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大学・研究所にある論文を検索できる 「p21発現の欠損は軟骨細胞の増殖を通じて軟骨組織修復を促進する」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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p21発現の欠損は軟骨細胞の増殖を通じて軟骨組織修復を促進する

Ibaraki, Kazuyuki 神戸大学

2020.03.25

概要

【背景】
関節軟⾻組織は外的損傷を受けると治癒能⼒は低く、軟⾻変性や関節症へと進⾏する。これまでに軟⾻組織の治癒や再⽣を促進する⽅法を発展させるための数多くの研究が試みられてきたが、その中で細胞周期を規定するチェックポイントと組織再⽣に関連があることが報告されている。p21 は細胞周期進⾏を潜在的に阻害する因⼦として最初に同定された因⼦である。p21 ノックアウトマウスでは結合組織の再⽣が誘導し、さらに外傷後の⾻再⽣を誘導させることなどが報告されている。しかしながら、p21 ⽋損が損傷された組織へどのように影響するかは、未だに解明されていない。本研究は in vivo で p21 の機能と関節軟⾻再⽣に関連するメカニズムを明瞭にするため、損傷を受けた関節軟⾻の治癒潜在能⼒に焦点を当てた。本研究の⽬的は p21 ⽋損が軟⾻修復にどのように影響するかを評価することである。

【対象と⽅法】
8 週齢の p21 ノックアウトマウスと野⽣型マウスに対し膝蓋⾻溝に傷を加えることによりマウスの関節軟⾻の全層損傷を作成した。モデル作成⼿術の 4 週と 8 週後にマウスを安楽死させ膝関節組織を回収した。回収された組織を軸⽅向に組織切⽚としSafranin O で染⾊し軟⾻修復の組織学的評価を⾏った。また、組織切⽚でPCNA、SOX9、およびII 型コラーゲンの免疫組織化学染⾊を⾏った。さらに我々は、in vitro で ATDC5 細胞が軟⾻分化する際に p21 ⽋損がどのように影響するか調査するために、p21 をターゲットとする siRNA と⾮特異的コントロール siRNA を ATDC5 細胞に遺伝⼦導⼊し、p21、II 型コラーゲン、およびSox9 mRNA の相対発現レベルを調べた。

【結果】
Safranin O 染⾊で軟⾻修復は p21 ノックアウトマウスが術後 4 週と 8 週の両⽅で野⽣型マウスよりも治癒が促進されることが⽰唆された。p21 ノックアウトマウスは、術後 4 週と 8 週の両⽅で⽋損部位の周囲により多くの細胞集積を⽰した。p21 ノックアウトマウスの脇⾕スコアは有意に低く、軟⾻修復されていることが⽰された。免疫組織化学染⾊よりp21 ノックアウトマウスは、PCNA発現レベルの分析により、野⽣型マウスよりも p21 ノックアウトマウスでの細胞数が多いことが明らかになった。また、免疫染⾊陽性細胞の割合も、野⽣型マウスよりも p21 ノックアウトマウスで有意に⾼かった。しかし、II 型コラーゲンとSox9 の発現に関して、細胞集積は野⽣型マウスよりも p21 ノックアウトマウスで⼤きかったものの、陽性細胞率は、p21 ノックアウトマウスと野⽣型マウスで同程度であった。in vitro においても p21 の downregulation はII 型コラーゲンとSox9 の発現レベルに影響を与えなかった。p21 ⽋損は in vivo でも in vitro においても細胞増殖に関連して関節軟⾻損傷の治癒を促進させるが、in vitro において分化の促進は認めなかった。

【考察】
我々の結果は、p21 ⽋損は in vivo において実験マウスモデルの細胞増殖に関連して損傷した関節軟⾻の治癒を促進し、p21 ⽋損は in vitro において分化は促進しないが軟⾻細胞増殖を増加させることを⽰した。Bedelbaeva らは、p21 は細胞周期の調節と組織再⽣に役割を果たしていると報告した。p21 ⽋損はG1 から G2 チェックポイントへの細胞周期の進⾏を促進し、細胞周期プロファイルを増加させ、S 期への異常な侵⼊を誘発し、増殖を促進する。したがって、 DNA 損傷は、おそらく増殖および複製ストレスのために、p21 を⽋く細胞では細胞増殖が増加する。ストレスに応答して G0 期に静⽌状態に⼊ることができないと、G2 停⽌につながる。これは、MRL マウスでも認められる事象である。我々の結果は、各時点において野⽣型マウスと⽐較して、p21 ノックアウトマウスではPCNA レベルが上昇し、細胞集積が増加し有意な軟⾻修復を⽰した。PCNA の発現は S 期に分布することが多く、したがってS 期への異常な侵⼊につながる可能性がある。したがって、p21 ⽋損はPCNA の発現を増加させる。⼀⽅で、今回の研究では、免疫染⾊陽性細胞数はp21 ノックアウトマウスで in vivo において増加するものの、II 型コラーゲンおよびSox9 の発現レベルは、p21 ノックアウトマウスと野⽣型マウスで変化しなかった。p21 の発現抑制はアグリカンの発現を変化させないという報告や p21 ⽋損は、マウスの胚性軟⾻内⾻化中の形態、細胞外マトリックス形成、軟⾻形成マーカータンパク質発現、軟⾻細胞増殖、または細胞周期調節因⼦に影響を与えなかったという報告と同様に、今回の我々の in vitro で結果でp21 の発現抑制は、Sox9 またはII型コラーゲンの発現レベルに影響しなかった。しかしながら、我々は、p21 ⽋損は軟⾻細胞の増殖を増加させることを⽰した。この相違点の理由として、 p21 は、機械的負荷などのストレス下で機能する可能性があるが、胚性環境などのストレスなしでは機能しないことが考えられる。

【結語】
結論として、p21 ⽋損は in vivo における細胞増殖に関連して損傷した関節軟⾻の治癒を促進し、in vitro においては分化ではなく軟⾻細胞の増殖を促進することが⽰唆された。

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