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低弾性率チタン合金製ロッキングプレートによる家兎脛骨骨切り部の骨癒合促進効果

古口, 昌志 東北大学

2023.03.24

概要

博士論文

低弾性率チタン合金製ロッキングプレートによる
家兎脛骨骨切り部の骨癒合促進効果

東北大学大学院医学系研究科医科学専攻
外科病態学講座整形外科学分野
古口昌志
1

目次
1.

要約 ···························································································· 3

2.

略語 ···························································································· 5

3.

研究背景 ······················································································ 6
3-1. 骨折治療と社会との関わり ·························································· 6
3-2. プレート固定による骨折治癒過程 ················································· 7
3-3. 整形外科インプラントに利用される金属材料 ·································· 8
3-4. TiNbSn 合金の特徴 ······································································ 9

4.

研究目的 ·····················································································11

5.

研究方法 ···················································································· 12
5-1. チタン合金製プレートの作成 ····················································· 12
5-2. レーザー顕微鏡によるプレートの表面解析 ··································· 13
5-3. 家兎脛骨に対する手術手技 ························································ 13
5-4. micro CT(computed tomography)による画像解析 ···························
5-5. 組織形態計測 ··········································································
5-6. 力学試験 ················································································
5-7. 統計処理 ················································································

6.

15
16
17
18

研究結果 ···················································································· 19
6-1. レーザー顕微鏡によるプレートの表面解析 ··································· 19
6-2. 単純 X 線写真 ········································································· 19
6-3. micro CT による画像解析 ··························································· 20
6-4. 組織形態計測 ·········································································· 21
6-5. 力学試験 ················································································ 22

7.

考察 ·························································································· 23

8.

結論 ·························································································· 28

9.

用語の説明 ················································································· 29

10. 参考文献 ···················································································· 32
11. 謝辞 ·························································································· 40
12. 図 ····························································································· 41

2

1. 要約
【背景】金属プレートは骨折治療の内固定用インプラントとして広く用いられている。
プレートのスクリューホールとスクリューヘッドが一体化するロッキングプレート
システムは、より強固な固定性を保持することが可能であり、現在の骨折内固定材の
主流となっている。骨片間の動きはインプラントの剛性に依存するが、プレートの素
材となる金属材料の最適な弾性率はまだ明らかではない。骨折治療によく用いられる
金属材料である工業用純チタン(Commercially pure titanium、以下 CP-Ti)や Ti-6Al-4V
合金のヤング率は、約 110 gigapascal(GPa)であり、ヒトの皮質骨(11—20 GPa)より
もはるかに高い。皮質骨とインプラントのヤング率の乖離が大きくなると、荷重伝達
の不均衡により一部の骨に荷重がかからず、骨が萎縮し骨強度が低下する。この問題
の解消のために、東北大学金属材料研究所の花田らは、ヒト皮質骨のヤング率(11—20
GPa)に極めて近い約 40 GPa の Ti-33.6Nb-4Sn 合金(以下 TiNbSn 合金)を開発した。
本研究の目的は、TiNbSn 合金製と従来の CP-Ti 製のロッキングプレートで固定した
家兎脛骨骨切りモデルの骨癒合過程と骨強度の違いを調査することである。
【方法】TiNbSn 合金製(49.1 GPa、TiNbSn 合金群)と CP-Ti 製(107GPa、CP-Ti 群)
の 8 穴プレートを使用した。成熟日本白色家兎(オス)36 羽の右脛骨にプレートを設
置し、スクリュー6 本で固定した後、線鋸で骨切りし、1 mm 分の間隙を作成した。術
後 4、6 週で安楽死させ、右脛骨を摘出した。プレートを抜去後に、各群 12 羽で microcomputed tomography(CT)による仮骨体積および仮骨架橋幅の計測と、3 点曲げ試験
3

