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大学・研究所にある論文を検索できる 「受容体型チロシンキナーゼRor1は損傷筋の再生における衛星細胞の増殖制御に重要な役割を担う。」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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受容体型チロシンキナーゼRor1は損傷筋の再生における衛星細胞の増殖制御に重要な役割を担う。

Kamizaki, Koki 神戸大学

2020.03.25

概要

骨格筋は再生能の高い組織のひとつであり、再生過程では骨格筋特異的な組織幹細胞である衛星細胞が必須の役割を担う。通常、衛星細胞は静止期状態にあるが、骨格筋損傷後には炎症性サイトカインや増殖因子などに応答し増殖を開始する。続けて分化・融合することで新たな筋線維を形成し骨格筋の再生に寄与する。また、加齢に伴い骨格筋が萎縮するサルコペニアや、筋ジストロフィーなどでは衛星細胞の増殖・分化能の低下が見られることから、骨格筋疾患と衛星細胞の機能制御の関連性が示唆されつつある。これらのことから、衛星細胞の機能制御メカニズムの解明は重要な課題であるが、依然として不明な点が多い。

我々はこれまでに、Ror ファミリー受容体型チロシンキナーゼ Ror1 および Ror2 が発生過程における組織・器官形成に重要な役割を担うことを見出してきた。しかし、成体組織における Ror1, Ror2 の機能についてはほとんど未解明であった。我々はマウスの前脛骨筋へのカルディオトキシン投与による骨格筋損傷モデルマウスを用いて骨格筋損傷後に変動する遺伝子について調べたところ、TNF-αや IL-1βなど炎症性サイトカインの発現上昇に加えて、Ror1 および Ror2 の発現も上昇することを見出した。このことから、Ror1, Ror2は成体骨格筋の再生過程において重要な役割を担っている可能性が考えられた。そこで、我々は骨格筋再生における Ror ファミリー受容体型チロシンキナーゼの機能を明らかにしたいと考えた。

まず、骨格筋損傷後の Ror1 および Ror2 の発現誘導メカニズムについて検討するにあたって、骨格筋再生過程において TNF-αおよび IL-1βの発現上昇が Ror1 および Ror2 の発現上昇に先行していたことから、TNF-αおよびIL-1βが Ror1, Ror2 の発現を誘導する可能性を考えた。そこで、TNF-αおよびIL-1βに対する中和抗体をカルディオトキシンとともにマウスの前脛骨筋に投与し、骨格筋損傷後の Ror1 および Ror2 の発現レベルについて qRT-PCR 法を用いて検討した。その結果、中和抗体の投与によって骨格筋損傷後の Ror1および Ror2 の発現上昇が抑制された。このことから、TNF-αおよびIL-1βが骨格筋損傷後の Ror1 および Ror2 の発現を誘導する可能性が示された。

さらに、FACS を用いてマウスの骨格筋から衛星細胞を単離し発現解析を行ったところ、衛星細胞において Ror1 が高発現していることを見出した。さらに、骨格筋損傷後の衛星細胞で Ror1 の発現が増強されることを見出した。一方で骨格筋損傷前後の衛星細胞集団では Ror2 は殆ど発現していなかった。そこで、今回は骨格筋の再生に必須の役割を担っている衛星細胞において高発現しているRor1 の機能に着目した解析を行うこととした。

衛星細胞における Ror1 の発現誘導メカニズムの解明を目的として、マウス筋芽細胞株である C2C12 細胞を用いた解析を行った。まず、C2C12 細胞に TNF-αおよびIL-1βを添したところ、Ror1 の発現量が上昇することを見出した。さらにNF-κB 阻害剤である PDTC を添加することでTNF-α刺激による Ror1 の発現誘導が抑制されることが確認された。また、ルシフェラーゼアッセイを行った結果、Ror1 プロモーターの 500-1000bp 上流領域に TNF-α刺激依存的な Ror1 の発現誘導に重要な領域が存在することを明らかにし た。また、データベースを用いた解析から、Ror1 プロモーター上には NF-κB シグナルの下流転写因子であるp65 結合配列が複数存在することを明らかにした。さらに、クロマチン免疫沈降の結果からTNF-α刺激依存的にp65 がそれらの結合配列に結合することが示された。これらのことから、骨格筋損傷後にはTNF-αおよびIL-1βがNF-κB 経路を介して直接的に Ror1 の発現を誘導している可能性が示唆された。

次に、骨格筋再生における Ror1 の機能解析を行うために、衛星細胞特異的に Ror1 を欠失することのできる Ror1 コンディショナルノックアウトマウス(Ror1 cKO: Ror1flox/flox, Pax7CreERT2/+)を作製した。タモキシフェン投与後に衛星細胞における Ror1 の発現が抑制されることを確認した上で、コントロールマウス(Ror1flox/flox)および Ror1 cKO マウスの前脛骨筋にカルディオトキシンを投与し、骨格筋損傷後の衛星細胞数の変動についてフローサイトメトリー法を用いて解析した。その結果、Ror1 cKO マウスでは骨格筋損傷後の衛星細胞の増殖が抑制されることが確認された。また、免疫蛍光染色法を用いた解析からも、Ror1 cKO マウスで骨格筋損傷後の衛星細胞の数が減少することが確認された。さらに、骨格筋損傷2週間後の筋線維径を計測したところ、Ror1 cKO マウスではコントロールマウスに比べて筋線維径が小さいことが確認された。これは骨格筋再生能の低下を示す表現型のひとつであることから、Ror1 は骨格筋損傷後の衛星細胞の増殖を促進することで骨格筋再生に寄与している可能性が示唆された。実際に、TNF-αおよびIL-1βの中和抗体をカルディオトキシンとともに前脛骨筋に投与した際、衛星細胞の数が減少することが確認された。さらに、C2C12 細胞にTNF-αを添加すると Ki67 陽性の増殖性細胞数が増加するが、siRNA を用いて Ror1 の発現を抑制するとTNF-α刺激による増殖促進が抑制されることが確認された。

以上の結果から、本研究は骨格筋損傷後に上昇する炎症性サイトカインTNF-αおよび IL-1βが NF-κB 経路を介して衛星細胞における Ror1 の発現を誘導し、Ror1 は衛星細胞の増殖に対して促進的にはたらくことで、骨格筋の再生に寄与していることが示された。衛星細胞の機能低下はサルコペニアなどの筋疾患の病態に関与していることが示唆されていることから、Ror1 による衛星細胞の機能制御機構の解明は筋疾患の予防・治療法の開発においても重要である可能性が考えられる。

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