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大学・研究所にある論文を検索できる 「膵管腺癌におけるSPRR1Aの発現上昇は予後不良と関連する」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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書き出し

膵管腺癌におけるSPRR1Aの発現上昇は予後不良と関連する

山川, 康平 神戸大学

2023.03.25

概要

Kobe University Repository : Kernel
PDF issue: 2024-05-02

Increased expression of SPRR1A is associated
with a poor prognosis in pancreatic ductal
adenocarcinoma

山川, 康平
(Degree)
博士(医学)

(Date of Degree)
2023-03-25

(Resource Type)
doctoral thesis

(Report Number)
甲第8488号

(URL)
https://hdl.handle.net/20.500.14094/0100482236
※ 当コンテンツは神戸大学の学術成果です。無断複製・不正使用等を禁じます。著作権法で認められている範囲内で、適切にご利用ください。

(課程博士関係)

学位論文の内容要旨

Increasede
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fSPRRlAi
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u
c
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a
ladenocarcinoma

膵管腺癌における SPRRlAの発現上昇は予後不良と関連する

神戸大学大学院医学研究科医科学専攻
消化器内科学
(指導教員:児玉裕三教授)

山川康平

[緒言】
膵臓癌は、様々ながんの中でも 5年生存率が約 9%と最も予後不良な疾患の一つである。
予後不良が改善されない理由として、膵臓癌の中で最も頻度の高い膵管腺癌においても、そ
の病態が末だ十分に解明されていないことが挙げられる。ゆえに、臨床的に有効な分子標的
治療薬はわずかしかなく、治療選択肢は限られる。予後改善のためには、膵管腺癌の病態を
理解し、有効なバイオマーカーや治療標的分子を見つけることは必要不可欠である。
がんにおいて、本来の細胞系統には発現のない分子が発現することは、一般的に予後不良

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c
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nlA(SPRRlA) 遺伝子は、表皮
につながることが知られている。 s
のバリア機能を担う c
o
r
n
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f
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e
de
n
v
e
l
o
p
eの構成成分の一つであり、扁平上皮分化マーカーと
して認識されている。 SPRRlAの発現は正常な非扁平上皮組織では見られないが、一部の非
扁平上皮癌でその発現が増加し、大腸癌や乳癌において高発現は予後不良因子と報告されて
いる。また、私たちは過去に SPRRlAが骨肉腫由来のがん幹細胞の特徴と関連している可
能性を見出した。これらの知見から、 SPRRlAは非扁平上皮癌の病態に関与し、患者の予後
を悪化させる可能性がある。しかし、膵管腺癌での発現については、これまで検討されてい
ない。
本研究では、膵管腺癌における SPRRlAの発現、および膵管腺癌の予後や悪性度への影
響を明らかにした。
【方法】

2011年 3月から 2017年 1月の間に神戸大学医学部附属病院にて膵切除術を受けた I
I期
または I
I
I期の膵管腺癌患者全 86例を対象に、免疫組織化学染色法を用いて SPRRlA蛋白
質の発現を評価し、その発現と膵管腺癌患者の予後との関係を明らかにした。また TCGAデ
ータベースを用いて膵癌 1
7
6例での SPRRlAmRNAの発現量と予後との関係を解析し、上
記のデータを裏付けた。膵臓癌細胞株 (
PK-1、P
a
n
c
1
) を用いて SPRRlA過剰発現株を作
成し、 i
nv
i
t
r
oでの表現型と発現遺伝子の変化を評価した。
【結果】
扁平上皮分化を伴っていた 2例を除外した膵管腺癌 84例中、 3
1例 (36.9%)が SPRRlA
蛋白質を高発現していた。 SPRRlA高発現群における全生存期間(中央値 2
2
.
1カ月 v
s
.

.
0
3
5
7
) および無再発生存期間(中央値 1
0
.
7カ月
3
3
.
6カ月、 p=0

VS. 1
5
.
5カ月、

p=

0
.
0
2
9
8
) は SPRRlA低発現群に比べ有意に短かった。患者背景因子としては、 SPRRlA高
発現群では患者年齢が、 SPRRlA低発現群よりも有意に若かった他(高発現群中央値 6
5歳

v
s
. 低発現群 72歳
、 p=0
.
0
2
2
)、性別、 BMI、腫瘍マーカー、膵癌の病期、分化度、膵癌の
4大ドライバー遺伝子変異の有無に有意な差は認めなかった。膵管腺癌患者の全生存期間に

対する各因子の相対的寄与度を調べた多変量解析では、 SPRRlA高発現 (HR1
.
7
0
6
,95%

.
6
8
7
,95%CI1
.
4
8
7t
o4
.
8
5
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,p=
CI1
.
0
1
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o2
.
8
6
2
,p=0
.
0
4
2
7
) および Rl切除 (HR2
0.00106) が独立した予後不良因子であることが明らかとなった。 TCGA膵癌データセット
のトランスクリプトームデータ解析により、 SPRRlA高発現と中発現群は、 SPRRlA低発