による最大荷重と剛性の測定を行った。加えて術後 4 週で、各群 6 羽で組織学的評価
を行った。
【結果】偽関節やインプラントの破損は見られなかった。術後 4 週での micro-CT に
よる仮骨評価では、仮骨体積と仮骨架橋幅ともに TiNbSn 合金群で有意に大きかった。
術後 4 週の組織学的評価では、TiNbSn 合金群は新生骨形成が促進されるとともに軟
骨組織は吸収され、オステオカルシン陽性細胞数が多かった。術後 4 週の 3 点曲げ試
験では、最大荷重、剛性ともに TiNbSn 合金群が有意に大きかった。
【結論】家兎脛骨骨切りモデルにおいて、低ヤング率の特徴を有する TiNbSn 合金製
ロッキングプレートが従来の CP-Ti 製プレートより早期に骨癒合を促進し、骨切り部
の強度を高めることが明らかとなった。TiNbSn 合金は、骨癒合を早期に完成させるロ
ッキングプレートの内固定材料として、CP-Ti より有用であると考えられる。

4

2. 略語
元素記号
Ti(titanium : チタン)
Nb(niobium : ニオブ)
Sn(tin :スズ)
Al(aluminium : アルミニウム)
V(vanadium : バナジウム)
CP-Ti(commercially pure titanium : 工業用純チタン)

単位
GPa(gigapascal : ギガパスカル、109 N/m2)
HU(Hounsfield Unit)

方法
CT(computed tomography : コンピュータ断層撮影)

5

3. 研究背景
3-1. 骨折治療と社会との関わり
近年、我が国では高齢化が急速に進んでいる。平均寿命は 2020 年には男性が 81.6
歳、女性は 87.7 歳となり、高齢化率は 28.4%と世界で最も高い 1)。健康日本 21(第 2
次)は、
「平均寿命の増加分を上回る健康寿命の増加」を第一の目標に掲げている 2)。
超高齢化に伴い、要介護・要支援者数も年々増加し、2018 年でその数は 658 万人にの
ぼる。要介護・要支援の原因の約 4 分の 1 に転倒・骨折が関与している 3)。さらには、
約 1300 万人存在すると推測される骨粗鬆症患者は、通常骨折が生じない軽微な外力
でも、脆弱性骨折を引き起こす 4)。骨強度の弱さから通常の手術を行っても、骨癒合
期間の遷延や偽関節になるリスクが高くなる 5)。これらの治療のための安静期間の延
長や、廃用性筋委縮が進行することが、健康寿命の短縮につながり得る。したがって、
いかに短期間に良好な骨癒合を得るかという骨折治療も、健康寿命の延伸の重要な要
素となる。その対策の一つとして、手術に用いられる骨接合用インプラントの機能向
上が考えられる。強固な固定性を備え、骨折治癒過程を促進することができれば、術
後早期にリハビリテーションを開始し、短期間で社会や家庭に復帰することが可能と
なる。骨折治療の成績向上は、健康寿命の延伸のみならず、医療費削減や介護保険財
政の安定化に貢献すると考えられる 6)。

6

3-2. プレート固定による骨折治癒過程
金属プレートは骨折治療の内固定用インプラントとして広く用いられている。従来
のプレートはスクリューの挿入によって、プレートを骨に押し付け、摩擦力を生じさ
せることで固定性を得る。一方、現在主流となっているロッキングプレートは、スク
リューヘッドがプレートに固定され、プレートが骨を圧迫することなく骨折部を固定
可能である(図 1)。骨とプレートの接触が少なくなり、骨膜の血管新生の阻害を予防
することができる。また優れた固定力により、スクリューのゆるみ(loosening)は減
少し、偽関節や癒合不全の発生率の低下につながっている 7)。
骨折の治癒過程には、一次性骨癒合と二次性骨癒合の 2 つの様式がある。骨折部に
間隙がない場合は、絶対的安定性により一次性骨癒合を生じる。一次性骨癒合は未熟
な骨組織である仮骨を伴わず、骨単位で骨折部を貫通して再造形が生じ、直接癒合す
る 8)。一方、解剖学的整復や骨片間の接着がない場合は、相対的安定性により仮骨形
成を伴う二次性骨癒合のプロセスへ誘導される 9)。二次性骨癒合の骨折治癒過程を図
2 に示す。骨片間の適切な動きは仮骨形成を刺激し、骨癒合を促進する 10)11)。しかし、
骨片間の動きが大き過ぎる場合は、仮骨の体積は増えても架橋は起こらない。解剖学
的整復や骨片間の接着がなく、かつ骨折間の動きがない場合は、骨片間の間隙に仮骨
が形成されず、骨折治癒は遷延し 12)13)、遷延癒合や偽関節の状態となる。

