リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

大学・研究所にある論文を検索できる 「TNIIIA2, The Peptide of Tenascin-C, as a Candidate for Preventing Articular Cartilage Degeneration」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

コピーが完了しました

URLをコピーしました

論文の公開元へ論文の公開元へ
書き出し

TNIIIA2, The Peptide of Tenascin-C, as a Candidate for Preventing Articular Cartilage Degeneration

服部 徹也 三重大学

2020.10.06

概要

Introduction (導人)
 TNIIIA2は細胞外マトリックスの糖タンパクであるテネイシンC (Tenascin-C:TN-C)に含まれるペプチドである。TN-Cは複数のドメインから成り、それぞれのドメインが様々な作用を持つことが知られている。TN-Cは細胞接着、進入、増殖、生存、分化などに関与していることが報告されているが、それぞれのドメインがどのように機能しているかは依然不明である。関節軟骨においては、胎生期においてTN-Cの発現は認められるがその後徐々に発現は認められなくなり、成人の関節軟骨では発現はほとんど認められなくなる。しかし変形性関節症(OA)などを生じた場合、再度関節軟骨にTN-Cの発現を認めるようになる。これまでに軟骨欠損モデルマウスへのTN-C関節内投与による軟骨修復促進効果や、変形性膝関節症モデルマウスへのTN-C関節内投与による軟骨変性抑制効果が報告されている。一方、TN Cのドメインであるfibrinogen-like globe (FBG)ドメインはマウスにおいて関節炎を誘発することが報告されている。
 TNIIIA2はTN-Cに含まれるペプチドである。TNIIIA2はpiインテグリンを活性化することで細胞の分化・増殖を促進することが報告されている。またplインテグリンの活性化は軟骨細胞増殖の促進を引き起こすことも報告されている。今回、TN Cの軟骨変性抑制効果はTNIIIA2を含む機能部位が担っている可能性を考えた。0Aモデルマウスへの関節内投与による軟骨変性抑制効果に加えて、軟骨細胞への添加による細胞増殖への影響と各種因子の発現促進、およびヒト関節軟骨におけるTNIIIA2を含む機能部位の発現を評価した。

Methods (方法)
 TNIIIA2関節内投与による検討:マウス膝関節内にTNIIIA2の投与を行い(group II)、コントロール群にはPBSの投与を行った(group I)。投与後2週および4週にて滑膜炎の発生を比較した。組織学的評価はHE染色を行い、synovitis scoreを用いて評価した。
 0AモデルマウスへのTNIIIA2関節内投与による検討:前十字靱帯および内側側副靱帯を切離した0Aモデルマウスの膝関節内にTNIIIA2の投与を行い(group III)、コントロール群にはPBSの投与を行った(group IV)。投与後2週、4週、8週、12週にて軟骨の変性を比較した。組織学的評価はHE染色、サフラニンO染色を行い、Mankin scoreを用いて評価した。
 軟骨組織は変形性関節症患者より人工膝関節置換術の際に摘出した膝関節軟骨組織を用いた。人関節軟骨より軟骨細胞を単離および単層培養し使用した。
 細胞増殖アッセイによる検討:ヒト関節軟骨から単離した軟骨細胞を用いて細胞増殖アッセイを行った。単層培養24時間後にTNIIIA2添加群と非添加群を作成した。投与後8日間培養を行い、連日CellTiter 96を用いて細胞増殖活性を評価した。
 Real-time PCRを用いたTNIIIA2添加後の軟骨細胞の遺伝子発現の検討:ヒト関節軟骨から単離・単層培養した軟骨細胞にTNIIIA2を添加し、real-time PCRを用いて炎症性サイトカイン、軟骨細胞におけるanabolic factor、catabolic factorの遺伝子発現量を測定し、非添加群と比較した。
 ヒト軟骨における免疫染色:変形性膝関節症のヒト変性関節軟骨組織および正常膝関節軟骨組織に抗TN-C抗体および抗TNIIIA2抗体による染色を行いTNIIIA2の発現を評価した。HE染色およびサフラニンO染色と比較し軟骨組織における局在性を評価した。