ー/ i

現群よりも有意に予後が悪いことが示され(高発現群中央値 1
7
.
7カ月 v
s
. 中発現群 1
6
.
0
カ月 v
s
. 低発現群 5
0
.
1カ月、 p=0
.
0
2
9
8
)、我々のデータを支持する結果であった。

SPRRlAの過剰発現が膵管腺癌に及ぼす影響を調べるため、レトロウイルスベクターを用
いて、膵癌細胞株 (
P
K
1
,P
a
n
c

l
) から SPRRlA恒常性過剰発現株を作製したが、細胞増
殖、抗癌剤耐性、上皮間葉転換マーカー、遊走能などの表現型に変化を認めなかった。次に
表現型には現れない分子学的な変化を明らかにするため、恒常性および一過性の SPRRlA
過剰発現細胞を用いて mRNAシーケンス解析を行った。 SPRRlA恒常性過剰発現細胞と対
照細胞、 SPRRlA一過性過剰発現細胞と対照細胞の遺伝子発現を比較し、 SPRRlA過剰発
現による発現変動遺伝子を抽出し、 GeneO
n
t
o
l
o
g
y (GO) 解析を行ったが、有意な GO用
語は見つからなかった。恒常性および一過性過剰発現細胞において、共通して対照より発現
上昇している遺伝子は、 SPRRlAを除くと 1つ (SNORD138) であり、また共通して発現

m
i
r

l
e
t
7
i
,m
i
r
6
3
5
,LOC100131289,SNORA2A,SNORA103,
低下した遺伝子は 7つ (
SNORD4BandSNORD84) であった。これらには共通の特徴は見られなかった。
近年、膵管腺癌は 2つの分子サプタイプに分類され、これらのサプタイプが患者の予後と
相関することが報告されている。 SPRRlAの発現と分子サブタイプの関係を明らかにするた
め、「 c
l
a
s
s
i
c
a
l」と「 b
a
s
a
l
l
i
k
e」サブタイプの特徴遺伝子と SPRRlA発現の相関を、我々

nv
i
t
r
o実験と TCGA膵癌データセットのトランスクリプトームデータを用いて検討し
のi
た。我々のデータ解析では、 SPRRlAの恒常性過剰発現も一過性過剰発現もこれらの特徴遺
伝子の発現を変化させなかった。 TCGAデータ解析では、 TCGA症例をクラスタリングし、
各分子サプタイプに分類したところ、両分子サブタイプに SPRRlAの高発現症例が同程度

l
a
s
s
i
c
a
l
」4
6
/
9
6例 v
s
.「
b
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s
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e」 1
3
/
2
2例
、 p=
0
.
4
7
9
)、
「c
l
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i
c
a
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の割合で含まれ(「c
と「 b
a
s
a
l
l
i
k
e」サブタイプの間で SPRRlAの発現量に有意差はなかった(平均 FPKM

3
1
.
6VS. 1
8
.
9、p=0
.
1
7
2)。これらの結果は、本研究で膵管腺癌の予後不良と関連すること
を示した SPRRlAの発現増加は、過去に予後不良との関連が報告されている分子学的特徴
とは無関係であることを示唆した。
【考察]

5%で SPRRlAの発現が増加してお
本研究では、扁平上皮分化を伴わない膵管腺癌の約 3

、 SPRRlAの発現増加は膵管腺癌患者の予後不良を予測することを明らかにした。

SPRRlAの発現増加は、以前に報告された患者の予後と関連する分子学的特徴とは独立して
おり、 SPRRlAの高発現は膵管腺癌の新規分子サプタイプの特徴である可能性が示唆され

8
2
/
1
1
4
)、乳癌の 53.8% (
5
6
/
1
1
1
)、びまん性大細胞型 B
た。過去の研究で大腸癌の 71.9% (
細胞リンパ腫の 31.5% (
3
0
5
/
9
6
7
) で SPRRlA発現が増加し、その高い発現は予後不良と相
関すると報告されている。しかし、膵管腺癌における SPRRlAの発現、および予後との関
係について述べた報告は、我々の知る限り、本報告が初めてである。過去の研究も私たちの
研究も一貫して、 SPRRlAの高発現が、非扁平上皮癌の予後不良と相関することを報告して
おり、 SPRRlAは非扁平上皮癌の予後予測マーカーとなる可能性がある。


SPRRlAは、主に膵管腺癌の浸潤領域で発現上昇しており、その発現増加が膵管腺癌の生
物学的悪性度に関与すると仮定した。しかし、 i
nv
i
t
r
oの研究では、 SPRRlAを発現する