7

3-3. 整形外科インプラントに利用される金属材料
ステンレス鋼、純チタン(commercially pure titanium (CP-Ti))や Ti-6Al-4V 合金は高
い強度と生体適合性、優れた耐食性を有しているため 14)15)16)17)、整形外科における骨
折治療や歯科治療の金属材料として広く使用されてきた。Ti-6Al-4V 合金と CP-Ti の
ヤング率(「用語の説明」参照)はそれぞれ 117 GPa と 107 GPa であり、ステンレス
鋼(205 GPa)より低い 18)19)が、ヒトの皮質骨(11—20 GPa)よりもはるかに高い 20)。
皮質骨とインプラントのヤング率の乖離が大きくなると、荷重伝達の不均衡により一
部の骨に荷重がかからない=「応力遮蔽」を誘発する 21)22)23)。応力遮蔽により荷重が
かからない骨は萎縮し、骨強度が低下する。人工股関節の場合、骨萎縮のため大腿前
面痛が生じたり、転倒した際には骨折リスクが増大する。また、金属周辺の骨が萎縮・
減少するため、人工股関節の再手術の際には、しばしば骨移植を要し、手術侵襲が増
大する。ヤング率が大きな骨接合用インプラントは、仮骨形成の阻害や骨癒合遅延、
偽関節など成績不良につながると報告されている

24)25)26)27)28)

。一方、ヤング率の低い

チタン合金製の髄内釘は、応力遮蔽による骨萎縮を妨げ、骨癒合を促進することが報
告されている 29)30)。

8

3-4. TiNbSn 合金の特徴
応力遮蔽や骨癒合不全などヤング率が高い骨接合用インプラントの問題を解決す
るために、約 40 GPa の低ヤング率を持つ新しい β 型 TiNbSn 合金が東北大学金属材料
研究所で開発された

31)32)

。本合金は、Ti-6Al-4V 合金と同等の引っ張り強度(用語の

説明」参照)を持ち、適切な加熱処理により Ti-6Al-4V 合金よりも高い強度を持つ 33)
(図 3)。Ti-6Al-4V 合金と同等の優れた生体親和性と、極めて低い細胞毒性も報告さ
れている 32)。本合金を酢酸および硫酸で陽極酸化(用語の説明」参照)すると、金属
表面に多孔性の二酸化チタンの被膜が生成され、生体内での高いハイドロキシアパタ
イト形成能、強い骨固着能、優れた骨誘導能を付与することも可能である

34)35)36)37)



酒石酸ナトリウムで陽極酸化すると、紫外線照射条件下に抗菌活性を付与可能であり
38)

、加えて耐摩耗性が向上し、低ヤング率も維持できる

39)40)

。150℃以上の温度で加

熱処理すると、加熱処理した部分から近い順にα、α+β、β相に傾斜的に相変態(用
語の説明」参照)され、同一インプラント内で温度依存性にヤング率を変化させるこ
とが可能な傾斜機能特性も有している 41)。現在、これらの特性を利用した本金属製の
人工股関節の臨床応用が進められている 42)。人工股関節は骨盤に設置するカップと大
腿骨に挿入するステム部分からなる。大きな荷重がかかるステム近位部に高いヤング
率と強度を持たせ、遠位になるにつれて徐々にヤング率を下げて応力遮蔽を減少させ
ることで、強固な固定と大腿前面痛の軽減が期待できる。骨折治療においては、髄内
釘を用いた実験から、TiNbSn 合金製髄内釘が、チタン合金やステンレス鋼よりも骨癒
9

