実施してきたが、本邦へ留

表1 オンライン講義「日本の水産開発」プログラム内容
月日

6/27

プログラム

担当・講師

開講式、コース概要説明

石崎宗周(鹿児島大学)

日本の水産業と水産行政

牧野光琢(東京大学)

日本の水産業の概要と特徴、日本の水産業の発展史、日本の水
産行政(予算規模、漁業権の法的分類等)
漁業協同組合

牧野光琢(東京大学)

漁業協同組合の成り立ち、漁業協同組合の概要、漁業協同組合
による資源管理事例
日本の養殖技術

吉松隆夫(三重大学)

日本の内水面・海面養殖の概要、発展の歴史、養殖技術の特徴

JICA の水産協力
JICA の技術協力の種類と特徴、案件形成の流れ

三国成晃(JICA)

総合討論

石崎宗周(鹿児島大学)

J Intl Cooper Agric Dev 2022 3

表2 「JICA 水産分野留学生向け 共通プログラム」第 1 回 行程表
月日

11/22

プログラム

担当・講師

開講式、コース概要説明

石崎宗周(鹿児島大学)

出席者による自国の水産業の紹介
現代水産業の動向①

佐野雅昭(鹿児島大学)

国内の水産物消費の傾向、養殖業の動向
現代水産業の動向②

松石 隆(北海道大学)

国際的な水産資源の動向、水産資源管理、漁業経営、漁業協同
組合、漁業振興と東日本大震災からの復興
日本の水産業・養殖の歴史

吉松隆夫(三重大学)

日本の水産業(漁獲漁業,養殖業)の現状、近代水産業の発展史、
日本の水産業の未来

11/23

SDGs と水産開発
SDGs の概要、水産開発との関わり

石川智士(東海大学)

SDGs 達成のための国内の取組み
SDGs 達成に向けた日本の取組み

石川智士(東海大学)

気候変動が水産業・養殖に与える影響

吉松隆夫(三重大学)

気候変動による水圏生物への影響、日本国内における影響例と
その対応策
総合討論

石崎宗周(鹿児島大学)

学中の長期研修員全員を対象とした研修の実施は初の

親日家育成の場となることにも期待したい。また、新

試みであった。開催後のアンケートでは「本プログラム

型コロナウイルス感染症の影響が収束した場合は、当

を通じて自国で役立つ知見を得られたか」という問い

初の予定通り合宿形式でのプログラム開催を計画して

に対し回答者の 75%(9 名)が「強くそう思う」、25%

いることから、現地の視察や対面形式でのディスカッショ

(3 名)が「そう思う」と回答しており、1 つ目の目的で

ンを通じた新たな学びが生まれることも予想される。

ある「出席者が日本の開発経験と今後の課題について

また、本プログラムは開発大学院連携の一環として

学び、帰国後に自国で活用できる知見を得る」につい

鹿児島大学を始めとする多くの大学との協働を通じて

ては達成できたと考えられる。一方で、
「研修員同士の

開催されたことから、幅広い知識と経験を有する講師

交流を通じたネットワーク形成を促進する」目的につい

陣に恵まれたことに加え、JICA と国内の水産分野関連

ては、オンライン開催となったことで出席者同士のコミュ

大学の連携強化にも大きく寄与した。共通プログラム

ニケーションを十分に促進できなかったことは今回の

の形成にご助言をいただいたコアメンバー各位、2021

課題であった。また、オンライン開催となったことで

年 6 月開催のオンライン講義および 11 月開催の共通プ

現場視察が行えず、座学のみの学びとなったことも今

ログラムの講義を担当いただいた講師各位、プログラ

回の課題である。

ムの広報にご支援をいただいた各大学の留学生受入担

本プログラムは 2022 年度以降も年 1 回の継続的な開

当者に深く感謝の意を表する。

催を予定している。本邦滞在中は複数年度の出席(修
士課程学生は 2 回、博士後期課程学生は 3 回)も歓迎し、
日本の文化の一つとしての先輩・後輩間の情報交換を
通じた専門的な技術や知識の相乗的な学びのみならず、

4 J Intl Cooper Agric Dev 2022

1) JICA 開発大学院連携プログラム概要 : https://www. ...

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