PK-1と SPRRlAを発現しない P
a
n
c
1のいずれにおいても SPRRlA過剰発現が、細胞増
殖、抗癌剤抵抗性、上皮間葉転換マーカー、遊走能といった悪性度と関係する表現型に影響
を及ぼさなかった。これまで SPRRlAの機能に着目した研究はないが、胃癌における

SPRR2B、乳癌や大腸癌における SPRR3 など他の SPRRファミリー遺伝子ががん増殖シ
グナルに関与し、細胞増殖を促進することが i
nv
i
t
r
oで示されている。我々のデータは、

SPRRlAが少なくとも膵管腺癌において、がん増殖シグナルの活性化を誘導せず、遺伝子の
発現パターンにもわずかな変化しかもたらさないことを示した。
我々のデータは、膵管腺癌の本来の系統細胞では発現しない SPRRlAが、一部の膵管腺
癌で発現上昇し予後不良と関連することを示した。この結果は、 SPRRlA発現を制御するシ
グナル伝達経路が、一部の膵管腺癌の悪性度を高める可能性を示唆している。これまでの研

38m
i
t
o
g
e
n
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c
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o
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i
nk
i
n
a
s
e (MAJ
沢)および c
J
u
nN究で、 SPRRlAは p
TerminalKinase (JNK) シグナルにより制御されることが示されている。 JNKシグナル
は、大部分の膵管腺癌において遺伝子異常を有する中心的なシグナル伝達経路であることが
知られているが、膵管腺癌における p38MAPKに関する報告は限られている。今後の研究
では、膵管腺癌における SPRRlAの発現とこれらのシグナル伝達経路の活性および癌の進
行に与える影響を明らかにする予定である。
【結論】

SPRRlAの発現増加は、膵管腺癌の予後不良と関連しており、新規の予後予測マーカーと
nv
i
t
r
o研究から、 SPRRlAの発現は膵管腺癌の生物学
なる可能性がある。しかし、我々の i
的悪性度の原因ではなく、結果である可能性が示唆された。

神 戸 大学大学院医学(
系)研究科(博士課程)

論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨
甲第3
233号



受付番号



山川康平

論文題目

膵管腺癌における SPRRlAの発現上昇は予後不良と関連する

T
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ladenocarcinoma


審査委員

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ChiefExaminer
副 査

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1
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1
叶穴 シ

存 臼



(要旨は 1, 000字 ∼ 2, 000字程度)



屎輝

【緒言】 s
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i
nIA(SPRRlA)遺伝子は、表皮のバリア機能を担う
c
o
r
n
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f
i
e
de
n
v
e
l
o
p
eの構成成分の一つであり、扁平上皮分化マーカーとして認識されてい
る。本研究では、膵管腺癌における SPRRlAの発現、および膵管腺癌の予後や悪性度へ
の影響を明らかにした。
【方法】 神戸大学医学部附属病院にて膵切除術を受けた I
I期 ま た は I
I
I期の膵管腺癌患者
全86
例を対象に、免疫組織化学染色法を用いて SPRRlA蛋白質の発現を評価し、その発
現と膵管腺癌患者の予後との関係を明らかにした。また TCGA
データベースを用いて膵癌
176例での SPRRlAmRNAの発現量と予後との関係を解析し、上記のデータを裏付けた。
膵臓癌細胞株 (
P
K
1、P
a
n
c

l
) を用いて SPRRIA
過剰発現株を作成し、 i
nv
i
t
r
oでの表現
型と発現遺伝子の変化を評価した。
【結果】膵管腺癌 84例中、 3
1例 (36.9%)が SPRRlA蛋白質を高発現していた。 SPRRlA
高発現群における全生存期間(中央値 2
2
.
1 カ月 v
s
.3
3
.
6カ月、 p=0
.
0
3
5
7
) および無再
発生存期間(中央値 1
0
.
7カ月 v
s
.1
5
.
5 カ月、 p=0
.
0
2
9
8
) は SPRRlA低発現群に比べ
有意に短かった。膵管腺癌患者の全生存期間に対する各因子の相対的寄与度を調べた多変
量解析では、 SPRRIA高発現および Rl切除が独立した予後不良因子であることが明ら
かとなった。 TCGA膵癌データセットのトランスクリプトームデータ解析により、 SPRRlA
高発現と中発現群は、 SPRRlA低発現群よりも有意に予後が悪いことが示され、我々のデ
ータを支持する結果であった。