合に有効であることが示されている

43)44)

。また TiNbSn 合金製と Ti-6Al-4V 合金製の

従来型のプレート(用語の説明」参照)を使用した家兎脛骨骨折モデルの研究でも、
TiNbSn 合金製の方が骨癒合に優れていることが報告された

45)

。プレートでは、髄内

釘では不可能であった骨片間の回旋方向の動きを制御でき(図 4)、髄腔内の骨折治癒
過程を評価することができた(図 5)。しかし、従来型プレートはロッキング機構(用
語の説明」参照)を伴っていなかったため、荷重負荷応力がスクリューとプレートの
間に分散されていた可能性がある。低ヤング率の金属プレートの厳密な効果を評価す
るためには、ロッキング機構を備えたシステムが望ましい。

10

4. 研究目的
本研究の目的は、家兎脛骨骨切りモデルを従来から使われている CP-Ti 製と新規に
開発した低ヤング率の TiNbSn 合金製のロッキングプレートで固定し、TiNbSn 合金プ
レートの骨癒合に与える影響および骨癒合促進効果を評価することである。

11

5. 研究方法
5-1. チタン合金製プレートの作成
本研究では、すでに骨折治療で使用される CP-Ti 製ロッキングプレートと新規に開
発された TiNbSn 合金製のロッキングプレートを、家兎脛骨骨切りモデルに使用した。
従来型の CP-Ti 製のロッキングプレートは、8 穴の 2.0/ 2.3 TriLock plate (Medartis AG,
Basel, Switzerland)、TiNbSn 合金製のロッキングプレートは東北大学金属材料研究所と
ミズホ株式会社(東京、日本)とともに作成した。
純 Ti(純度 99.9%)、純 Nb(純度 99.9%)および純 Sn(純度 99.9%)から、真空中
で高周波誘導溶解法を用いて、Ti-33.6Nb-4Sn 合金の鋳塊を作成した。合金組成を均質
化するために、この鋳塊を数ブロックに細断後真空アーク溶解で再溶解した。再溶解
した鋳塊を 1100℃の熱間鍛造で直径 38 mm の丸棒にした後に水流内で急冷した。酸
化表面を除去するために直径 34 mm まで削り、プレス機によって冷間鍛造を行い直
径 22 mm にした。最後に 5 軸加工機でプレート形状に切削した。市販の 2.0/ 2.3 TriLock
plate と同様のデザインとなるように長さ 50 mm、幅 5 mm、厚さ 1.3 mm とし、家兎
脛骨用プレートとした。各プレートの外観を図 6 に示す。それぞれのプレートのヤン
グ率は、自由共振法 41)で計測した。CP-Ti が 107 GPa、TiNbSn 合金が 49.1 GPa であっ
た。両プレートの固定には市販のチタン合金製の 2.0 TriLock screw (Medartis AG, Basel,
Switzerland) を近位、遠位 3 本ずつ用いた。脛骨の直径に合わせて長さはすべて 12 mm
とした。ミズホ株式会社より、TiNbSn 合金ロッキングプレートの作製について技術支
12

援を受けたが、共同研究における利益相反は生じていない。

5-2. レーザー顕微鏡によるプレートの表面解析
TiNbSn 合金製ロッキングプレートは市販のロッキングプレートと同じ厚さと幅で
作成したが、表面の構造に大きな差異がないこと、亀裂や孔形成など破損がないこと
を確認するため、レーザー顕微鏡 VK-X 150(キーエンス、大阪、日本)を用いてプレ
ート表面の微細構造を観察した 43)。面粗さを評価するパラメータである算術平均高さ
と展開面積比を算出した。算術平均高さは表面の平均面に対する凹凸各点の高低差の
平均値で、展開面積比は計測した断面積に対する表面積の増加率である。