Results (結果)
 TNIIIA2関節内投与による検討:マウス膝関節内へのTNIIIA2の投与では、投与後2週において軽度滑膜炎の発生を認めたが、投与後4週では改善していた。コントロール群でも同様の変化を認めた。Synovitis scoreでも両群に有意差は認められなかった。すなわち、TNIIIA2の関節内投与においては有意な関節炎の誘発は認められなかった。
 0AモデルマウスへのTNIIIA2関節内投与による検討:0Aモデルマウスに対してTNIIIA2の関節内投与を行った。投与後4週・ 8週においてコントロール群と比較し、投与群で軟骨変性の進行が抑制された。Mankin scoreはTNIIIA2投与群において有意に低値であり(投与後4週:p=0.04、8週:p=0.03)、TNIIIA2投与により有意に変性が抑制されたと考えられた。投与後12週においては両群に差は認められなかった。細胞増殖アッセイによる検討:軟骨細胞に対してTNIIIA2の添加を行ったところコントロール群と比較して、投与後6日目において有意に細胞増殖が促進された(p=0.005)。軟骨細胞に対してTNIIIA2の添加を行うことで軟骨細胞の増殖を促進することが分かった。
 Real-time PCRを用いたTNIIIA2添加後の軟骨細胞の遺伝子発現の検討:軟骨細胞へTNIIIA2を添加し、real-time PCRを行ったところ炎症性サイトカインであるtumor necrosis factoi-a.軟骨細胞のanabolic factorであるbasic fibroblast growth factor (bFGF)、catabolic factorであるmatrix me tailop rote in ase (MMP) 3の遺伝子発現量がコントロール群と比較し有意に多かった。TNIIIA2が炎症性サイトカイン、anabolic factor、catabolic factorの発現を促すことが分かった。
 ヒト軟骨における免疫染色:ヒト変性関節軟骨に抗TN C抗体および抗TNIIIA2抗体による染色を行うと、軟骨変性を認める軟骨表面に染色性を認めた。TNIIIA2を含む部位はTN-Cでは常時発現している部位ではないため、変性の条件下ではTN-CおよOTNIIIA2を含む部位は同様の発現をしている可能性があると考えられた。

Discussion (考察)
 TNIIIA2はTN-CのドメインであるFNIIIに含まれ、MMP2の存在下で発現する。TNIIIA2は[31インテグリンの活性化を調節し細胞外基質への接着を促進させる。piインテグリンは軟骨細胞増殖を促進させ、FGFによる軟骨細胞増殖にも関与していることが報告されている。本研究ではTNIIIA2はbFGFの発現を促進させること、および軟骨細胞増殖を促進させることからTNIIIA2によるP1インテグリンの活性化が軟骨細胞増殖を促進させている可能性が考えられた。これまでの研究によってTN Cの関節内投与によって0Aモデルマウスの関節軟骨変性を抑制することが分かっている。本研究においてもTNIIIA2は関節軟骨の変性を抑制させた。FGBドメインが関節炎を引き起こすことが報告されているが、これまでの研究においてはTN-Cの投与では関節炎を引き起さないことが示されており、本研究においてもTN1IIA2の関節内投与が関節炎を引き起こすことは無かった。TN-Cは成人正常軟骨には発現を認めず変性軟骨に発現を認めることが報告されているが、TNIIIA2も同様の発現様式を持つ可能性が示唆された。軟骨変性部位はリモデリングが生じている部位であり、TN Cの持つ軟骨リモデリングへの効果はTNIIIA2を含む機能部位が担っている可能性が考えられた。
 本研究ではTNIIIA2は滑膜炎を誘発せず、関節軟骨の変性を抑制することが分かった。TN-Cの軟骨変性抑制効果はTNIIIA2を含む機能部位が担っている可能性が示唆された。

全国の大学の
卒論・修論・学位論文

一発検索!

この論文の関連論文を見る