SPRRlAの過剰発現が膵管腺癌に及ぼす影響を調べるため、レトロウイルスベクターを
用いて、膵癌細胞株 (
P
K
1
,P
a
n
c

l
) から SPRRlA恒常性過剰発現株を作製したが、細
胞増殖、抗癌剤耐性、上皮間葉転換マーカー、遊走能などの表現型に変化を認めなかった。
次に表現型には現れない分子学的な変化を明らかにするため、恒常性および一過性の
SPRRlA過剰発現細胞を用いて mRNAシーケンス解析を行った。 SPRRlA恒常性過剰発
現細胞と対照細胞、 SPRRlA一過性過剰発現細胞と対照細胞の遺伝子発現を比較し、
SPRRIA過剰発現による発現変動遺伝子を抽出し、 GeneO
n
t
o
l
o
g
y (GO) 解析を行った
が、有意な GO用語は見つからなかった。恒常性および一過性過剰発現細胞において、共
通して対照より発現上昇した遺伝子は、 SPRRlA を除いて 1つ (SNORD138
)、また共
通して発現低下した遺伝子は 7つ (
m
i
r

l
e
t

7
i、m
i
r
6
3
5、LOC100131289、SNORA2A、
SNORA103、 SNORD4B、SNORD84) であった。これらには共通の特徴は見られなか
った。 SPRRlA の発現と分子サブタイプの関係を明らかにするため、「 c
l
a
s
s
i
c
a
l」と

b
a
s
a
l
l
i
k
e」サブタイプの特徴遺伝子と SPRRlA発現の相関を、我々の i
nv
i
t
r
o実験と
TCGA膵癌データセットのトランスクリプトームデータを用いて検討した。 SPRRlAの恒
常性過剰発現も一過性過剰発現もこれらの特徴遺伝子の発現を変化させなかった。

TCGAデータ解析では、 TCGA症例をクラスタリングし、 各分子サブタイプに分類した
ところ、両分子サブタイプに SPRRIAの高発現症例が同程度の割合で含まれ、「 c
l
a
s
s
i
c
a
l」
と「b
a
s
a
l
l
i
k
e」サブタイプの間で SPRRIAの発現量に有意差はなかった。これらの結果
は、本研究で膵管腺癌の予後不良と関連することを示した SPRRIAの発現増加は、過去
に予後不良との関連が報告されている分子学的特徴とは無関係であることを示唆した。
【考察】本研究では、扁平上皮分化を伴わない膵管腺癌の約 3
5%で SPRRIAの発現が増
加しており、 SPRRIAの発現増加は膵管腺癌患者の予後不良を予測することを明らかにし

。 SPRRIAは、主に膵管腺癌の浸潤領域で発現上昇しており、その発現増加が膵管腺癌
の生物学的悪性度に関与すると仮定した。しかし、 i
nv
i
t
r
o の研究では、 SPRRIAを発現
する PK-Iと SPRRIAを発現しない P
a
n
c

lのいずれにおいても SPRRIA過剰発現が、細
胞増殖、抗癌剤抵抗性、上皮間葉転換マーカー、遊走能といった悪性度と関係する表現型
に影響を及ぼさなかった。我々のデータは、 SPRRIAが少なくとも膵管腺癌において、が
ん増殖シグナルの活性化を誘導せず、遺伝子の発現パターンにもわずかな変化しかもたら
さないことを示した。膵管腺癌の本来の系統細胞では発現しない SPRRIAが、一部の膵管
腺癌で発現上昇し予後不良と関連することを示した。この結果は、 SPRRIA発現を制御す
るシグナル伝達経路が、一部の膵管腺癌の悪性度を高める可能性を示唆している。これま
での研究で、 SPRRIAは p38m
i
t
o
g
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n・
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c
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s
e (MAPK) および c

J
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N・
T
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m
i
n
a
lK
i
n
a
s
e (JNK) シグナルにより制御されることが示されている。 JNKシグナ
ルは、大部分の膵管腺癌において遺伝子異常を有する中心的なシグナル伝達経路であるこ
とが知られているが、膵管腺癌における p38MAPKに関する報告は限られている。今後
の研究では、膵管腺癌における SPRRIAの発現とこれらのシグナル伝達経路の活性および
癌の進行に与える影響を明らかにする予定である。
【結論】 SPRRIAの発現増加は、膵管腺癌の予後不良と関連しており、新規の予後予
測マーカーとなる可能性がある。しかし、我々の i
nv
i
t
r
o研究から、 SPRRIAの発現は膵
管腺癌の生物学的悪性度の原因ではなく、結果である可能性が示唆された。

以上、本研究は、膵管腺癌における SPRRlAの発現増加が予後を不良にしていること
を明らかにした。 SPRRlAががん増殖シグナルの活性化を誘導せず、遺伝子の発現パター
ンにもわずかな変化しかもたらさないなど重要な知見を得ており、本研究者は博士(医学)
の学位を得る資格があると認める。

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