5-3. 家兎脛骨に対する手術手技
実験には日本エスエルシー(浜松、日本)より購入した体重 2.8‒3.5 kg の成熟日本
白色家兎(オス)を使用した。家兎は東北大学大学院医学系研究科付属動物実験施設
で、幅 60 cm×奥行 51 cm×高さ 35 cm の飼育籠に 1 羽ずつ入れて、22 ± 2℃、湿度は
40 ± 20%の環境で飼育した。動物実験は国立大学法人東北大学における動物実験等に
関する規定に基づき、東北大学総長の承認を得て行った(動物実験計画承認番号:2020
医動-141)。
全身麻酔の導入は家兎に 5%セボフルランを吸入させ、塩酸キシラジン 2 mg/kg と
酒石酸ブトルファノール 0.2 mg/kg を静注した。麻酔は 3%セボフルランで維持し、閉
13

創時にカルプロフェン 5 mg/kg を創部に皮下注した。予防的抗菌薬としてセファゾリ
ンナトリウム 30 mg/kg を術前静注した。
図 7 に手術の概要を示す。先ず右脛骨前内側を約 6 cm 展開した。脛骨髄腔の最狭
部の位置(膝関節面から約 60 mm 遠位)で約 10 mm 幅で前脛骨筋と腓腹筋を脛骨か
ら骨膜ごと剥離した後、厚さ 1 mm の刃の振動骨鋸を用いて、前内側面の皮質骨のみ
横断骨切りを行った。次に骨切り部が中央になるようにプレートを設置し、骨切り部
の遠位に 3 本、近位に 3 本のロッキングスクリューを挿入した。いずれのスクリュー
も両側皮質骨を貫通させて挿入した。プレート中央の 2 穴にはスクリューを挿入しな
かった。最後に、幅 1 mm の線鋸を用いて、脛骨後方から横断骨切りを行い、振動骨
鋸で作成した骨切りとつなげて完全に離断し、骨片間に 1 mm の間隙を作成した。骨
折部を生理食塩水で洗浄後、スクリューを締め直し、緩みがないことを確認した。 骨
膜は修復せず、筋膜、皮膚を各々4-0 ナイロン糸で縫合し閉創した。1羽あたりの手
術時間は約 30 分だった。術後は外固定を行わず、全荷重とした。従来型の CP-Ti 製
のロッキングプレートを使用した群を CP-Ti 群、TiNbSn 合金製のロッキングプレー
トで固定した群を TiNbSn 合金群とした。
術後 4、6 週で、チオペンタールナトリウム(40 mg/kg)を静注して安楽死させた。
仮骨周辺の軟部組織を損傷しないように注意して右脛骨を摘出した。生理食塩水を含
んだガーゼで包み、氷で冷却して搬送した。検体は 4℃で保存し、24 時間以内に放射
線学的画像評価と力学試験、また組織形態計測のための脱灰作業を行った 44)。X 線撮
14

像後にスクリュー6 本とプレートを注意深く抜去した。プレートの表面まで仮骨が覆
っている場合は、プレート表面の仮骨のみ切除した後にプレートを抜去した。本研究
のおおまかな流れを図 8 に示す。

5-4. micro CT による画像解析
micro CT 撮影を術後 4、6 週で行い、骨癒合過程について画像評価を行った(各群
N=6)。小動物用 micro CT 撮影装置・Latheta LCT-200(日立アロカメディカル、東京、
日本)を用いて単純 X 線と CT を撮影した。撮影手順は製造業者の標準プロトコール
に従った

44)

。摘出した脛骨を専用の容器に入れ、単純 X 線写真は前後方向で撮影し

た。CT は骨切り部を中心とした 20 mm の範囲で撮影した。スライス厚は 96 µm、ボ
クセルサイズは 96×96×96 µm3 に設定した。 ...

