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大学・研究所にある論文を検索できる 「外側性垂直的骨造成モデルを用いた造成骨の多面的解析」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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外側性垂直的骨造成モデルを用いた造成骨の多面的解析

畔堂, 佑樹 大阪大学

2021.03.24

概要

【緒言】
失われた歯槽骨を再生する歯槽骨造成術は,審美的かつ機能的な補綴歯科治療において有用な術式である.歯槽骨造成術は,周囲を骨に囲まれた空間に骨造成を行う「内側性垂直的骨造成」と,母床骨の外側に造成を行う「外側性垂直的骨造成」に分類される.これまでの垂直的骨造成の評価は,周囲を自家骨に覆われた内側性の骨造成モデルで行われており,外側性の骨造成モデルによる評価はほとんど報告されていない.そのため,一定の規格に基づいた比較検討が可能な外側性垂直的骨造成評価モデルを製作し,それを用いて多面的な解析を行うことは,骨再生分野に新たな知見が得られると考えている.

外側性垂直的骨造成は未だ術式が確立されておらず,粘膜からの応力や術後の感染などが原因で,長期安定性を得るのが困難と言われている.そのため,応力に対する抵抗性(力学的強度)や細菌および炎症などに対する抵抗性(生物学的強度)を有した確実な骨造成術の確立が求められている.造成骨の評価は,組織学的解析やエックス線解析が一般的に用いられているが,これらのみで骨の力学的強度や生物学的強度を評価するのは不十分である.

そこで,我々は力学的強度ならびに生物学的強度を評価するパラメーターとして,骨質に着目した.骨質は,骨構造,骨代謝回転,損傷の蓄積,および石灰化により総合的に判断されるものであると定義されている.それらの中で,力学的強度のパラメーターとしては,既に内側性骨造成においてその関連が報告されている骨の基質的解析,すなわちコラーゲン/アパタイトの優先配向で表される骨構造に着目した.生物学的強度のパラメーターとしては,骨形成と骨破壊のバランスの指標である骨代謝回転に着目した.これは,骨代謝回転が感染に対する抵抗性(恒常性),つまり生体防御機構が正常に機能しているかを解析することに繋がると考えたからである.しかし,その骨代謝回転の解析方法は定まっていないのが現状であり,骨の生物学的強度を解析するために,実験方法の確立が必要であると考えられる.

以上を背景に,本研究では,外側性垂直的骨造成に対し力学的および生物学的強度評価を含めた骨質解析により外側性垂直的造成骨が良好な骨質を獲得しているかを検証することを目的とし,まず,外側性垂直的骨造成モデルの確立を試み,次に,外側性垂直的造成骨の骨質を含めた多面的解析を行った.

【材料と方法】
CAD/CAMシステムを用いて,直径6mm,高さ3mmになるように,チタンドーム型バリアメンブレン(以下チタンドーム)を製作した.10週齢SDラットの頭蓋骨矢状縫合部に直径5mmの頭蓋骨欠損を形成した.欠損上部に,吸収性材料としてβ-TCP(オスフェリオン®),非吸収性材料として牛骨(bovinebonemineral(Bio-Oss®),以下BBM),および遅延性吸収性材料として炭酸アパタイト(Cytrans®,以下CO3Ap)をそれぞれ充填したチタンドームを設置し,縫合固定した.

1.術後16週にラット頭蓋底を摘出し,造成骨の試料を製作した.各試料はµCT解析にて母床骨からの造成部の高さを測定し,さらに造成部の体積,骨塩量,骨密度を測定した.

2.組織切片を製作後,HE染色にて新生骨の評価を行い,TRAP染色にて破骨細胞の有無を確認した.

3.複屈折顕微鏡を用いて,新生骨のコラーゲンの配向性解析を行った.

4.造成部の水平断をSEMにて観察後,ナノインデンテーションにて表面硬さを計測した.

5.造成後16週経過したラットから,チタンドームのみを撤去し,術後2日目から造成部にLPS(200µg/Day)を21日間局所注射した.その後,頭蓋骨を摘出し,造成部のµCT解析および組織学的解析を行った.TRAP陽性多核巨細胞数の計測を行い,LPSに対する骨吸収反応を解析した

【結果】
1.µCTによる画像解析の結果,各材料の16週時点における,造成骨の高さ,骨塩量,骨体積,および骨密度に有意差を認めなかった(P=0.650,P=0.777,P=0.130,P=0.122).

2.HE染色の結果,BBM群とCO3Ap群は,母床骨付近にのみ新生骨を形成し,広範囲で顆粒が残存していた.一方,β-TCP群は補填材のほとんどが骨に置換し,母床骨に対し,外側性かつ垂直的に顕著な新生骨の形成を認めた.また,造成部における新生骨の面積はβ-TCP群が他材料群と比べ,有意に広かった(P<0.0001).そして,TRAP染色の結果,β-TCP群は他材料群と比べ,TRAP陽性多核巨細胞を有意に多く認めた(P<0.0001).

3.複屈折顕微鏡観察の結果,BBM群およびCO3Ap群では造成骨に規則的なコラーゲン配向を認めなかった.同様に,β-TCP群の造成骨内部および造成骨頂点は規則的なコラーゲン配向を認めなかったが,それ以外の造成骨表層はドーム接線に近似した角度で,かつ,母床骨と連続したコラーゲン配向を認めた.

4.SEM画像観察の結果,BBM群およびCO3Ap群では顆粒が多く残存していた.一方,β-TCP群では顆粒がほとんど認められず,また,造成骨内部では疎な組織が,造成骨表層では密な組織が観察された.ナノインデンテーションの結果,顆粒が多く残存するBBM群とCO3Ap群では,造成骨と骨補填材顆粒の硬度に有意差を認めなかった(P=0.912,P=0.537).一方,補填材がほとんど置換していたβ-TCP群では,骨補填材顆粒の硬度よりも造成骨の硬度は有意に低かったが(P<0.0001),造成骨表層の硬度は造成部内部よりも有意に高く(P<0.0001),同一の造成骨内でも表層と内部で硬度の違いが認められた.

5.LPSを21日間注射した造成骨のHE染色の結果,いずれの骨補填材を用いた造成骨においても,ドーム状の造成骨形態を維持することが明らかとなった.しかし,TRAP染色の結果,TRAP陽性多核巨細胞は,BBM群およびCO3Ap群では母床骨付近の新生骨と補填材の境界部に,β-TCP群では造成部の表層,特に造成部頂点付近に集中して分布していた.

【結論】
本研究で検証した一定の規格に基づいた外側性垂直的骨造成モデルは,力学的強度ならびに生物学的強度を含む骨質の多面的解析に有用であることが明らかとなった.本モデルにおいて,各種骨補填材を用いた造成骨は,µCTによる骨体積などの画像解析では差を認めないが,骨質の解析結果では異なることが明らかとなった.本研究では,吸収性材料であるβ-TCP群のみに適切なリモデリングを伴った骨置換を認め,特に,チタンドームに沿った新生骨は,母床骨と連続した骨質を獲得していることが明らかとなった.さらに,連続した骨質を獲得した新生骨は,それ以外の新生骨と比べ,力学的および生物学的な強度が高い可能性が示唆された.

本研究から,造成骨の骨質の評価が重要であり,力学的強度および生物学的強度を含む多面的解析を行うことで,外側性垂直的造成骨の骨質を解析できることが示された.

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