この論文で使われている画像

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39

11.謝辞

本研究を行うにあたりご指導とご協力を賜りました相澤俊峰教授(東北大学大学院

医学系研究科医科学専攻外科病態学講座整形外科分野)、森

優講師(東北大学病院

整形外科)

、花田修治名誉教授(東北大学金属材料研究所)、正橋直哉教授(東北大学

金属材料研究所)に厚く御礼申し上げます。また実験に多大なご協力を賜りました東

北大学大学院医学系研究科付属動物実験施設のスタッフの方々、東北大学金属材料研

究所のスタッフの方々、東北大学大学院医学系研究科共通機器室実験動物病理プラッ

トフォームのスタッフの方々に御礼申し上げます。

40

12.図

図 1. 従来型プレートとロッキングプレートの固定方法の比較

A:従来型スクリュー、 B:ロッキングスクリュー

スクリューのデザインと作用する力の成分を示す。従来型スクリューは、スクリュー

を締めることで生じる圧迫力によって、プレートの下面と骨表面の間に摩擦力が発生

させて固定される。一方ロッキングスクリューは、スクリューヘッドにねじが切って

あり、プレートの孔にある対応するねじと機械的に結合する。プレートが骨を圧迫す

ることなく固定される。スクリューが産生する軸方向の力はわずかである。

Cronier P: The concept of locking plates. 2010 より改変して引用

図 2. 二次性骨癒合の骨折治癒過程

A:炎症期

骨折により形成された血腫は典型的な炎症のカスケードによって肉芽組織に置換さ

れる。

B:軟性仮骨形成期

外骨膜と内骨膜の前駆細胞が刺激されて骨芽細胞に分化する。骨折間隙から離れたと

ころから膜性骨化によって堤防状の仮骨が形成される。さらに髄腔内も仮骨で満たさ

れる。仮骨内への毛細血管の侵入によって血管の形成が増加する。骨折間隙付近では

肉芽組織が線維芽細胞や軟骨細胞に分化する。

41

C:硬性仮骨形成期

仮骨の辺縁部は膜性骨化、骨折間隙部は内軟骨性骨化によって石灰化した組織(線維

性骨)に置換される。

D:リモデリング期

線維性骨表層の骨吸収と骨単位のリモデリングによって層板骨(皮質骨)に置換され

る。皮質骨は直径約 0.1mm の細い管腔を有する単位(オステオン:骨単位)から形成

されている。

糸満盛憲. AO 法 骨折治療 第 2 版. 2003 より改変して引用

図 3. 主な金属のヤング率と引張強度の関係

純チタン(CP-Ti)と TiNbSn 合金、ヒト皮質骨、Ti6Al4V 合金、ステンレス、Co-CrMn 合金の引張強度とヤング率の関係を図示した。引張強度が大きく、ヤング率が小

さい素材が理想的と考えられている。TiNbSn 合金は加熱処理を行うことにより、破線

両矢印の範囲で引張強度とヤング率の調整が可能である。

正橋直哉.TiO2 をコーティングしたインプラント用 TiNbSn 合金の生体適性.2020

より改変して引用

図 4. 髄内釘固定とプレート固定の比較(骨片間の動きの制御)

A:髄内釘、B:プレート

髄内釘は軸方向、剪断方向の骨片間の動きを制御可能だが、横止めスクリューがない

ため回旋方向の動きは制御できない。一方プレートは、軸方向、剪断方向および回旋

42

方向の骨片間の動きも制御可能である。

図 5. 髄内釘固定とプレート固定の比較(骨折治癒過程の評価部位)

A:髄内釘、B:プレート

髄内釘は髄腔内にインプラントが入っているため、髄腔内の骨折治癒過程は評価でき

ない。一方プレートは、骨外だけでなく髄腔内の骨折治癒過程も評価可能である。

図 6. プレートの外観

A:CP-Ti 、B:TiNbSn 合金

CP-Ti は陽極酸化によるプレート表面の酸化被膜の光の反射により発色している。

図 7. 手術概要

A:家兎の右脛骨に対して手術を行った。脛骨髄腔の最狭部の位置が中央になるよう

にプレートを設置した。

B:プレートの遠位端に 3 本、近位端に 3 本スクリューを挿入した。厚さ 1 mm の刃

の振動骨鋸と幅 1 mm の線鋸を用いて、脛骨後の横断骨切りを行い、骨片間に 1 mm

の間隙(矢頭)を作成した。

図 8. 本研究デザイン

43

図 9. 仮骨架橋幅(Callus bridging width)の模式図

A:Ziocube で作成した 3 次元ボリュームレンダリング画像。模式図でプレートを図示

した。

B:CT 軸位断面像。骨軸を中心に、プレート設置面と反対側の半円から 15°刻みに

12 枚の縦断面像を作成した。

C:縦断面像における仮骨架橋幅の計測例を示す。線維性仮骨による架橋は、CT 値が

1000 HU 以上、1500 HU 未満で架橋ありと判断した。この断面の髄内における架橋は

途中で途切れて、2 ヵ所に分かれている。この断面の架橋幅は、2.8 + 1.5 + 2.1 = 6.4 mm

と計算できる。12 枚の縦断像には合計 13 ヵ所の骨外仮骨と 12 ヵ所の髄内仮骨領域

が含まれている。すべての領域で計測を行い、数値を合計したものを仮骨架橋幅 (mm)

とした。

図 10. 力学試験(3 点曲げ試験)

A:Instron 社製の試験機を用いた。脛骨は後面を下にして置き、骨切り部に 2 mm/分

の速度で荷重をかけた。

B:得られた荷重-変位曲線の 1 例を示す。最大荷重(N)を記録した。剛性(N/m)を

直線部分(線型領域)の傾きとして算出した。

44

図 11. レーザー顕微鏡によるプレートの表面解析

A:CP-Ti、10 倍

C:CP-Ti、100 倍

B:TiNbSn 合金、10 倍

(scale bar = 200 µm)

D:TiNbSn 合金、100 倍 (scale bar = 20 µm)

いずれも亀裂や孔形成は見られなかった。

図 12. 単純 X 線像

A:CP-Ti 群、B:TiNbSn 合金群(術後 4 週)

いずれも仮骨形成が見られた。骨切り部の隙間は、TiNbSn 合金では埋まってきている

が、CP-Ti では隙間が残存している(矢頭)。

C:CP-Ti 群、D:TiNbSn 合金群(術後 6 週)

術後 6 週目には、両群とも全例で骨癒合し、骨癒合不全は見られなかった(各群 N=6)

(scale bar = 10 mm)。

図 13. Micro CT 像

ボリュームデータから Ziocube を用いて再構成した最大径部の矢状断像と冠状断像を

示す。

A:CP-Ti 群、B:TiNbSn 合金群(術後 4 週)

術後 4 週では両群とも骨外仮骨の形成が進んでいた。TiNbSn 合金群では旺盛な髄腔

内仮骨の架橋形成が見られたが(矢頭)、CP-Ti 群では髄腔内仮骨の架橋形成はほとん

45

ど見られなかった。

C:CP-Ti 群、D:TiNbSn 合金群(術後 6 週)

術後 6 週では両群ともに骨外仮骨は架橋していた。髄腔内仮骨の架橋は TiNbSn 合金

群ではリモデリングし、減少していた。CP-Ti 群では髄腔内仮骨の架橋形成が TiNbSn

合金群よりも遅延していた(矢頭)(Scale bar = 2 mm)。

図 14. micro CT による仮骨体積の定量解析結果

A:仮骨全体、B:髄腔内仮骨、C:骨外仮骨(術後 4 週)

術後 4 週で、TiNbSn 合金群は CP-Ti 群に比べて、仮骨全体と髄内仮骨の体積が有意

に大きかった。(** p < 0.01、Student’s t-test、各群 N=6)

D:仮骨全体、E:髄腔内仮骨、F:骨外仮骨(術後 6 週)

術後 6 週で、両群ともに術後 4 週に比べて仮骨体積が減少していた。髄腔内仮骨の体

積は TiNbSn 合金群よりも CP-Ti 群の方が大きかった(** p < 0.01、Student’s t-test、各

群 N=6)。データは平均値±標準偏差で示した。

図 15. micro CT による仮骨架橋幅の定量解析結果

A:仮骨全体、B:髄腔内仮骨、C:骨外仮骨(術後 4 週)

術後 4 週で、TiNbSn 合金群は CP-Ti 群に比べて、全体、髄腔内、骨外すべてにおいて

仮骨架橋幅が有意に大きかった(* p < 0.05、** p < 0.01、Student’s t-test、各群 N=6)。

46

D:仮骨全体、E:髄腔内仮骨、F:骨外仮骨(術後 6 週)

術後 6 週の仮骨全体における仮骨架橋幅は、TiNbSn 合金群が術後 4 週に比べて小さ

くなっていたが、CP-Ti 群は大きくなっていた。全体と髄腔内仮骨の仮骨架橋幅は

TiNbSn 合金群よりも CP-Ti 群の方が有意に大きかった(* p < 0.05、** p < 0.01、

Student’s t-test、各群 N=6)。データは平均値±標準偏差で示した。

図 16. 組織形態計測

ヘマトキシリン・エオジン染色

術後 4 週で、髄腔の中心を通りプレート設置面に垂直な断面で縦切し切り出した。

A:CP-Ti 群、B:TiNbSn 合金群、12.5 倍(scale bar = 2 mm)上では小文字で示してい

ます。

髄腔内の新生骨を矢頭で示す。新生骨の面積を計測した。

C:仮骨全体、D:髄腔内仮骨、E:骨外仮骨、F:プレート設置面の骨切部皮質骨間

全体、髄腔内、プレート設置面側の骨切り部の新生骨面積は、TiNbSn 合金で有意に大

きかった(* p <0.05、Student’s t-test、各群 N=6)。

データは平均値±標準偏差で示した。

図 17. アルシアンブルー染色による軟骨組織計測

術後 4 週で、髄腔の中心を通りプレート設置面に垂直な断面で縦切し切り出した。

矢頭でアルシアンブルー染色性の遺残軟骨を示す。

47

A:CP-Ti 群、B:TiNbSn 合金群、12.5 倍(scale bar = 2 mm)

C:仮骨内の遺残軟骨は TiNbSn 合金群で CP-Ti 群より優位に小さかった

(* p < 0.05、Student’s t-test、各群 N=6)。データは平均値±標準偏差で示した。

図 18. 免疫染色によるオステオカルシンの発現分析

術後 4 週で、髄腔の中心を通りプレート設置面に垂直な断面で縦切し切り出した。

A:CP-Ti 群、B:TiNbSn 合金群、40 倍(scale bar = 500 µm)

C:CP-Ti 群、D:TiNbSn 合金群、200 倍(scale bar = 100 µm)

E:仮骨全体、F:髄腔内仮骨、G:骨外仮骨

すべての領域で TiNbSn 合金群では CP-Ti 群よりもオステオカルシン陽性細胞(茶色)

が有意に多かった(** p < 0.01、Student’s t-test、各群 N=6)。

データは平均値±標準偏差で示した。

図 19. 力学試験

A:最大荷重(術後 4 週)、B:最大荷重(術後 6 週)

C:剛性(術後 4 週)、D:剛性(術後 6 週)

術後 4 週で、最大荷重と剛性は TiNbSn 合金群が CP-Ti 群よりも大きかった。

術後 6 週で、最大荷重は TiNbSn 合金群が CP-Ti 群よりも大きかった(* p < 0.05、

** p < 0.01、Student’s t-test、各群 N=6)。データは平均値±標準偏差で示した。

48

図 20. チタンの構造とチタン合金の種類

チタンは常温では最密六方晶構造のα相、885℃以上の高温では体心立方晶構造のβ

相である。チタン合金の添加元素には、α安定化元素、β安定化元素と中性元素に大

きく分けられる。これらの元素を適切に添加することでα型合金、α-β型合金および

β型合金が作成される。α合金はヤング率が高く、β合金はヤング率が低い。

上田正人. チタン・チタン合金の基礎知識. 2020 より改変して引用

49

図 1.

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図 2.

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図 3.

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図 4.

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図 5.

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図 6.

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図 7.

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図 8.

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図 9.

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図 10.

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図 11.

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図 12.

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図 13.

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図 14.

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図 15.

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図 16.

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図 17.

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図 18.

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図 19.

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図 20.

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